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  乳がん検診事件 提案者:充田
用語: that they were a mandatory elemeent of reasonable care
訳語候補:
説明: パート4/ユニット6

"these techniques were not sufficiently effective in the early 1990s that they were a mandatory element of reasonable care"という文章の意味が、このユニットの前後関係から見て、どうやら「1990年代初頭にはこれら(超音波検査や細針吸引検査など)の病因検査技術の効果がまだ充分に効果的でなかったので、これら検査の実施は合理的医療の義務的要件となっていなかった」ということらしいことが推測できます。仮にそうだとすると、二つ疑問点があります:
(1) このthatは、so thatのsoが略されたものであるか、またはsufficiently thatでso thatの役割りを果たしているもので、いわゆる結果をあらわすthatと諒解してよいか?
(2) それならば、何故they were (not) a mandatory element of reasonable careとある筈のnotが脱落しているのか?
このthat節にnotがなくても否定の意味になる用法はないか調べていたところ、江川泰一郎著「英文法解説」(金子書房)の結果をあらわすso 〜 that用法の中に、それらしい鍵があるのを見つけました。その例文(p.390)に"He is not so busy that he can't go for a walk now and then."が掲載されており、その解説(p.391)に「notはso busyだけを否定するのではなく、so busy that he can't go for a walk now and then全体を否定しているのである。従って、和訳の手法としては英文を後ろから訳して「彼は時おり散歩に出られないほど忙しいことはない」とすれば、notの否定領域を正しくとらえた訳文を作りやすい−−と書いてありました。この江川先生流で行くと、上記文章の訳は「1990年代初頭において、これらの技術は合理的な医療の義務的要件とされるほど、まだ充分に効果を挙げていなかった」とするのが正解かと思われますが、ご意見をお願いいたします。(なお、上例のthat節にはnotが含まれておりますが、notのない例文として、The college recommends that students not live so far from the campus that automobiles seem necessary.も挙げられております。)








 that they were a mandatory elemeent of reasonable care 吉本 2005/02/09 05:10:28
まず、充田さんがご指摘の通り、この文でnotが否定する領域はthat節まで含んでいると思います。つまり、sufficiently effective in the early 1990 that they were a mandatory element of reasonable careの部分全体がnotによって否定されているということですね。これは確かに「英文法解説」の説明にある通り。

しかし、和訳の手法という点でいうと、江川先生の解説にあるHe is not so busy that he can’t go for a walk now and then.の「彼は時おり散歩に出られないほど忙しいことはない」という後ろから訳した文は二重否定でもあり少々読みにくい印象です。

「notの否定領域を正しくとらえた訳文をつくりやすい」というやや曖昧な解説もついていますが、たぶん上記の訳文は原文の意味を把握するための仮訳文のようなものでしょう。実際、江川先生も同じ例文に「彼はとても忙しいが、時おり散歩に出るくらいの時間はある」という訳をつけていますが、こちらは結論部分を後ろに置いたわかりやすい形。したがって、「後ろから訳す」ということはあまりこだわる必要はないものと考えます。

ここで問題とされているthey were a mandatory element of reasonable careというthat節の内容は、裁判所がnot=「否」と判断した核心部分なので、これを結論として訳した方がより文意が明確になるような気がします(なお、reasonable careは、医療だけでなく過失の認定全般において問題とされる「相当の注意」または「相当な注意」のことなのでそのように訳した方がよいでしょう)。

たとえば、以下のように訳すことも考えられます。

「1990年代初頭において、これらの技術は効果が不十分だったので、相当な注意義務の要件とはいえなかった」