翻訳発注前に知っておきたい翻訳相場の動向と料金を決定する要素

翻訳の発注で特に需要の高いのは産業翻訳のジャンルですが、翻訳を発注する前に知っておきたいのが翻訳料金の相場です。今回のコラムでは、翻訳業界における相場の動向と、翻訳料金を決定する要素について説明していきます。

翻訳という作業はジャンルや分野が多岐にわたっていて、しかも求められるクオリティはクライアントによって異なりますので、条件によって見積もり金額は大きく異なってきます。そのため発注前に翻訳料金が決定される要素を知っておくことで、コストを削減できるかもしれません。

英語翻訳の費用と傾向

AI翻訳の進化により低価格帯の翻訳料金の相場は若干下がっているとも言われていますが、専門的なジャンルに関するプロの翻訳者の高い需要は今後も続いていくでしょう。

翻訳の費用計上方法とその種類

ここでは英語翻訳を例に翻訳料金の計上について説明していきます。一般的に翻訳料金は次の三項目の合算となります。

1.翻訳作業に対する費用

翻訳者が作業を行うための料金となります。翻訳するジャンルや翻訳者に求められる専門性などで料金も変わってきます。

2.校正にかかる費用

翻訳者以外の第三者が行う校正作業は内容の正確性を期するために必要な工程となります。具体的な作業としては、

  • ・誤字脱字のチェック及び納品された訳文のテイストなどの確認
  • ・翻訳された文章の内容が間違っていないかの確認
  • ・英語原文と照らし合わせながらの内容チェック

これらが主な作業となります。

3.その他別途に発生する費用

特定のアプリケーションなどを使って成型した納品を行ったり、短い納期での依頼などプラスの要素がある場合は別途費用が計上されます。

またこれらの費用も翻訳を依頼するジャンルは専門性によって大きく変わってきます。また翻訳料金の計算は、

  • 日英翻訳:文字数ベース
  • 英日翻訳:ワード数での単価

をベースとする場合が多いようです。

翻訳費用に関しては依頼する翻訳の種類(ウェブサイト・契約書・論文)やジャンルによって大きく異なってきます。

また最近ではAI技術の革新的な進化もあり、ソースクライアントによっては人の手によらず、AI翻訳に移行してきているのではないかと考えられます。

高価格帯の翻訳には優れた翻訳者が必要

高価格帯と低価格帯と比較した場合、付加価値が求められる高価格の翻訳では、AI翻訳にはできない高いスキルを持った翻訳者のクオリティが求められます。また作業面から考えても、高いクオリティを求める翻訳では、AI翻訳を利用したポストエディットを使うよりも、最初からプロの翻訳者に依頼したほうが、最終的には作業全体の効率化を図れる場合がほとんどです。

社内でのAI翻訳と翻訳発注の二極化が進む

AI翻訳の精度が上がり気軽に利用できることになったことから、外注せずに全て社内で校正まで行ってしまうところと、翻訳を専門に行っている会社やアメリアのような翻訳者ネットワークに外注はするところの二極化が進んでいくのではないでしょうか。

ただし全てインハウスで翻訳作業を行う場合には、いくつもの注意ポイントが存在します。

  • ・社内に校正などの重要な作業を行える専門知識を持ったスタッフがいるか
  • ・コスト面で、社内リソースを割くのと外注のどちらにメリットがあるか

この部分を十分に精査する必要があります。

そのためには、翻訳料金を決定する要素をしっかりと理解した上で、翻訳を外注した場合にどれだけ求めるサービスを得られるのかを調べておくことが大切になります。具体的に説明していきましょう。

翻訳料金のベースとなる二つの要素

翻訳料金は以下の二つの要素により大きく異なってきます。しかし単純に見積もり金額が安いという理由だけで安易に発注すると、翻訳文のクオリティに大きく影響しますので、以下のことは必ず確認するようにしましょう。

依頼する翻訳原稿のボリュームで変化するコスト

翻訳を外部に発注する場合、見積もりから納品が終わるまでに発生する事務作業コストは、依頼する原稿のボリュームや案件の種類に関係なく一定しています。

したがって、依頼する原稿のボリュームが多ければ多いほど、事務作業コストが全体に占める割合は低くなってきます。さらに翻訳という作業の性質上、同じ翻訳者が一つの案件を最初から最後まで担当した場合、慣れるにしたがって作業効率はどんどん上がっていきます。

また翻訳会社によっては発注する原稿のボリュームが多いと、見積もり段階である程度のディスカウントをしてくれる会社もあるようです。したがってこうした会社にボリュームの大きな翻訳を依頼すると、事務作業コストが占める割合は一層下がってきます。

発注者が求める納期によって翻訳コストは変わる

発注者が高いクオリティの翻訳文を求めると、翻訳者もそれ相応のプロセスや作業を行う必要があるので、当然、料金もそれなりに高くなります。

また高いクオリティとともに短期間での納品を求める場合も、当然ながら翻訳料金は高くなります。作業に慣れたプロの翻訳者であっても、クオリティを落とさず短期間で作業を行うためには、通常以上の負荷がかかります。場合によっては、他の作業を一旦中断するなどスケジュール調整が必要になる場合もあります。

したがって発注する際、「できるだけ納期に余裕を持たせて発注すること」がコスト削減の大きなポイントということになります。納期に余裕があれば受注側は、校正作業まで含めてじっくりと時間をかけて作業ができるため、クオリティの高い翻訳が期待できます。

納期とコストの関係については、しっかりと把握しておくようにしましょう。

見積もりが翻訳相場と大きく異なることがある

もしこれから翻訳会社に見積もり依頼をするのであれば、翻訳料金の相場を参考にしておくと良いでしょう。

翻訳料金の相場に関しては、一般社団法人翻訳連盟が提示している翻訳料金のガイドラインが存在しますので、それを一つの目安とすることができます。ただしこれはあくまで一般的な月ごとの平均値を分野ごとに示した数字ですので、翻訳の専門性や難易度、納期、データフォーマットの違いなどによって大きく異なってくる場合があります。

特に翻訳業界においては、案件ごとに単価が大きく異なるケースがほとんどです。翻訳の見積もりに取り入れられる項目は、

  • ・依頼原稿の分野と難易度
  • ・作業プロセス
  • ・求められる翻訳者のスキルと専門性
  • ・クライアントの要望

などに細かく分けられていて、これらの項目をもとに最適なスケジュールが組まれ、そこで初めて見積もり(コスト)が確定します。

また発注先を選ぶ際には、トライアルできるところも少なくありません。発注前にまずトライアル用の原稿を送って、試訳をしてもらうことで発注先を選ぶ判断材料にすることができます。トライアルに関しては無料で行っているところもあれば、通常価格の半額などで利用できるところもありますので、発注先の候補に挙げている会社に問い合わせてみましょう。