ご利用企業インタビュー

株式会社インターシフト

※情報誌『Amelia』2017年のインタビューです。

〜インターシフトの翻訳書〜

『たいへんな生きもの』アメリア会員が訳しました

マット・サイモン著
松井信彦訳
高見浩 訳
発売 合同出版

生きることは問題だらけ。それを解決するために生きものたちは進化を遂げる。米のサイエンスライターが動物の進化を面白くわかりやすく紹介する。若者向けの優れた図書に贈られる全米図書館協会「ALEX賞」受賞。

『人類はなぜ肉食をやめられないのか:250万年の愛と妄想のはてに』アメリア会員が訳しました

マルタ・ザラスカ著
小野木明恵訳

壮大なスケールで、肉がもたらしてきた恵みと虚構を解き明かす。アジアで急速に肉食化が進み、食肉不足、環境の悪化が懸念される地球の近未来。本書は、新たな食スタイルによる、栄養ステージの転換を提唱する。

『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか:人間の心の芯に巣くう虫』アメリア会員が訳しました

シェルドン・ソロモン他著
大田直子訳

なぜ私たちは自分の価値観、文化、国家を守ろうとし、そうではない相手を傷つけてしまうのか? 人間の心と文化の根源からさぐり、多数の心理実験とともに、「保守化」の正体を暴き出す。

『〈わたし〉は脳に操られているのか』アメリア会員が訳しました

エリエザー ・スタンバグ著
大田直子訳

なにかをしようとする前に、すでに脳(無意識)がそれを決めている。では、人間に自由な意志はあるのか? 脳科学の最重要テーマに挑み、「自由意志はある」と解き明かし、大きな反響を呼んだ話題作。

『心を操る寄生生物』

キャスリン ・マコーリフ著
西田美緒子訳

微生物などの寄生生物は、私たちの脳神経に影響を与え、感情や行動を操っている。その脳を操るワザは、あっと驚くほど巧妙だ。神経寄生生物学の先端学者たちに取材し、複雑緻密なからくりに迫った一冊。

15年前から翻訳書を中心に出版事業に乗り出す

 株式会社インターシフトは1985年に創業。広告、コーポレートアイデンティティ、雑誌編集など、さまざまな企画系の仕事を手がけてきました。書籍の出版を始めたのは2003年頃から。長期的なスパンで情報を発信できる媒体は何だろうと考えた結果、単行本づくりを手がけてみようと思い至ったのだそうです。

 「最初の2冊は売れませんでした。これでは出版事業を続けて行くのは難しいかなと半ば諦めかけたのですが、3冊目がヒットし救われました」(編集部)

 それが『フィールド響き合う生命・意識・宇宙』(リン・マクタガート著野中浩一訳)という本です。

 「世界的なベストセラー本で、版権を取るのは難しいだろうと思っていたのですが、なぜか取れてしまって(笑)。それが翻訳書の面白いところですね。この本は価格が3600円と高額だったにも関わらず、新聞の書評に取り上げられるなどして、あっという間に増刷になりました。この本の成功で、出版社としてやっていける目途が立ちました」(編集部)

 これを機に、同社では翻訳書に的を絞り、本格的に書籍出版に力を入れ始めたといいます。

 「まだ実績のない新進の出版社にとって、日本人作家に書いてもらうのはハードルが高いもの。しかし翻訳書の版権獲得に関しては、大手出版社が相手でも対等にわたりあえる。原書を見極める目さえあれば問題ない、そう確信しました」(編集部)

専門分野を絞って情報に敏感になり原書をさぐる

 現在は年間6冊くらいのペースで翻訳書を出版しているという同社。分野としては、ポピュラー・サイエンスがメインで、その中には、心理学や政治・経済に絡むものもあるそうです。

 「科学は発見の多い分野で、どんどん新しい情報が出てきています。特に、話題のAIやゲノムなどにも深い関わりがある脳科学の分野は、人間の世界観を変えてしまうような驚くべき進化を遂げており注目しています。日本人の科学者も優秀ですが、世界の研究のほうが圧倒的にデータ量が多いことは確かなので、この分野の世界の本を翻訳して届ける意義があると考えています」(編集部)

 専門性の高い、最先端の情報の中から、どの本を日本で翻訳出版すべきかを見極めるのは、かなり難しそうですが、原書の発掘はどのように行っているのでしょうか。

 「エージェント経由で案内がくるものも検討しますが、できれば他社が知らない本を自社で探して手がけたい。米国のAmazon.comでは発行のかなり前に新刊情報が出ますし、著者のサイトも充実しているので、それらをチェックして、翻訳すべき本を探しています。小さい出版社ゆえに、リーディングをして面白いかどうか判断するのも、制作費をどう配分するかも、すべて編集部内で即断できます。だから、版権取得に動くかどうかの判断も早いんです。うちは一番早くオファーをする出版社かもしれません(笑)」(編集部)

テーマに対して興味が深い翻訳者を発掘する

 翻訳書を手がけるようになって間もなく、同社にはアメリアの協力会社にご登録いただきました。

 「最初の頃は、付き合いのある翻訳者から別の翻訳者をご紹介いただくなどしていましたが、その方々にアメリア会員が多かったことで、アメリアの存在を知りました。今は主に『会員プロフィール検索』を利用しています。インターネット上の情報が充実する前は、訳書を読んで仕事をお願いしたい翻訳者が見つかったら出版社に問い合わせ、翻訳者の連絡先を教えてもらって連絡を取り、会って説明して......とかなり時間がかかりました。今は書名や訳者名でインターネット検索するとかなりの確率で連絡先が見つかります。翻訳者はアメリア会員である確率も高く、会員プロフィール検索でも見つかることが多々あります。アメリアには本当に助けられています」(編集部)

 書籍1冊の翻訳を任せるとなると、その分野を訳した実績があるかどうかを重視されるのでしょうか。

 「実績があるに越したことはありませんが、ポピュラー・サイエンスを訳したことがある方というのは多くはありません。書籍の翻訳の経験があり、大学で理系の勉強をした方、心理学や人類学の知識がある方にお願いすることもあります。今後はアメリアの『スペシャルコンテスト』などを利用して、新しい翻訳者の発掘もしたいですね」(編集部)

わが社のここが自慢! 売れる本だけでなく、出すべき本を出版する

 年間の発行点数は決して多くありませんが、書店員やポピュラー・サイエンスを好む読者の間では「脳科学系の本といえばインターシフト」と認知されているほど、強い分野を持っている同社。

 「とても興味深いテーマでしたので、注目していくうちに、この分野の本のラインナップがかなり増えました。脳科学系だったら負けないぞという自負もありますし、待ってくれている読者のためにも、この分野の本は出し続けたいと思っています」(編集部)

 大手出版社が売れないかもしれないと二の足を踏む本であっても、「インターシフトが出す脳科学系の本」は読者からの信頼が厚いため、多少のリスクがあったとしても挑戦できるブランド力が出来上がっているのだと言います。

 「例えば、AI はかなり人間の脳に近づいてきており、ビジネスでの活用も盛んになってきています。万人に注目される本ではないでしょう。でも、ビジネスマンや技術者など読むべき人が今の世の中にかなりの数いることは確かです。版権取得を検討していると、日本ではまだ版権が空いているのに、中国をはじめブラジル、エストニアなど新興国では既に翻訳出版されている本が少なくない。日本の文化レベルが新興国に追い越されていくようで危機感を感じています。売れる本だけでなく、読者数は少なくても届けるべき本があると強く感じています」(編集部)

スタッフからひとこと!

幅広く本を読むことでセンスは磨かれる

 書籍の翻訳者に必要なスキルについて、編集部に伺いました。

 「分野が何であれ基本は同じ。きちんと読者層を想定した翻訳を求めています。ポピュラー・サイエンスは科学ものとはいえ、あくまでも一般の読者を対象とした本であって専門書ではありません。正確に訳すのはもちろんですが、それプラス、一般読者にも理解できる工夫がほしいのです。それが顕著に出るのが見出しの訳です。本文は文脈があるので、それに沿った訳文になると思いますが、ヘッドラインの役目をする見出しは、いろいろ変化を付けられるぶん、どう訳すかでセンスが分かれます。見出しの訳を見ると、翻訳者が読者に何を伝えようとしているのか、著者の意図をよく理解しているのかどうかがわかります。見出しは編集者が直すことも多いですが、できれば編集者が直さなくてもいいレベルの翻訳が上がってきてほしい。杞憂かもしれませんが、最近の翻訳者はあまり幅広く本を読んでいない気がします。翻訳をするようになると、なかなか本を読む時間が取れないとは思いますが、一般教養としても幅広く本を読んでほしい。単語のセンスはそういうことでしか育まれないと思いますから」(編集部)