【アメリア】対談の部屋 11-5 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜
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対談の部屋
<第11回>  全6ページ
第11回 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!   〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜

5.翻訳書、編集者と翻訳者の二人三脚

--合格の知らせはいつ頃受け取ったのですか?

飯野:トライアルから3カ月後の8月中旬にお電話をいただきました。でもそれは合格の知らせというより、直しの依頼だったのですが……。

国頭:ええ、ちょっとイジワルだったかもしれませんね。もう飯野さんにほとんど決定していたのですが、その前に確認しておきたいことがあって、最後にちょっと気になる部分を、もう1度だけ訳し直してもらったんです。

--確認しておきたいこととは?

国頭:2つありました。1つは、初稿を出すよりも、第2稿を出す方が難しいということ。直しを依頼されると、いったん完成したものをどこかしら崩しながら、なおかつ全体の整合性を取らなければなりません。その難しい注文に応じていただけるかどうかを見たかった。それともう1つは、直しの依頼に関して、こちらの意図を理解してほしいのですが、かといって唯々諾々と従ってほしくはない。というのは、最終的に文章を作り上げるのは翻訳者の仕事だと思っていますので、出版者側はああしてほしい、こうしてほしいと、いろいろと注文を付けますが、その意味を汲み取った上で、なおかつ全体の整合性を考えながら最終的に判断をしてほしいわけです。ときには出版者側の意見よりも翻訳者自身の考えを押し通したほうがいい場合があるかもしれない。その時は、我々を説得してほしいわけです。そうした作業を一緒にやっていける方かどうかを見極めたかったのです。弊社としては、スペシャルトライアルを開催したからといって、絶対にその中から訳者を選ばなければならないというわけではありません。適当な方がいなければ、他で探そうという思いは最後までありました。

--その結果、いかがでしたか?


飯野:実は私は、指摘されたところと別の部分を直してしまったんです。というのも、指摘されたところは私としては直す必要のないところだと判断したものですから……。

国頭:それは、私が全部をよく読み込んでいなかったために勘違いしていたためで、飯野さんがそれをきちんと説明してくださって、私の勘違いが判明しました。ですから結果的には、ただ編集者の意見に従うだけでなく、翻訳者として全体を見通してきちんと判断してくださる方だとわかったので、安心してお任せすることができました。

飯野:あの時の直しには、そういう意図があったのですか。知りませんでした。私としては、編集者の方からチェックの入った原稿が戻ってきても、ただその通りに直して返す、ということはしたくないという思いがあったんです。というのも、やはり日本語の文章も書き手が違うと文体が違ってしまいますから、自分の頭からひねり出した文章にしないと、最終的に整合性が取れなくなってしまうことがあるからです。国頭さんが書いてくださった文章は、それ自体はよくても、なるべくそのままは使わず、意図だけを汲み取って、自分の文章に直すように心掛けました。

国頭:そういうやり取りができる方でしたので、私の方も編集作業が面白く、どんどん赤を入れていました。でも、最初の方は編集者として赤を入れるべき個所もたくさんあったのですが、後半になるにしたがって訳文のテンポがどんどんよくなっていって、またこの作品を飯野さんがご自分のものにしてきたので、直すところが見つからなくて困ったりもしました(笑)。

飯野:作品自体のテンポがよくなっていったということもありますね。1巻は家の中ばかりだったのが、2巻以降は主人公の子どもたちが外に飛び出して行きましたから。この作品に関しては、さすがに5冊も訳したので、自分なりに納得のできる“いいテンポ”で訳せた気がします。でも、これだけで満足していてはいけないので、また違ったタイプの文章も書けるようにも勉強したいと思っています。翻訳家というのは自分の幅を広げなければならないですよね。
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