翻訳発注前の確認作業で得られる「低コスト高品質」の納品

翻訳の発注をかける翻訳者や会社を選ぶ際、「発注者にとって納得のいく翻訳を提供できる会社」を選ぶ必要があります。

発注側が翻訳発注先に求めるものは、「高品質と低価格」でしょう。この判断基準は決して間違っていません。

しかし、ここで品質と価格のどちらかだけを重視して発注してしまうと、満足の得られない結果になったり、思わぬところでコスト増が発生してしまったりする可能性があります。

そんな事態を避けるために知っておきたいのが、見積もりを依頼する際の条件次第で、翻訳発注先における制作プロセスが大きく異なってくるということです。なぜなら、翻訳料金は制作プロセスで決まるからです。

発注側が希望する翻訳のレベルをしっかりと伝えることで、翻訳発注先は最適な制作プロセスを組み立てることができ、それがコストの削減になり結果として見積額が下がります。

今回のコラムでは、できる限りコストを抑えてクオリティの高い翻訳を求める発注者が、発注前に確認しておくべきポイントや見直すべき点について解説していきます。

発注者が求める翻訳のレベルをしっかり把握する

翻訳発注先から納品されたものが発注側の期待していたクオリティに達していなかったり、納品後の校正で時間を取られたりしたら、結果的に予算よりコストがかさむことになってしまいます。

このようなことを避けるためには、発注者は求めている翻訳のレベルをしっかりと把握することが大切になってきます。

以下は一例ですが、

  • ・正確な翻訳は必要だが、意訳である必要はない
  • ・不特定多数の人が読むウェブサイト用の翻訳なので読みやすさを重視する
  • ・日英翻訳なので必ずネイティブチェックを入れてほしい

このようにどれだけの制作プロセスが発生する翻訳であるかを、事前にしっかり把握して翻訳会社と認識を共有しておけば、無駄なコストをかけなくてすむようになります。

たとえ同じ翻訳者や会社への発注であったとしても、制作プロセス数が違えば翻訳料金は大きく異なってきますので、発注側は希望する翻訳レベルをできる限り正確に伝えて、翻訳発注先が最適なプロセス(=適切な見積もり)を提示できるようにしましょう。

発注側が正確で具体的な翻訳レベルを伝えておけば、翻訳発注先が表面的な翻訳料金だけで発注先の希望するところを推測するような事態を避けることができます。

しっかりと希望する翻訳のレベルや内容を伝えなければ、結果として必要以上の作業が必要になり、翻訳料金は割高となってしまいます。

提示された見積額が適正かどうかは、発注側が求めるレベルの翻訳作業を行ってもらえる前提で判断するべきです。

原稿のスリム化など翻訳が必要な箇所を絞り込む

低コストで高い翻訳クオリティを求めるのであれば、最初から全文の翻訳を発注するのではなく、本当に翻訳が必要な箇所のみに絞り込んで依頼することで、大幅に翻訳コストを削減することが可能となります。

例えば、多くの人が目にするプレスリリースなどは、いかに読みやすくしてユーザーに伝えることができるかがポイントとなります。ユーザーにとってそれほど興味のわかない内容を繰り返すような文章であったり、自社をアピールするためにあまりにも冗長なテキストであったりすると、最後まで読まれることがないばかりか、逆にユーザーの反感を買うような文章になってしまうことすらあります。

翻訳を発注依頼する前に、重複する部分を削ぎ落としたり、読み手には不要と思われる情報をコンパクトにまとめたりすることができていれば、翻訳コストを大きく抑えることができる上に、ユーザーファーストなコンテンツとして読み手に好感を持たれる文章となるでしょう。

実際にイギリスの某メーカーは、日本語マニュアルの制作にあたり、翻訳対象を原文から40%以上カットしているようです。またフランスのある金融機関は、500ページもあるユーザーマニュアルを230ページにスリム化しています。

文章のスリム化のためには、翻訳発注先と事前の打ち合わせを行う中で、「本当に翻訳が必要な箇所」の絞り込みを行うなど翻訳発注先の協力が必要ですが、このような作業に参画してくれる翻訳者や翻訳会社との共同作業が実現すれば大きなコスト削減につながります。

対訳表などでデータを整理して発注する

過去に翻訳したものを再度依頼しないようにするには、データを常に整理しておく必要があります。そのために発注者ができることは、過去に納品された翻訳文などをデータベース化しておくことです。

過去に翻訳したものとは文章だけではなく、用語も対象となります。

  • ・商品名
  • ・会社名
  • ・役職名

これらの用語はあらかじめ対訳表にして整理しておくようにしましょう。

こうした準備をすることで時間もコストも確実に節約できます。また翻訳発注先によっては、クライアントの希望に添って対訳表などを作成してくれるケースもあります。対訳表などを翻訳者や翻訳会社と共有するようにすれば、お互いの手間を省くことができる上、確実なコスト削減につながります。

文章をグラフィック化してデザインで魅せる

写真やイラストなどの画像データには、テキストのみのたくさんの言葉よりも、効果的に多くの情報を伝える効果があります。例えば、とあるスウェーデンの家具メーカーは17の言語を用いグローバルな事業展開をしていますが、そこで使用される説明書の8割以上がグラフやイラストで構成されています。

またイギリスのヒースロー空港は、至るところで絵文字を駆使し、いろんな言語圏から訪れる旅行者が迷わないよう工夫しています。

もし発注側がグローバルな展開をしている企業で、今後さらに多言語展開を考えているのであれば、グラフィックデザインを統一することは大幅な翻訳コスト削減につながります。

翻訳発注先の中には、データの画像化やグラフ化などの相談に乗ってくれるところもありますので、問い合わせてみるのも良いでしょう。

信頼できる翻訳者や翻訳会社、プロの翻訳者ネットワークを探してトータルコストを削減する

翻訳を発注する際は、プロジェクトのどこまでを外注にするのか、あるいは全面的に任せるのかの決定も大切です。

外注部分が増えれば増えるほど会社内部のリソースをより多く確保できますので、結果としてのコスト削減につながります。

そのために必要なのは、取引実績のある信頼できる翻訳会社やアメリアのような専門的な翻訳者ネットワークと継続して取引することです。

決して多くはありませんが、プロジェクト管理も任せられる翻訳会社は存在しますので、継続して発注ができる信頼性の高い取引先を探すことが非常に重要になってきます。そのためには、一度見積書を子細にわたってチェックする必要があります。

  • ・必要な項目がしっかりと記載されているか
  • ・制作プロセスが見える見積書になっているか

といったことを盛り込んだ見積書を作成した会社を選んで発注するようにしましょう。

納期にゆとりを持たせてコストの削減を図る

会社によっては、通常よりも納期が長いとそれをディスカウントの対象としてくれるところがあります。納期に余裕を持たせることが可能であれば、それを条件にディスカウントの交渉をしてみましょう。条件が合えばディスカウントに応じてもらえるかもしれません。

納期に余裕を持たせることは、発注側・受注側双方に大きなメリットになります。納期が延びれば、翻訳会社側の人材的なリソース管理に余裕が生まれ、よりクオリティも満足度も高い製品を納品してもらえる可能性が高くなります。

このように翻訳発注に関しては事前に確認しておきたい事項はたくさんありますが、まず基本として、クオリティ面でも価格面でも納得のできる翻訳先を探すのであれば、

  • ・専門的な大手翻訳会社に依頼する
  • アメリアのような大手の翻訳者ネットワークを利用する

この二点をベースとして考えることで満足のできる納品が得られるでしょう。