翻訳発注で覚えておきたいワンランク上の依頼方法

以前のコラムでは、翻訳発注前の見積もり時に依頼先に伝えるべきポイントなどについて述べてきましたが、今回はさらに一歩踏み込んで、より納得できる翻訳を受け取るために依頼側が学んでおくべき「伝わる翻訳依頼のコツ」について説明していきます。

「伝わる翻訳依頼のコツ」は、依頼内容の伝え方と翻訳を依頼する原文の構造の伝え方の二つのポイントに分けられます。翻訳に限らず仕事を外注する際に必ずしなければならないのは、納品されてくる品物のイメージを発注元と発注先がしっかり共有しておくことです。この部分がぶれてしまうと高品質な翻訳は期待でません。

発注者として一番大切なのは依頼内容の伝達

ここでは発注する際の二つのポイントについて説明します。全てを翻訳者に委ねるのではなく、発注側もしっかりとポイントを押さえておけば、より品質の高い翻訳文が納品されてくることが期待できます。詳しく見ていきましょう。

発注側が求める翻訳の全体像を伝える

翻訳を依頼する際には、納品される翻訳文の全体像をしっかりと伝えるようにしましょう。例えば、

  • ・訳文が使用される媒体は何か
  • ・どんなユーザーに届けた文章か(地域なども含むターゲット)
  • ・その訳文にどんな効果を期待するのか
  • ・どんなニュアンスで翻訳して欲しいか

など、発注側が翻訳文に求めるものをしっかりと翻訳会社や翻訳者に伝えることです。

翻訳者は文章のプロですので、「どんな目的でこの翻訳は必要なのか」ということを発注元と共有することにより、より高いクオリティの翻訳文を作成することができます。

翻訳発注側も必ず知識を持つようにする

発注者として一番やってはいけないのが、文章を翻訳者に丸投げすること。どんなにスキルの高い翻訳者が仕事をしてくれたとしても、全てお任せでは想像していたものとは違う翻訳内容になってしまうかもしれません。

翻訳を依頼するに当たって、発注者が原文について何の知識も持っていなければ、当然細かなニュアンスや希望するイメージを伝えることはできません。双方でイメージが共有できていなかったら、翻訳文を受け取ってから、「ちょっとイメージが違う」ということになりかねません。

プロの翻訳者であれば、発注側の仕事に対する熱量も感じ取ってしまいますので、原文に書かれている内容を分からないまま、ただ仕事を依頼しているだけであれば、発注側の熱量の低さが翻訳者に伝わりモチベーションを下げることになってしまいます。また発注者が勉強不足であれば、納品された翻訳文のクオリティを判定することができないということも起こります。もし専門知識のないジャンルの翻訳を発注するのであれば、勉強してでも翻訳者の知識レベルに近づけておけば、クオリティの高い翻訳文を期待することができます。

発注者が全く知識のないジャンルの翻訳を依頼するのであれば、依頼する前にできる限りそのジャンルについて学んでおくことで、時間とコストを大きく軽減することが可能になります。

翻訳する原文の構造をしっかりと伝える

発注の際に大切なのは、「誰が読んでも意味を取り違えないような原稿」にしておくことです。依頼したい原文をただ渡すだけではなく、補足情報があれば必ず共有するようにしましょう。その時に気をつけたいポイントについて説明します。

できる限り主語をつける

主語を省略することが多い日本語を他言語に翻訳する際、「主語」を入れることで文章が分かりやすくなります。文章ごとに主語を入れておけば誤訳が防げます。面倒かもしれませんが発注側として必ず準備してから翻訳者に渡すようにしましょう。

主語が書かれていなかったら、本来の主語は「I」であるはずのものが「it」と訳されてしまうかもしれません。

漢字にできる部分は漢字表記に

漢字にできる部分はできるだけ漢字表記にすることで、翻訳者のミスリードを防ぐことができます。日本語という言語は、同じ音の響きを持つ言葉でも意味が異なる場合があります。例えばひらがなで「かんじ」と書くのではなく、「漢字」なのか「感じ」なのかを漢字で表すことにより、誤訳を防ぐことができます。

誤訳を減らすためにできるだけシンプルな文章で

例えば「誰が、どこで、何をする」そんなシンプルな文章であれば、正確な翻訳が期待できます。1文が長すぎたり接続詞が多かったりすると、誤訳が起きてしまう可能性が高くなります。また誤解されるような言い回しになっていないかも事前に確認するようにします。

翻訳者が一度その文章を読めばきちんと理解できるような分かりやすい文章にしておくことで、より高い品質の翻訳が期待できます。

翻訳者から納品された翻訳文を確認してフィードバックする

納品された翻訳文は、発注者自ら必ずしっかり目を通して確認するようにしましょう。そして必要に応じて校正を入れることも大切です。もし自分自身で校正することができないのであれば、社内の人に頼んでも構いません。必要なのは、第三者の目線で原稿を読んで、伝わりにくいポイントがないか確認することです。

校正が終わったら、発注先にきちんとフィードバックしておきましょう。そうしておけば、次回依頼した時は、より品質の高いものを納品してもらえることが期待できます。発注先とのコミュニケーションを密にとることで、依頼者が求める文章のテイストが明確になり、次の仕事に活かされるはずです。

このようなフィードバックの積み重ねを行うことで、翻訳者もより読者に分かりやすい翻訳文になるよう工夫してくれるでしょう。

翻訳発注先の得意分野を把握しておく

翻訳サービスを提供している会社にはそれぞれ得意分野があります。発注先を探す際には、翻訳会社のホームページや翻訳実績などを確認して、発注者の要望に沿ってくれる会社かどうかを判断することも大切です。

それ以外に提供しているサービスの質も事前にチェックしておくようにしましょう。特に見積もりの書き方や納品後のサポートなどは、発注する際の重要なポイントです。丁寧で分かりやすい見積もりかどうかも大きな判断材料となります。

翻訳会社や「アメリア」などの翻訳者ネットワークなどは、専門知識を持った翻訳者を多数抱えています。高いスキルを持ったプロの集団ではありますが、発注側が事前にその翻訳に何を求めているのかをしっかり伝えていないと、質の高い翻訳文は期待できません。

発注側も専門知識を持った状態でプロジェクトを始めることができれば、時間とコスト削減に繋がります。そして特に専門分野やジャンルの多い翻訳業務では、発注する側の依頼内容の伝え方によって、仕上がってくる翻訳文のクオリティが大きく違ってくることを理解しておくことが、高品質な翻訳文を納品してもらうための大事なポイントです。