【アメリア】対談の部屋 13-3 マンガ専門の出版社が翻訳出版に新規参入! 翻訳書未経験の編集者とフィクション未経験の翻訳家が二人三脚で歩んだ奮闘記
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第13回 マンガ専門の出版社が翻訳出版に新規参入!翻訳書未経験の編集者とフィクション未経験の翻訳家が二人三脚で歩んだ奮闘記

3.訳者とはイタコのようなもの。著者の描く世界を忠実に表現するのが仕事

――さて、そんなノリノリな作品の翻訳はいかがでしたか? 印象に残るエピソードなどがありましたら教えてください。

小林:実際に翻訳に入ったのは6月半ばからで、約2カ月で訳了しました。最後までとても楽しい気持ちで訳せました。アビーが自分に乗り移った感じさえしたほど。翻訳中は常に「私はイタコなんだ。著者の表現を忠実に口寄せするのが務めなのだ」と自分に言い聞かせてましたね。とにかく、訳文のテンションを最後までキープできるように努めました。

佐藤:その辺は自分も初めてのことですし、心配していたので、途中で一度、訳文を見せていただいたんです。でも取り越し苦労で済みました。送られてくる訳文を拝見していくうちにどんどん夢中になって読んでしまって「早く新しい原稿あがってこないかな〜」と楽しみになったくらい。アビーが留守番を言いつけられて不満げに「むむむ」と返事をする場面(同書P332)を読んだときには小林さんに惚れた!と思ったくらいです。ページ数の都合で原文の意図は変えずに短くまとめたりする作業もあったのですが、基本的には全て小林さんにおまかせしました。

小林:佐藤さんにご相談したのは、もともとはエピソードだったのを説明でまとめる時くらいでしたね。でも、結果的には1箇所のみで済み、ほとんど原文通りにおさめることができました。あと話し合ったことと言えば、文化やカルチャーに関する表記といったところでしょうか。

佐藤:そうですね。この作品にはスウィーツが度々登場し、主人公の心情を効果的に表現しているのですが、日本ではまだなじみのない名前の品も登場するんです。「バナナ・スプリット」は確か「バナナ・サンデー」に変えてもらいました。他に日本でも放送されたアメリカのTVドラマ『吸血キラー/聖少女バフィー』、『バフィー 恋する十字架』のバフィーが例え話で出てくるシーンがあるのですが、補足として最初は映画の邦題『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』を表記していました。でも、日本での知名度は映画よりTVドラマの方が高いと思ったので、最終的には「TVドラマ、バンパイヤ・スレイヤーのバフィー」としたんです。

――小林さんは今回が初のフィクション翻訳ですよね。これまで手掛けたノンフィクション翻訳との違いを感じたところなどはありますか。

小林:ノンフィクションは誰に向けての本なのかはっきりしています。『ドッグトレーニング』という本なら、犬を飼っている人向けです。ならば、この程度の専門用語なら使っても差し支えないだろう、というラインが自ずと見えてくるんですけど、フィクションは読者層が前者と比べて抽象的。「若者向け」とありますが、若者だっていろいろじゃないですか。まして、今回は翻訳書になじみのない若者でも楽しく読める文章を心がけていたので、先のような文化の違いによる表記には一層気を遣いました。

佐藤:あんまり優しすぎると、翻訳書を読み慣れている人には物足りなくなるから、その辺の見極めは難しいなと感じましたね。

――作者のローリーさんともコンタクトを取っていたんですよね。

小林:はい。いや〜彼女もノリで書いてしまっている部分があって、通りの名前が変わっていたり、時系列的におかしな箇所もあったのでメールで問い合わせしたんです。もちろん、ノリノリでユーモアのあるメールが迅速に返信されてきましたよ。実は、アビーのモデルはこのローリーさんであり、彼女も超能力カウンセラーなんです。

佐藤:ついでにローリーさんからサイキックなアドバイスをいただいたりした?

小林:あー、それは残念ながらありませんでしたね。そういえば、日本語版の表紙を見せた時とても喜んでくれましたよ。

佐藤:よかったです。原書も表紙にイラストを用いているのですが、そのイラストのテイストだと我々の考えるターゲット層よりは少し大人向けの印象を受けたので、日本語版ではヤング・レディースコミック系のイラストに変えたんです。本当は、本文にもイラスト・カットを入れたかったんですけど、そうするとどうしてもページが増え、これ以上販売価格が上がってしまうのは無理なのでそれは断念しました。
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