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  ビング・クロスビー遺産裁判 提案者:充田
用語: subpoena duces tecum/third party deposition subpoena
訳語候補:
説明: パート1/ユニット25にはsubpoena duces tecum、パート1/ユニット23にはthird party deposition subpoenaという用語が出てまいります。

本来「subpoena」の訳語は、英米法辞典によれば、「罰則付召喚令状」であり、「従わないときには罰を課する旨の警告のものとに一定の日時・場所に出頭すべきことを命じる裁判所の令状(writ)」という説明が付されております。

そうすると、「subpoena duces tecum」を生真面目に訳すと、「罰則付召還令状付文書提出令状」、また「third party deposition subpoena」は「第三者証言録取書を求める罰則付召還令状」となるように思われます。

ところが、パート1/ユニット21にあるように、現段階はIn the course of pretrial discovery = 「正式事実審理前の証拠開示」の過程にあり、裁判所がまだ具体的な審理を開始する以前の段階で、訴訟当事者双方が相互に証拠を開示させ合う段階であり、そこで一方当事者が他方当事者に対して「罰則付召還令状」を発行するということには違和感を感じざるを得ません。

たまたま仮訳文担当者が、このsubpoenaの部分は抜きにして、subpoena duces tecumは「文書提出命令」、third party deposition subpoenaは「第三者による証拠提出命令」と訳出しておられ、特に他のメンバーからのご指摘もなかったので、現在そのままになっておりますが、このsubpoenaという言葉の意味や訳出上の扱い方についてコメントを頂きたくお願いいたします。


 subpoena duces tecum/third party deposition subpoena 吉本 2006/10/17 08:38:52
充田さんのおっしゃる通り、文書(証拠)提出命令を発行する権限を有しているのは裁判所ですが、現在は訴訟当事者の代理人が裁判所の権限を代理してsubpoenaに署名しこれを発行することも認められていますし、裁判所の書記官がsubpoenaの発行手続きを行う場合でも、書記官の役割は署名など形式的なもので、具体的な項目の記入は当事者(代理人)が行うことになります。

したがって、subpoenaをissueする“実質的な”主体は当事者であると考えることもできるため、この場合のように主語を当事者本人としてDefendant issued a subpoenaといった書き方をすることがあるわけです。

形式的には裁判所が発行するというsubpoenaの性格自体が異なるわけではないので、ここでsubpoenaを「文書(証拠)提出命令(令状)」と訳すこと自体は問題ないと思われますが、日本語で当事者が「命令(令状)を発行した」とすると充田さんのおっしゃる通り違和感が残り誤解の余地があるため、ここでは

「〜の請求により文書(証拠)提出命令が発行された」

のように、受動態で処理するのはいかがでしょう。

「〜が文書提出命令(の発行)を請求した」のように訳すと、実際に「発行された」という点が訳出されないので、この場合は不適と考えます。その上で

subpoena duces tecumは「文書提出命令」
third party deposition subpoenaは「第三者に対する証拠提出命令」

と訳すことを提案いたします。third partyは命令の主体ではなく対象です(つまり、裁判の当事者でなくても突然証拠を提出するよう求められる場合があるということ)。

また、主に法曹関係の専門家の間では、こうした日本語での説明的な訳語以外に「サピーナ」というカタカナの訳語が相当程度用いられていることにも留意する必要があると思われます。