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  養子精神疾患裁判 提案者:吉本
用語: citation to authority
訳語候補: 法源の引用
説明: ■>養子精神疾患裁判>パート7>ユニット8
 → http://www.amelia.ne.jp/userProjectTRView.do?projectId=95&partNumber=7&unitNumber=8

まず、可算不可算という点について言うと、citation to authorityと同様な意味で用いられる表現にcitation to authorities、citation of authority、citation of authoritiesがあります。これらは同義語と考えてよいでしょう。

抽象名詞が具体的な事物を含意する場合、無冠詞単数形と無冠詞複数形は同様に概括的な意味で用いられることが多いので、可算か不可算かでauthorityの意味を識別する必要はないと考えます(that節の限定があることと不可算であることは無関係です)。

充田さんが引用された通り、Black’s Law Dictionaryのauthorityの定義には判例だけでなく制定法や条例など幅広い法的文書が含まれています。

また、同じBlack’s Law DictionaryのCitation of Authoritiesの項には

The reading, production of, or reference to, legal authorities(such as constitutions, statutes, reported cases, and treatises), in arguments to courts, in legal textbooks, law review articles, briefs, motions, and the like to substantiate or fortify the propositions advanced.

という定義が掲げられています。つまりauthority=legal authoritiesと考えられるので、legal authoritiesをどう訳すかということになりますが、ここは「裁判において裁判官の判断基準となるべき規範」を意味するTsuyoshiさんご提案の訳語「法源」が適当ではないかと考えます。

英米法辞典authorityの訳語「法源;先例」の項には確かに「制定法、判例など判決の根拠として用いられるもの」とありますが、英米法辞典のこのような書き方では必ずしも「先例」に制定法と判例の両方が含まれるという意味になるわけではありません(例えばhighwayの「公道;公水路」のように同じ項目に広義の訳語と狭義の訳語を併記することもあります)。

実際の用例において、「先例」という表現は、判例や行政的慣例など、制定法以外のものを指すのが一般的であり、この中に制定法を含むことはほとんどないと思われます。

「法源」というと日本では制定法ばかり連想するのではとのご指摘に関して言うと、アメリカの判例という文脈においては、むしろ判例を含む表現として適切かと思います。