ご利用企業インタビュー

株式会社知財コーポレーション(旧 株式会社知財翻訳研究所)

知的財産専門の翻訳会社

知財翻訳研究所は特許をはじめとする知的財産分野の翻訳に特化した翻訳会社です。創業は34年前の1976年で、当初より仕事の中心は知財関連の翻訳でしたが、1980―90年代の日本の高度経済成長に歩を合わせて、本格的に特許明細書の翻訳を専門とする会社として成長発展してきました。

創業当時は、まだ特許自体あまり社会に知られてはおらず、特許明細書の翻訳を手掛ける人となると本当に少ない時代でした。そんな中で、特許翻訳の仕事に独特の魅力を感じた仲間が徐々に増えていきました。その魅力とは、技術をよく理解して特許の権利を発明者に代わって主張する良質な英文を作成することの重要さと難しさにあります。これは、技術がわかり、法律がわかり、英語がわかり、それらすべてを備えてなおかつ難しい、そして自分一人で果たさなくてはいけないという孤高の仕事の魅力なのだそうです。

同社の社員数は現在約70名、そのうち30名ほどが翻訳を担当する社員であり、いわゆる社内翻訳者の比率が高いことが特徴の一つです。登録翻訳者(フリーランサー)は1000名を越える人数になりますが、実働はそのうちの10〜20%となります。同社の場合、日本から海外への特許出願の翻訳を主としているので、日英翻訳が全体の約90%を占めます。そのため、取引先は日本の大手および中小メーカーを主としています。

技術者と直接やり取りできる環境づくり

高い専門性を求められる特許業界では、通常、特許の出願から取得に至る業務は特許事務所が請け負うため、翻訳する必要が生じた場合は特許事務所が翻訳会社あるいはフリーランスの翻訳者に翻訳業務を依頼するというのが一般的な流れです。

この流れの中では、翻訳者がソースクライアントである出願人企業、すなわちメーカーの技術者に直接技術的な内容を相談することはできません。同社はこのことが良質な翻訳をする上での障害であると感じ、これをきっかけとしてメーカーの知的財産部門と直接の取り引きを目指し、従来の枠組みから飛び出した新しいユニークな取引形態を始めたのです。

「特許明細書の内容は新たな発明です。原文だけでは理解できないことが多々出てきます。しかし、特許事務所を通じた仕事では、技術者の方に直接質問できません。この翻訳で果たしてよいのか半信半疑で仕事を進めることになります。また、納めた翻訳が技術者によって直されたとしてもその修正内容を教えてもらうこともできません」
(専務取締役冨田修一さん)

そこで同社ではソースクライアントである企業から直接仕事を請ける方向で長年努力してきました。「翻訳会社は特許事務所の下請けではなく、両者が各々の専門性を発揮して対等な立場で仕事をしたいと考え、ソースクライアントにそのメリットをお伝えしてきました」(冨田さん)

業界の慣例であった取り引きの流れを変えることは容易ではありませんでした。しかし、翻訳会社がソースクライアントと直にやりとりできれば、翻訳の質の向上ばかりか、期間の短縮にもなります。企業を説得し、確かな品質の翻訳を納品する実績を積むうちに、今では全体の8割以上がソースクライアントである企業からの仕事になったそうです。

知的財産翻訳をグローバルに展開する

特許業界の従来の枠組みを抜け出て、より良い方向へとシフトさせていきたい、そんなスピリットを持って30余年にわたり専門分野を追い続けてきた同社が、現在着々と進めているのが特許翻訳のグローバル化です。1991年に欧州(英国)、2003年に米国(ニューヨーク→ボストン)、2006年には中国(上海)に海外支社・法人を設立して準備をしてきました。「例えば、欧州の企業がアジアに事業展開する場合、日本、中国、韓国それぞれの国の特許事務所に別々に依頼するより、アジアを拠点とする当社に依頼すれば一度の依頼ですべてを任せられる、というのが目標です。どの国に対しても翻訳が必要になります。そして、言語が異なれば誤訳が生じるポイントも異なるかもしれませんが、それらすべてを把握できれば一貫性のある高品質の翻訳による特許出願をすることができます。また、コスト的にも大きなメリットが出るでしょう」(冨田さん)

わが社のここが自慢! プロが指導、基礎から学べるインターン制度

翻訳者が動かす、翻訳者のための翻訳会社を目指す同社では、翻訳者の後進を育てることも会社の重要な役割のひとつと考えています。そこで1997年より翻訳インターン制度を導入し、毎年数名のインターン生を育成してきました。インターン生は1年間契約社員として給与を得ながら同社に通い、社内のベテラン翻訳者やネイティブチェッカーの指導のもと特許翻訳を基礎から学びます。

インターン生の採用は翻訳課題の提出と面接によって決まります。課題の内容は毎年異なりますが、さまざまな分野から出題を行います。この時点では特許にかかわる経験はゼロでもかまわず、“実績や経験はなくてもポテンシャルのある人”を採用の際の基準としています。1年間の研修を終えた後の進路は各人の自由ですが、登録翻訳者として活躍している人も少なくありません。

募集は毎年12月から1月にかけて、同社ホームページで行います。最近は相当な倍率のようですが、特許翻訳に興味のある方はチャレンジしてみてください。

また、同社は2004年にNPO法人日本知的財産翻訳協会が業界の横串的な総意で立ち上げられたときに主導役を果たしました。同協会は年に2回「知的財産翻訳検定」を実施しており、1級合格者はその訳文が同協会ホームページに掲載され、企業の目に留まれば直接翻訳の依頼もあるようです。

スタッフからひとことあきらめずにとことんまで突き詰める精神で専務取締役 冨田修一さん

どのような人が特許翻訳者に向いているか、とよく聞かれますが、答えは難しいですね。「素質のある方」と言いたいところですが、それでは答えになりませんね(笑)。強いて言えば、「論理だったものの考え方が得意な人」でしょうか。それから「あいまいさが納得いかない人」も向いていると思います。逆に何事にも「まあいいか」と思う人は難しいでしょう。

ただし、「理系出身」である必要はありません。もちろん理系の知識は非常に役に立つので理系出身者も多いのですが、理系出身ではないが英語が得意だから特許翻訳の道に進み、必要な知識は勉強して補っている方は大勢います。それを言葉で表現するとしたら、「その場にとどまらない人」と言えるかもしれません。文系なら英語ができる、理系なら技術に関する知識があるというのがスタートでしょうが、それだけでは特許翻訳はできません。翻訳をしていると、あれも知りたい、これも知りたいということが必ず出てきます。それを貪欲に自分のものにしていく人に、特許翻訳者になっていただきたいと思います。

クライアントの真意をくみ取る翻訳を

現在、特許翻訳者として進み始めた人には、上手に「さじかげん」のできる翻訳者になってもらいたいと思います。特許翻訳とひとくちに言っても、クライアントによってニーズはさまざまです。例えば、自然な英語ではなくとも誤解が生じない程度の英文で、原文に忠実な直訳調に訳してほしい(最終的には出願国である現地代理人がリライトする場合など)、というケースもあれば、ネイティブが読んでおかしくない自然な英文に訳してほしい、というケースもあります。そのようなニーズをきちんと捉えて、クライアントの意向に沿った翻訳のできる方がいちばんありがたいのです。そのためにも当社では翻訳者にはなるべく直接クライアントとやりとりをしてもらっています。 新人の頃は「いい翻訳者になろう」「クライアントのためになる翻訳をしよう」と思っていたにもかかわらず、5年10年と経つうちに、信念よりも効率性を重視するようになってきて「この程度でいいか」と納品してしまうことが……、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。クライアントとの直接のやりとりは面倒なことかもしれませんが、コミュニケーションを通してクライアントの望むとおりの訳文が出来上がったときの達成感、充実感はひとしおです。いつまでも情熱を持って、妥協せずに翻訳する翻訳者と一緒に仕事ができればと望みます。