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  シェルダン裁判 提案者:y.s
用語: we
訳語候補: 当法廷ほか
説明: 充田さん、深夜まで本当にご苦労様です。ひろゆきさんのパソコン故障の後、お一人の肩に責任がかかって本当に骨の折れることだったと思います。私もしつこくて申し訳ないのですが、改めて最初から丁寧に検討してまいります。充田さんも、このサイトを、法曹のプロ達を納得させることの出来るレベルにしなくては、「世界唯一の日本語による米国判例紹介」がもったいないとお考えだと思います。このサイトを作成する側の内部ルールはよく理解できます。吉本先生が仰る意味も理解できます。(吉本先生は原文と仮訳文全体を熟読されるお時間はなかったですよね)原則やルールをそのままあてはめては、この場合、私にはどうしても全体の整合性がつかなくなってしまうのです。また書き込みを致します、すみません。

 続きです y.s 2003/02/18 15:03:00
充田さんが深夜に投稿してくださった内容についてです。投稿が入れ違いになっていたら申し訳ありません。
1、ハンド判事:パート1ユニット2の表示では仰るとおりハンド氏がこのコートの判事に見えます。すると、ユニット6の、he dismissed the billのheを、読者に誤解なく分かりやすく示すためには、ユニット5のthe judgeを前審と訳してはいかがでしょうか。
2、充田さんが御教授下さったとおり、ハンド判事が1930年ニコルス裁判の法廷意見で"copying might at times be a fair use"と述べたことは所与とします。原告ジェルダンが異議を申し立てたのは、しかし、このニコルス裁判ではなく、自分が原告になっている裁判の一審ですね(一審でもニコルス裁判は引用されていたようですね)充田さんの仰るとおりでも、やはり、このweはこの二審ではない(たとえ、ハンドという同一人物がたまたま担当していても)のでは?アメリカも法治国家です、スタローン映画のように"I am the law" の人治国家では、同一人物が言ったことならweは当法廷で構わないと思うのですが、日本の法曹界の言葉の使い方は、とにかく誤解を避けるよう、厳密ですよね。weは普通、当法廷、というのは承知しておりますが、例えばこのパート6ユニット5では、二審が始まってから原告が控訴していることになってしまうのでは?
   
 「当法廷」ほか 吉本 2003/02/19 09:37:00
充田さん、y.sさん、活発な議論興味深く読ませていいただきました。私見において、ここでの事実関係を以下に整理します。

● ハンド判事は当法廷(第2巡回区控訴裁判所)の判事であり、本件裁判の法廷意見を書いている。
● 原告がパート6ユニット5で異議を申し立てているのは、当法廷の判決(ニコルス事件)を先例とした地裁判事の意見に対してである。
● ハンド判事はパート7ユニット25〜28で“当法廷”の過去の判例を引用している。

上記判断の根拠を以下に述べます。

● アメリカは判例法の国ですが、先例としての“拘束性”があるとされるのは同一法域の判決に限られ(拘束性ある先例を覆す場合もあります)、総ての判決に整合性があるわけではありません(むしろ、多くの相違点と矛盾をはらんでいます)。したがって、判例の主体として「わが国法廷はしかじかの判決を下している」といった包括的表現を用いることはありません。
* 他法域の判例も“説得的な”法源として引用されます。
● アメリカでは当該裁判所と同じ法域における上級裁判所の判決に加えて、当該裁判所が過去に下した判決も先例としての拘束力がある重要な法源とされています。したがって、当該判決の正当性を示すものとして当該裁判所(つまり「当法廷」)の過去の判決がしばしば引用されているのです。
● googleで調べたところ、Daly v. Webster、Dymow v. Bolton、Chappell & Co. v. Fields、Nichols v. Universal Pictures Corporationは第2巡回区控訴裁判所の判決であることが判明しました(Dam v. Kirke La Shelleのみ不明)。Daly v. PalmerはC.C.S.D.N.Y.1868とありますが、これは現在第2巡回区控訴裁判所の管轄であるニューヨーク南地区にかつて存在していた古い巡回裁判所なので、連続性を認めたものと考えられます。

上記のような事情から、weは「当法廷」を指すということが了解されます。決して、定まったルールだからそのように訳すべし、ということではありません。もしweが明確に「当法廷」ではないという理由があればそこでは意味のない“先例”として覆すべきでしょう。

ハンド判事のこの判決は半世紀を優に越えてその重要性を保ち、たとえば、1998年に日本経済新聞社がデータベース会社のCOMLINE BUSINESS DATAを訴えた裁判の控訴審(「当法廷」の第2巡回区控訴裁判所です)の判決においても引用されています。

y.sさんがご提案になったthe judgeの「前審」ですが、裁判や判決とは区別したいので、the courtが場合に応じて「地裁」と訳されるように、「地裁判事」とするのがよいかもしれません(ただし、法廷意見を書いている判事が自分のことを「判事」とするはずはないので、「地裁判事」と「(当法廷の)控訴審判事」を混同する可能性は低いと思われます)。