翻訳者に必要な英語力とは?求められるレベルとスキルアップの秘訣
翻訳者としてプロを目指す際、目安となる英語力は「TOEIC 850点以上」「英検準1級~1級以上」がひとつの指標となります。しかし、高いスコアがあればすぐに翻訳の仕事ができるわけではありません。翻訳のプロの現場では「英語の理解力」を超えた、より実戦的なスキルが求められます。
翻訳者に求められる英語力と3つの必須スキル
英語レベルの目安:TOEIC850点〜、英検1準1級~1級程度
- 必須スキル1 「精読力」:単語の裏にあるニュアンスや文脈を正確に読み解く力
- 必須スキル2 「リサーチ力」:専門用語や背景知識を徹底的に調査する力
- 必須スキル3 「日本語表現力」:読者に合わせた自然で正確な訳文を作成する力
英語の資格試験で高得点を取っていても、翻訳トライアルで不合格になるケースは少なくありません。その理由は、翻訳には「なんとなく意味がわかる」レベルではなく、一文一文の構造を論理的に説明できるほどの「緻密な読解力」が必要だからです。
冠詞一つ、時制一つの違いで意味を大きく変える翻訳では、基礎文法の欠如は致命的です。英語力に加え、IT、医薬、金融などの専門分野における知識が伴って初めて、プロの翻訳として成立します。
本コラムでは、翻訳者に必要な英語力の詳細と、スコアの壁を越えてプロとして活躍するための具体的なスキルアップ法を解説します。
英検準一級レベルとTOEIC850点はあくまで一つの判断材料
一般的にいわれている英検準一級とTOEIC850点ですが、翻訳者として仕事を始めるのに必ずしもクリアしなければならないものではありません。
もちろんTOEICを目指して勉強することは「翻訳者になるための勉強方法」としては役立つもので、このレベルをクリアしておけば翻訳者としての求人応募の際にアピールとなるかもしれません。
また英語に関する学習は原文読解力を養うものとしては役立ちますが、それは直接翻訳者としてのスキルに結びつくものではありません。
TOEIC850点や英検準一級は一つの基準として考えれば理解しやすいかもしれません。この基準を満たしたとしても翻訳者に求められるスキルはリサーチや日本語のライティング能力など数多くあります。
英検やTOEIC資格以上に必要な「日本語」の翻訳スキル
翻訳者としての勉強を続ける上で英語読解力と同じように、あるいはそれ以上に求められるのが日本語のライティング能力です。例え英語原文を完全に理解できていたとしても、それを誰が読んでもわかりやすく理解できる日本語としてアウトプットするのは簡単ではありません。
日本語は数多くの表現方法があるとても難しい言語です。翻訳者デビューを目指して英語読解力をつけるのはもちろんですが、それと同じレベルで絶対に勉強しておきたいのが日本語ライティングの基本です。
具体的に言いますと、
- ・主語と述語の呼応
- ・句読点の使い方
- ・一文の長さ
- ・適切な日本語への置き換え
これらはあくまで一例ですが、読み手にストレスなく「もしかして原文かも」というレベルで翻訳するには「日本語のライティングスキルを上げること」は絶対必須条件となります。
そのためには普段から英語の勉強と平行して、
- ・日々新聞やWeb、本など日本語の文章を読んで勉強する習慣をつける
- ・有名な翻訳者の訳文などを英語原文と比較しながら勉強する
など普段から日本語の表現方法を学んでおくことが必須条件となります。
英語の資格よりも大切な「リサーチ」能力
英語読解力では人には負けないので翻訳者を目指す、これは間違った選択ではありません。ただし、実際の翻訳の仕事でキーとなるのは「リサーチ力」です。
たとえ原文を完全に理解して日本語のライティング力が高い人でも、優れた翻訳は事前リサーチなしには完成しません。
翻訳者として案件を受けた場合、出来る限りの事前リサーチを行うのは必須とも言える作業工程の一つとなります。
具体的には
- ・参考文献を調べる
- ・Web情報を調べる
- ・辞書で調べる
などリサーチ方法は数多くありますが、翻訳者を目指すのであれば全てを十分に使いこなす必要があります。
特に注意したいのはWebでのリサーチです。ネット社会と言われる現在は、知りたいことを簡単に検索エンジンで調べることができます。
そこで大切になってくるのは「情報の裏付け」。ネットソースを利用して情報をリサーチする場合、出来る限り信頼性のあるサイトの情報を短時間で探し出すスキルが求められます。
そのために注意したいのは、無料でできるネット検索の裏側に付きものの「信頼性の高いソースが少ない」という点です。
例えば医療系のリサーチであれば、医療関連の公的サイトやドクターなど、医療関係者が書いている情報にはそれなりの信頼性があります。ただし、信頼できそうなソースを見つけた場合でも、必ず別のソースや文献で内容の信頼性をダブルチェックするなど習慣づけるようにすることが大切です。
また必要に応じて英語で書かれた文献やソースなども見る必要が出てきますが、この場合も同じで単純に英語圏のソースだからというだけで安易に信頼してしまうのは危険です。
この「リサーチ能力」は翻訳者に求められるスキルの中でも特に重要なものです。普段からいろんな情報ソースに触れて信頼性を確認しておくことが、翻訳者としての経験値につながります。
また翻訳者の収入はどれだけ効率よく仕事ができるかで変化してきます。その中でリサーチスキルを上げることは特に無駄な時間を減らすことにつながります。
翻訳者に求められる必須なPCとITスキル
これから翻訳者として仕事を始めようという方がつい置き去りにしがちなのがPCとITのスキルアップです。
フリーランスの翻訳者として仕事をする場合、そこで求められるのはスピード感。どれだけ英語読解力が高くても翻訳スピードを上げるのには限界があります。そこで必要となってくるのが機械の力を借りて翻訳するということです。
積極的にGoogle検索や置換、機械翻訳などを利用することが翻訳実務では大きな作業の効率化につながります。
翻訳者としての収入をアップさせるために必要なものはこの「作業の効率化」しかありません。もちろんこれは手を抜くという意味ではなく、ITやPCスキルを向上させることで達成できることです。
フリーランスの翻訳者に安定収入をもたらすクライアントとの信頼関係
翻訳業界では数多くのフリーランスの方が活躍されていらっしゃいます。場所や時間も選ばない在宅での仕事は多くの方が翻訳者を目指す「魅力」でしょう。
そこで必要になってくるのが継続的に仕事を受けるための努力です。自分のペースで仕事ができるフリーランスの翻訳者ですが、収入を安定させることがなかなか難しいものです。
そのためには常に質の高い翻訳=クライアントの満足度の高い仕事ができる翻訳者である必要があります。翻訳者としての評価を得られるよう仕事をするのは当たり前ですが、現実的には常に継続的な仕事があるわけではありません。
また翻訳者として仕事継続ができる安定した基盤づくりもとても大切です。働きやすい仕事環境とクライアントとの信頼関係が翻訳者に求められるスキルであり、条件の一つとも言えます。
またクライアントに対して自分自身をアピールするセルフブランディングも大きな武器となるでしょう。そのために自分自身のストロングポイントを常に把握しておくことも大切です。例えば大学での専門性が高い専攻分野や、働いていた企業での実務経験で学んだスキルなどは大きなアピールポイントともなります。
翻訳者を目指す方であれば「高い英語読解力」は当然として求められるものですが、クライアントから高い評価を得られるためにどのように自分をプレゼンするか、そしてどのように信頼関係を築いていくのか考えることも翻訳者に求められるスキルの一つだと言えます。
翻訳者として安定した収入を得るための資格と条件のまとめ
フリーランスとして翻訳者デビューを考える方は多いと思います。また英語力には自信があるという方も少なくないでしょう。
そのために英検やTOEICを受験するのは悪いことではありません。ただそこで一定の点数をクリアしたからと言っても、すぐに翻訳者として安定した収入は得られません。
大切なのは翻訳の仕事で生計を立てて行くと言う強い意志と行動力です。日々の努力はスキルアップにつながるだけではなく、「作業の効率化」と言う翻訳者としての収入につながる大きな部分を占めます。
翻訳者として仕事をするための条件は決して資格や試験の点数だけではありません。今回のコラムを参考に今自分に欠けているものは何か、を判断して翻訳者デビューを目指してみてはいかがでしょうか。
翻訳者に必要な英語力に関するよくある質問
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Q1 翻訳者になるにはTOEICで何点くらい必要ですか?
A1 一般的にTOEIC 850点~900点以上がひとつの目安とされています。ただし、スコアはあくまで基礎学力の証明であり、実務ではスコア以上に「一文を正確に読み解く精読力」と「専門知識」が重視されます。
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Q2 英検1級を持っていないとプロの翻訳者にはなれませんか?
A2 必須ではありませんが、英検準1級~1級レベルの語彙力と読解力はプロとして活動する上での標準的なラインです。資格そのものより、その級に相当する英語運用能力があるかどうかが問われます。
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Q3 英語は得意ですが、帰国子女でないと厳しいでしょうか?
A3 全くそんなことはありません。プロ翻訳者の多くは日本国内で学習した方々です。翻訳に必要なのは文法構造を論理的に分析し、日本語に再構築する「論理的な英語力」だからです。
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Q4 文法が完璧なら、翻訳トライアルに合格できますか?
A4 文法は「大前提」ですが、それだけでは不十分です。翻訳には、原文の背景(専門分野の知識)を理解するリサーチ力と、読者に合わせた自然な日本語表現力の3つが揃っている必要があります。
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Q5 翻訳に必要な英語力と、英会話に必要な英語力は違いますか?
A5 大きく異なります。英会話は「瞬発力」と「コミュニケーション能力」が重要ですが、翻訳は「緻密さ」と「多義語の微細なニュアンスの書き分け」が求められます。
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Q6 英語のスキルアップのために、まず何を勉強すべきですか?
A6 もし基礎に不安があるならまずは「徹底した英文法の復習」が効果的です。
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Q7 リーディングは得意ですが、リスニング力も翻訳に必要ですか?
A7 基本的にはリーディング力が中心となります。映像翻訳においてはリスニング力をいかすことも可能ですが必須ではありません。
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Q8 専門分野の知識は、英語力と同じくらい重要ですか?
A8 分野によっては英語力以上に重要です。例えば医薬や特許翻訳では、英語が読めても「その分野の論理」がわからなければ誤訳を防げません。英語力×専門知識の掛け合わせが単価アップに直結します。
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Q9 翻訳支援ツールを使えば、英語力が低くてもカバーできますか?
A9 できません。ツールはあくまで「効率化」の道具であり、ツールの出した訳文が正しいかどうかを判断するのは翻訳者本人です。高い英語力がなければ、ツールの誤訳を見抜くことができません。
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A10 「英語力と同等、あるいはそれ以上」に求められます。翻訳とは「英語を理解し、日本語で表現する」仕事です。ターゲットとなる読者に合わせて、硬軟織り交ぜた正確な日本語が書ける能力はプロの必須条件です。