有志で協力して社会的意義のあるコンテンツを翻訳『翻訳プロジェクト』

辞書の図書館 訳文検討室INDEX
 
 辞書作成室掲示板
 
 
  アスベスト労働災害裁判 提案者:充田
用語: for purposes of 〜
訳語候補:
説明: 自分の頭が悪いことをさらけ出すことでまことにお恥ずかしいことですが、for purpose of 〜、for the purpose of 〜、for purpose of 〜に関連してリーダーコメントをお願いするのは、バンビ原作事件/サンノゼ歩行者転倒裁判に次いで、これが3回目になります。

これらの表現は特にビジネス法務関連の文章に頻発するので、ネイティーブの発想の中では、「〜の目的上、〜の目的に対して」という字義通りの意味で至極当たり前に、何の抵抗もなく使用されているのだと想像されますし、それはそれで何となく原文を読みながら理解できるような気もして参ります。

ただし、それを一旦和訳することになると、どうも「〜の目的上、〜の目的に対して」と訳すと、それが一番リスクの少ないことは解りますが、もう一つ和文ではピッタリこないので、つい悩んでしまうことになります。

リーダーにはかって、例えばライセンス契約書の定義などで、for the purpose of this Agreementと出てきた場合は「解釈上」(これは名訳だと思います)と訳すことを教わり、バンビ原作事件ではfor purpose of this argumentを「この議論では」または「この議論においては」と訳すことを教えて頂き、その後活用させて頂いております。

もちろん、個々の文章に出てくる表現は色とりどりで、それには個々の対応が必要になると思われますが、例えばこのユニットに出てくるfor purposes of the commencement of the three-year limitationの場合は、どう訳したら一番適切だろうかと首を捻っております。
ここは、「3年間の出訴期限の始期については」としたら可笑しいでしょうか(「〜については」と表現するとき、その裏の心は「〜という観点から見ると」)? また、これに関連して"an action under FELA accrues"は「FELAに基づく訴訟は成立する」という意味と理解しましたが、間違いあればコメントをお願い申しあげます。




 for purposes of 〜 吉本 2007/03/06 04:49:17
充田さんの揚げ足をとるようで恐縮ですが、まずネイティブスピーカーはpurposeという単語を必ずしも「目的」と考えているわけではないということに注意する必要があります。「目的」という言葉はあくまでも“一般的な訳語としての日本語”にすぎません。“一般的な訳語”を“字義通りの意味”“本来の意味”と混同してしまうことは(無意識のうちによくしてしまうことですが)翻訳において非常に危険なことであると考えます。

以下に僕が「バンビ原作事件」の辞書作成室に書いた文を引用します。

「for the purpose of 〜が文章や理論などの“文脈を含意するもの” (たとえば、this paragraph、this subsection、this theory、this problemなど)を目的語とする場合は、その文で述べられる内容が必ずしも一般に適用されるとは限らず、あくまでもその“〜”に適用されるものであるということを強調する表現となります」

上記の考え方を法廷意見の論理展開に当てはめれば「この議論上」、契約書の定義に当てはめれば「本契約の解釈上」になるということです。

充田さんが挙げられたパート2ユニット11の文では、その“文脈を含意するもの”が連邦雇用者責任法(FELA)という法律の条項です(under FELAはthe commencement以下の意味を限定していると考えられます)から、ほぼ契約と同様な意味になると考えます。こうした点を整理するため、この文をパラフレーズしてみましょう。

an action accrues when the plaintiff becomes or should become aware of his injury for purposes of the commencement of the three-year limitation under FELA

この場合のan action accruesは「訴訟が成立する」ではなく「訴訟原因が発生する」ということですから、次のような意味になると思います。

「連邦雇用者責任法の定める3年の出訴期間における始期を解釈する上で、訴訟原因が発生するのは原告が自身の被害に気づいた時点かまたは気づいてしかるべき時点である」