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TOEICは英語コミュニケーション能力テストの一つで、日本では最も広く活用されているものです。仕事としての英語翻訳者を目指す方であれば一度は受けたことがあるあもしれません。
英日翻訳に必要な原文読解力はTOEICのスコア換算では850点以上だと言われていますが、これはあくまで目安となります。このスコアをクリアしても必ずしも翻訳者として仕事ができるわけではありません。
プロの翻訳者として仕事をするためには原文読解力と同様に求められるスキルが他に二つあります。
✔分かりやすく正しい言葉で翻訳する日本語のライティング能力
✔翻訳者にとって大切なリサーチ力
これらの総合的なハードルをクリアして初めて翻訳者に必要な条件をクリアすることができます。
もちろんこれから翻訳者を目指す方がTOEICテストを受けるメリットはあります。
・スコア化された点数で自身の英文読解力評価を客観的に知ることができる
・翻訳者としての求人応募の際のアピールに役立つケースもある
・TOEICの勉強そのものが翻訳に必要な英語力を身につける一つの手段となる
今回は翻訳者デビューを目指す方のためにTOEICについての詳細を説明していきましょう。
※本コラム内で「TOEIC」と表記しているのは「TOEIC®Listening & Reading Test」を指します
TOEICとは「Test Of English for International
Communication」の略称です。アメリカにある非営利のテスト開発機関であるESTによって運営されています。
また日本でのTOEIC®Programの実施や運営は国際ビジネスコミュニケーション協会(Educational Testing Service)が行っています。
英語の試験として認知度の高いTOEICですが、翻訳者としての活動でアピールできる手段の一つです。
では具体的にTOEICの特徴を見ていきましょう。以下のような三つの大きな特徴が存在します。
1. 合格不合格ではなく「スコア」で評価される
TOEICの大きな特徴は一般の試験のように合格や不合格ではなくスコアで評価される点です。TOEIC®Programの中でも特に受験者が多いのがTOEIC®Listening & Reading
Testですが以下のような配点で合計990点満点となっています。
・リスニングセクション 495点満点
・リーディングセクション 495点満点
日本における受験者の平均的なスコアですが、2016年のデータでは
・リスニングセクション 288点
・リーディングセクション 228点
となっています。
TOEICでは受験者の現時点での英語力をスコアで確認できますので、自分自身の英語力について客観的な目標設定がしやすくなります。
2. コミュニケーション能力を評価される
TOEICではあくまで実践的な英語コミュニケーション能力をスコアとして測ることを目的とされています。英語に関する知識や教養ではなく、セクションごとに出題される会話シーンでは、実際のビジネスや日常生活に即したものになっています。
3. 世界160カ国で実施されるグローバルスタンダード
TOEICの大きな特徴としてあげられるのは国籍に関係なく英語コミュニケーション能力を公平に測定するところにあります。
また特定の文化を知らなければ理解できないような表現は一切排除されています。現在世界約160カ国で実施されているTOEICテストは英語力を測るための「グローバルスタンダード」として認知されています。
翻訳者を目指すキャリアアップなどの目的でTOEICを受験する方も多いでしょう。2020年からTOEICはオンラインでも受験できるようになりました。
このオンライン受験は働き方の多様化やコロナなどパンデミックの影響もあり新しくスタートされたものです。
ちなみにTOEICには2種類のテストが存在します。
1. 個人で受ける公開テスト
2. 団体で受けるIPテスト
オンラインで受験できるのは「IPテスト」のみとなります。詳しく見ていきましょう。
IPテストは「Institutional
Program」の略ですが「団体特別受験制度」と呼ばれるテスト形式です。注意したいのはIPテストは基本的には団体向けに実施されるものですので、個人での申し込みはできない点です。
このIPテストですが基本的には公開テストと同じ種類のテストを受けることができます。また以下の三つはIPテストの場合のみ受験可能なものです。
・TOEIC Writing Test
・TOEIC Bridge Speaking Test
・TOEIC Bridge Writing Test
またこのオンラインテストには三つの大きな特徴が存在します。
1. 2時間の試験時間が約1時間に短縮
従来のIPテストでは
・リスニング 45分
・リーディング 75分
合わせて2時間となりますが、オンラインテストでは以下のようにその半分の時間となります。
・リスニング 25分
・リーディング 37分
出題される問題に形式の変更はなく、単純に問題の数が少なくなったぶん時間が短くなっています。
またオンラインではCAT(Computer Adaptive Test)という仕組みが導入されていますが、これは受験者の能力によってテスト問題が変化するようになっています。
少ない問題数でも「受験者の能力を正確に判定できる」ようになっているとのことです。
2. 24時間いつでもテストを受けることができる
これまでのIPテストは指定された時間に受ける必要がありましたがオンラインでは24時間テストを受けることが可能です。
単純にオンラインになったというだけではなく、場所や時間を選ばずにテストを受けられるのは大きなメリットかもしれません。
企業や学校など「テスト会場を作らないといけない」そんな事務的な負担もオンラインテストにより大きく軽減されたようです。
3. テスト終了後に自分のスコアを確認することができます
これまでのIPテストでは採点結果を見るまで5営業日が必要でした。オンラインの場合はテスト直後に自分自身のスコアを確認することができるようになりました。
またこのスコアはPDFファイルでの保存が可能ですので、デジタル化が進む現代においては非常に便利な機能になっているといえます。
TOEICスクールなどに通って勉強するのも一つの方法かもしれませんが、現実問題として教室に通う時間を確保するのも大変です。また授業料も掛かりますのでもし独学で勉強できるものであればそれに越した事はありません。
TOEICは独学でも正しいステップや勉強法を学べば高得点を狙うことはできます。具体的に見ていきましょう。
まず1番最初に学ぶべきことはTOEICの回答のコツや問題傾向などを事前に勉強することです。実際に参考書を読んだり模試を送り返すことで学習効率はアップします。
また実際に問題形式を知りたい場合にはIIBCの公式サイトでサンプル問題に挑戦することもできます。
翻訳者として実務レベルでの活躍を目標とするのであれば、一つの指数としてTOEICスコア850点を目標の基準とするのもいいかもしれません。
まずそのために必要なのは自身の現在の英語力の把握です。そのために一番手っ取り早いのはTOEIC本番のテストを受けて自分のスコアを知ることでしょう。
また公式問題集を購入してテストを実際に解いてみる方法もあります。おおよそのTOEICスコアを把握することもできますので、それをベースとして自分の目標値を設定してみましょう。
もしTOEICの受験を決めたのであれば、まずすぐに申し込みをするのが大切。テスト勉強だけをだらだらと続けるのは効率的ではありません。
テストに申し込むことでそこから逆算して受験のための計画を立てることができるようになります。このスケジュールに関してはできる限り細かく設定するのがおすすめです。
もちろん初めてのTOEIC受験の場合、なかなか自分に合ったプランを細かく立てるのは難しくなりますが、日々プランを見直しながら少し余裕を持って進めていきましょう。
またそのための勉強は必ず「継続的な学習」プランを立てることが大切です。ランダムな時間にまとめて勉強するよりも毎日少しでも英語に触れ合うことで集中力も養えます。
TOEICのテストは7つのパートに分かれています。例えばリーディングでは、文法知識を問う短文問題のパートもあれば、読解力が必要になる長文問題が出題されるパート7などに分かれます。
そのために必要になってくるのが「パート別問題集」です。特にこれからTOEICの勉強を始める方はまず最初にこのパート別問題集から始めるのがベストな選択肢でしょう。
試験の申し込みも終わりTOEICまで残された時間がはっきりした段階で行いたいのが、「テスト日程から逆算する」勉強方法です。具体的に見ていきましょう。
TOEICは1年に約10回の受験チャンスがあります。
受験日が決まったからといってただがむしゃらに勉強するのではなく、効率的な勉強がとても重要になります。また残された時間によってやるべき勉強も異なってきます。具体的に日数別の勉強情報について詳しく説明しましょう。
実際のテストまで3ヶ月以上ある場合はスコアを上げるには十分な期間だと言えるでしょう。ここで大切なのは徹底的に基礎固めに集中することです。
したがってこのタイミングではまだ実践問題などを解くのはお勧めできません。十分な基礎ができていないのに実践問題に移行してしまうと復習量が多くなりすぎてしまったり、逆算スケジュールが大きく狂ってしまうことも少なくありません。
この時期はとにかく徹底的に基礎勉強(単語や文法)に集中しましょう。
3ヶ月前から基礎的な勉強を続けることにより、ある程度読めなかった文章が理解できるようになってきます。
テストまで残り一か月を切ったタイミングで一番大切なのは復習になります。実践問題を解いてみて間違えた箇所を復習する、この作業を繰り返すことで苦手な部分を克服する時間に当てましょう。
このタイミングになってくると何をするべきか不安になるかもしれません。TOEIC直前の時間は貴重ですので対策できることは全てしておきましょう。
具体的にこの時期に一番大切なポイントを見ていきましょう。
■新しいことは学習しない
試験直前になって学習が思うように進んでないとつい焦って新しいことを学ぼうとしてしまいます。記憶の定着には時間がかかりますので、今持っている知識をテスト当日に全て引き出せるような学習をするようにしましょう。
■直前に模試形式で問題を解いて時間配分を身につける
リスニングとリーディングで合わせて2時間の試験時間です。それぞれのパートの対策はできていたとしても2時間集中力を継続するのは大変なことです。
そのためには模試形式の問題を解くなどして本番感覚を養うようにしましょう。どれだけ英語力があったとしても時間切れで問題が解けなければ意味はありません。
特にリーディングの時間配分は細かく決めておくことが必要です。パートごとに必要な時間を体で覚え込むようにすることが大切です。
■リスニングを倍速で聞く
普段から1.5倍や2倍の速度で英語をリスニングして慣れておくことはテスト本番で大きなメリットとなります。
テスト直前にリスニング音声を早くすることで本番では音声を遅く感じるようになります。
一般的に英日翻訳に必要な原文読解力については、TOEICスコア換算では850点、英検では準一級以上だと言われています。
ただしこれはあくまで目安ですので、実際の翻訳の求人によって求められるスキルは全く異なります。また翻訳者に求められるスキルは英語の言語読解力だけではなく、
・自然な日本語として表現力豊かな言い回しで翻訳する日本語ライティングスキル
・リサーチ力(辞書やWeb、文献などでの事実確認など)
なども英語力と同じレベルで求められるものです。
翻訳の仕事に資格は必要はありません。資格を取ることは求人応募の際にアピールポイントにはなりますが、翻訳者として仕事をしていく上で求められる能力は異なります。
そのためのスキルアップとして取得できる資格はいろいろあります。資格の勉強をすることで英語力をさらに養ったりできますので、実際に求人応募して実務経験を積みながら専門性などをさらに磨くなど、翻訳者としての選択肢の幅が広がる可能性もあります。
さまざまな外国語がある中でも、英日翻訳の需要は特に高いこともあり、資格についてもTOEICや英検以外で色んな分野に特化したものが存在します。
自分が進みたい方向性や専門性を考えた上で選んで勉強するのも一つの方法かもしれません。下記のような分野ごとに特化した資格が存在します。
・日商ビジネス英語検定
・工業英語能力検定試験
・国連英検
・観光英検
・全商英検
また語学の資格ではありませんが、翻訳者を目指して勉強するのであれば「翻訳者としての」資格を取ると言う選択肢もあります。
・翻訳技能認定試験
・JTFほんやく検定
・知的財産翻訳検定
・翻訳者ネットワーク「アメリア」のクラウン資格
TOEICはこれから翻訳者を目指す方が「自身の英語読解力」などの指標を客観的に知ることができるというメリットが存在します。また受験をするための勉強はもちろん自身の英語力アップにも繋がります。
プロの翻訳者へのひとつのステップとして、積極的にTOEICを受験することは大きなモチベーションアップにも繋がるでしょう。