【アメリア】対談の部屋 10-1 世界同時出版に向け、超大作の翻訳に挑む!〜仙名紀&仙名ガールズ奮闘記〜
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<第10回>  全6ページ

第10回 世界同時出版に向け、超大作の翻訳に挑む! 〜仙名紀&仙名ガールズ奮闘記〜
 「アメリカのベストセラー評伝作家キティ・ケリーが、現在ブッシュ一族の隠された歴史をまとめた本を執筆中。2004年9月に世界同時出版予定で、日本でも同時に翻訳出版できるか」。そのような話が浮上したのは、出版予定のわずか5か月前、4月のことでした。原稿用紙で1000枚あまりもある長編、しかも限られた日程。出版界の常識から考えると、とうてい無理な話です。しかし、その常識を覆した人たちがいます。2004年9月14日に、予定通り華々しく書店に並んだ『ブッシュ・ファミリー』『ブッシュ・ダイナスティ』の翻訳秘話を、翻訳家の仙名紀氏と5人の愛弟子の方がたに伺いました。



『ブッシュ・ファミリー
ブッシュ一族 虚飾の源流 1908年〜』


『ブッシュ・ダイナスティ
父子二代大統領 栄華の行方 1972年〜』




仙名紀氏 アメリア名誉会員
1936年、東京生まれ。上智大学新聞学科卒。朝日新聞社では主として出版局で「週刊朝日」など雑誌の編集、および外国の雑誌・書籍の版権獲得・翻訳にたずさわる。定年退職後は翻訳家。訳書は55冊を超える。上智大学講師。フェロー・アカデミーの講師も20年あまり。最近の訳書に、『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験』(中公論新社)、『私はサダム・フセインの原爆を作っていた!』(廣済堂出版)などがある。




宮田攝子氏 アメリア会員
仙名先生のクラスに3年間通い、2年半前に卒業。先生の下訳は今回で3冊目。訳書は『快眠百科』『アーユルヴェーダ美容健康法』(産調出版)などの実用書のほか、角川書店とサンマーク出版からも近々翻訳書を出す予定。







倉田真木氏 アメリア会員
 1999年仙名先生の実践クラス、2000年ゼミクラスを受講。訳書に『男は火星人 女は金星人』、『恋がうまくいかない本当の理由』(共訳、ソニー・マガジンズ刊)、『幸運を呼ぶパワー・ブック』、(ソニー・マガジンズ刊)、『デイ・アフター・トゥモロー』(メディアファクトリー刊)がある。





西川美樹
氏 アメリア会員
実務翻訳の仕事をしながら、2002年4月から2003年3月まで仙名先生のノンフィクションゼミを受講。訳書に『生命科学の今を知る1 感染症〜ウイルスたちとのたたかい』(文溪堂)、『あしたから子どもが変わる30の子育てマジック』(実業之日本社)がある。







上原裕美子氏 アメリア会員
フェロー受講歴2年、昨年1年間は仙名先生のクラスを受講。いわゆる「本」の翻訳に関わったのは今回が初めて。現在は複数のワラジを重ねて履いている状態です。





庭田陽子
 アメリア会員
フェロー受講歴3年。2003年度仙名先生のノンフィクションゼミ受講。今回仙名先生の下訳に初参加。訳書として『イスラーム――その教えと歴史(仮題)』(ランダムハウス講談社)が近日出版予定。下訳として『MBA全一冊――ビジネスに役立つ 経営理念のエッセンス(仮題)』(日本経済新聞社)が来年初頭出版予定。





加賀雅子
翻訳コーディネーター。「オフィス・カガ」代表
 
 

1.世界同時発売を目指し、短期決戦の翻訳プロジェクトが始動


--まず、この本の翻訳が、いつごろ、どのような形で始まったのか、教えていただけますか?


加賀:私は現在、翻訳コーディネーターという仕事をしています。これは、いわば出版社と版権エージェント、翻訳者の橋渡しのような仕事で、出版社に原書の紹介や翻訳者の紹介をしたり、出版社側からの依頼を受けての翻訳、また翻訳者・チェッカー・校閲者などでチームを構成して大きな翻訳の仕事も引き受けます。今回は後者のパターンでした。ランダムハウス講談社の編集部の永澤さんから「キティ・ケリーというアメリカの大物作家が9月14日に出版する本を、日本でも同時に翻訳出版したいのですが」という話を伺いました。それが4月中旬のことです。

--ということは、5か月で1冊を仕上げなければならないと。

加賀:第1稿が届いたのが5月中旬ですから、スタートから4か月ですね。その後、6月に入って大幅な修正の入った第2稿が届きましたので、結果としては上下各600ページの本を最終原稿入手から責了までが正味3か月という、ほとんど一般の書籍では考えられないスピードの翻訳作業となりました。

--ちなみに、普通の書籍の場合、どのような日程で進められるのですか?

加賀:300ページ前後の本で翻訳に約3か月、それに1〜2か月の編集を加えて、トータルで4〜5か月というのが一般的です。ただ、近頃は印刷所のコンピュータ化で、かなり出版スピードが速まっています。

--分量的に、その4倍ぐらいあるわけですから、単純に計算しても無理ですね。その相談を受けて、加賀さんはどう思われましたか?

加賀:実はその少し前に仙名先生とお会いしていて、アメリカ政治というテーマは仙名先生のお得意のテーマだし、下訳を任せられる生徒の方たちがいらっしゃるし、これはなんとかなるんじゃないか、直感で「無理ではない!」と感じました。ただ、仙名先生のスケジュールが空いているかどうかが心配でしたが。

--加賀さんと仙名先生の出会いというと?

仙名:実は、アメリアなんですよ。僕もアメリアの会員だから、アメリアWebサイトでいろいろと情報を得ることがあるんです。そこで偶然、翻訳コーディネーターをやっているという「オフィス・カガ」を見つけたのがきっかけです。加賀さんに連絡を取って、会うことになりました。最初のデートが2月ごろだったかな。何かいい本があったら一緒に作りたいですね、という話をしました。

--そこで、加賀さんは、真っ先に仙名先生に連絡をとられたわけですね。

加賀:そうです。すぐに電話をしました。

仙名:そうそう。電話をもらって、なんの本かと聞いたら、キティ・ケリーだって言うんですよ。実は、僕はキティ・ケリーをずっとやりたかった。彼女の評判はずっと以前から知っていて、本も3冊読んでいました。電話口で叫んでしまいました。「これならやりたい!」って。

--先生のスケジュールはどうだったんですか?

仙名:その直前に、2か月で翻訳してほしいという別の本の話を断ったばかりだったんです。理由は、スケジュールがしんどすぎたから。今回の本も同じようにスケジュールは厳しかったんだけど、キティ・ケリーで、しかもブッシュがテーマだという。これは何がなんでもやりたいっていう思いでした。アメリカのコンテンポラリー・ポリティクスは、朝日新聞社時代にずっと追いかけていたテーマなので、僕のいちばんやりたい、かつやりやすい仕事なんです。

--ところで、世界同時発売という出版スタイルは増えているのですか?

仙名:増えていますね。毎年、何冊かずつ出ています。私が知っている古いケースとしては、日英同時発売されたサッチャーの自伝があります。テーマはトピカルなもので、短期決戦型です。同時発売するメリットは、世界的に広まる話題性ですね。

--今回のテーマも、世界同時発売がぴったりのものだったのですか?

仙名:まさにそうです。アメリカの大統領選挙が、11月に迫っていますから、それまでに出版しなければ意味がありません。ところが1人で翻訳できる分量ではありませんから、下訳をお願いしなければならない。以前、同じように600ページくらいのものを6人で分けて翻訳したことがありましたから、今回も5〜6人動員すれば大丈夫だろう、と目算しました。すると1人あたり100ページあまりになります。下訳に掛けられる時間は約2か月。これならできるだろうと判断しました。
 
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