ご利用企業インタビュー

株式会社SCICUS

※情報誌『Amelia』2017年のインタビューです。

株式会社SCICUS

スタッフの皆さん。前列左が落合社長、右が坂本さん

「医療英単語学習本」シリーズ

「医療英単語学習本」シリーズ

創業14年、医療分野専門の出版社

 SCICUSは2003年に設立された医療分野を専門とする出版社です。代表取締役社長の落合隆志さんは医療系の大手出版社に勤めていましたが、もっと自由に本をつくりたいと、独立して新規に出版社を立ち上げたそうです。

 「医学書というと堅めの本を想像されるかもしれませんが、既存の出版社が出していない、ユニークな発想で本づくりをしたいと思い、自分で始めることにしました。最初に手がけたのが“文系出身者でもわかる”“世界一わかりやすい“をコンセプトに医学統計の考え方を解いた本でした。この本が読者に受け入れられ、この方向性でいこうと決めて14年間やってきました」(落合社長)

 昨年、同じく医療分野を専門としていた出版社を買収して新体制になった同社。落合社長は今年を第二創業期と捉えているそうです。

 「医療従事者と患者のあいだを取り持つ、コミュニケーションツールとなるような書籍の出版を考えています。イギリスで10年ほど前からグラフィック・メディスンを提唱している人がいます。難しい医療の話を、マンガなどグラフィックを使うことで易しく伝えようという活動です。これを日本でも広められないかと。まずは、これを説明したグラフィック・メディスン・マニフェストの翻訳権を取り、翻訳したいと思っています。日本発のグラフィック・メディスンを作って、海外に紹介することも視野に入れています」(落合社長)

新発想の英単語学習本がベストセラーに

 現在、スタッフの数は12名。編集者は本社に3名、子会社に3名。ほかにデザイナー、DTP、営業担当者がいます。年間10冊前後の新刊を出していますが、メインは和書です。

 「過去には、弊社の本を韓国で翻訳出版したいというお話をいただいたことや、洋書を翻訳出版しようと試みたこともあるのですが、残念ながら実現しませんでした。今後の課題として視野に入れていきたいです」(落合社長)

 同社が刊行した英語に関する本としては、「医療英単語学習本」シリーズがあります。2009年にシリーズ第1弾の『トシ、1週間であなたの医療英単語を100倍にしなさい。できなければ解雇よ。』を出版しました。

 「主人公はニューヨークの研究所に任期期限付きで勤めるドクター。7日間で今の100倍の医療英単語を覚えなければ職を失ってしまう、というストーリー仕立てになっていて、読み進めるうちに読者も医療英単語を覚えられるという、少々変わった英単語学習本になっています」(落合社長)

 シリーズ第2弾の『トシ、明日あなたの医療英単語でパリを救いなさい。できなければ離婚よ。』は2015年に出版されました。

 「今度はパリを舞台に名所旧跡を巡りながら、人体の70以上の解剖図と1200語の医療英単語を覚えていきます。おかげさまでこのシリーズはAmazon医学 ・ 医療関連語学部門で 1位になり、累計7万部を売り上げています」(落合社長)

 社内で翻訳に関わるスタッフの内訳は、翻訳者・チェッカーあわせて20人、コーディネーター4人、営業は国内担当2人、海外担当1人です。基本的に翻訳者・チェッカーは社内に常駐していますが、徐々に仕事が増えて、現在は全体の4割ほどをフリーランス翻訳者の方に依頼しているそうです。

医療英単語学習本の翻訳協力者をアメリアで募集

 そして、シリーズ第3弾になる『トシ、1日1分でいいからフクシマ英語に触れてみて。それだけできっと世界は変わる。』ではアメリアのJOBで翻訳者を募集しました。

 「この本は、東日本大震災後に福島の大学の放射線科の先生が英語で送ったメールを教材に、放射線の話題に関する専門用語、熟語、関連英語表現が学べるというものです。学習本として書籍化するにあたり、学習者がわかりやすいように逐語訳に翻訳してほしいと依頼しました。日頃こなれた日本語に訳すことを心がけている翻訳者の方に、逐語訳にしてくださいというのは、むしろ難しかったのではないかと思いますが、80名もの方にご応募いただき、トライアルでは多くの方が期待通りのレベルに仕上げてくださいました」(落合社長)そして現在はシリーズ第4弾を制作中だということです。

 「第4弾は医療英語の動詞の学習本で、今度は増やすのではなく使う動詞の数を10分の1に減らそうというもの。現場で使われる動詞は実は少なく、コロケーションを覚えれば同じ動詞でさまざまなことを表現できることを、これまで同様ストーリー仕立てで学べるようになっています。今回、翻訳者の方にお願いしたのは、医学論文のコーパスを参考にしながら学習用の例文とその訳文をつくることです。厳密に言うと翻訳の仕事ではありませんが、面白そうと感じていただけたのか、たくさんの応募があり、ありがたかったです。今後もぜひご協力をお願いしたいと思っています」(落合社長)

わが社のここが自慢! 少数精鋭のプロフェッショナルなスタッフが揃う

 創業当時から他社とはちょっと違った切り口で本づくりをしてきたSCICUS。自慢はやはり、その企画力。そして、その企画を実際に形にするスタッフの存在です。

 「難しく思われがちな医療分野の本を、わかりやすく読者に届けるために、さまざまな手法を取っていますが、そのひとつがストーリー仕立てにするという方法です。そのストーリーを書くのは、ゲームのシナリオライターの経験があるスタッフです」(落合社長)

 「私の担当は、どういうふうにストーリーを盛り上げていくかを考えること。特に医療分野を専門に学んだわけではないので、そこは専門家の方々に任せて、私はいかに読者を飽きさせずに物語に引き込むかを考えます。舞台となる国の地理や医療事情を調べることも重要です。日本との医療事情の違いなども読者の興味の対象ですので、事実に基づいたストーリーにしなければならないと思っています」(シナリオ担当 小林さん)

 医学書なので人体解剖図などのイラストも豊富に盛り込んでいますが、イラスト担当のスタッフも社内にいるそうです。

 「シナリオやイラストなど専門職の者が担当する部分は、規模の小さな出版社の場合、外注することも多いと思いますが、そうするとやりとりが煩雑になり、意図が正しく伝わらないおそれがあります。弊社の場合、社内に専門職のスタッフが揃っているので、一定以上のクオリティが出せているのではないかと思っています」(落合社長)

 そして、分業でそれぞれ専門職の方がつくりあげたパーツをつなぎ合わせるのが編集の仕事です。

 「複雑な要素を組み込んでいくのは、正に職人技です。必要な修正を加えながら、目指す形に仕上げていきます。誌面でどうわかりやすく見せるか、どうデザインに落とし込むのか、編集作業はかなり重要です」(落合社長)

 そして昨年からはアメリアを利用して、翻訳のプロを新たな外部スタッフとして採用していただいています。

 「翻訳や英語に関する部分は、社内に専門のスタッフがおらず、これまで苦労してきた部分でしたが、アメリアに出会うことができ、多くの優秀な翻訳者の方の力を借りられるようになったので非常に助かっています。医療の知識がある方も少なくなく、その力を借りることができれば、今後もっといろいろな、今までにできなかったような企画も実現できると感じています。出版企画の提案も大歓迎です。今後とも一緒に本づくりができればと期待しています」(落合社長)

スタッフからひとこと!

各々の専門を活かして共に本づくりを

 翻訳者を募集する際、トライアルの実施・審査などを担当されている編集部チーフの坂本陽子さんに、トライアルを実施した際の感想を伺いました。

 「トライアルには予想以上の多くの方にご応募いただき、本当に感謝しています。弊社の場合、純粋に翻訳ではなく、学習用の逐語訳や例文作成のお願いで、『翻訳者の方はいやがるかな』『どういう意図か理解してもらえるかな』と心配していましたが、そんな心配はまったく必要なく、皆さんよく理解して、応募してくださいました。また合格者の方からは、『本づくりに関われることが嬉しい』というありがたいコメントもいただきました。弊社は版元ですので、『この部分を翻訳してください』というよりは、『一緒に本をつくりましょう』という気持ちでお願いしたいと思っており、このようなコメントをいただくと本当に嬉しいです。翻訳者の皆さんには、英語のプロの視点からの指摘やアイデアも期待しています。よい関係性を築き、お互いの専門を活かしあって、これからも良い本をつくっていければと思っています」(坂本さん)