翻訳の仕事のスキルを上げるために学びたい三つのポイント
翻訳の仕事をしている方にとって翻訳スキルのブラッシュアップは欠かせない日常。
ただ翻訳という仕事に関してはこうすれば上達する、という絶対的な方法は存在しません。日々の地道な勉強や努力の積み重ねがあって初めて、翻訳基礎力をアップさせることができます。
基礎的な勉強を繰り返すことで言葉使いに関する「表現の引き出し」も自然と増えていきます。特に文法の勉強に関しては誰しもが一番重要だと考えているでしょう。
そこで今回は文法を学ぶ注意点も含め、翻訳の勉強で身につけたい三つのポイントについて説明します。
ビジネス文書の翻訳は必ず正用法で
文法スキルを磨くのに新しく英語の参考書を購入する必要はありません。受験勉強時代の英文法の参考書をもう一度読み込むだけでも思わぬ発見があることでしょう。
翻訳基礎を勉強し続けることで、表現に対するさまざまな言葉の引き出しも増やせます。そこで行き当たるのが「何が正しい表現なのか?」という論点です。
日本語、英語にかかわらず全ての言語は生きています。以前であれば間違った表現であっても、一般的に広まりつつあると認知される言葉や表現も少なくありません。
例えば日本語で使う「大丈夫」という言葉ですが、最近ではYesとNo両方の意味で使われます。
- 「いいえ、大丈夫です」という否定形や
- 「はい、大丈夫です」と言う肯定形
アメリカなどでも同様に、文法では間違っているとされる表現を、英語を母国語とする人が使うケースも増えている現状。
それでも翻訳の仕事では正用法で書くのが基本です。特にビジネス関連の文書などでは「今は一般的に使われている表現」であっても正しい文法に基づいた表現が求められます。
小説などでの話し言葉であればかまいませんが、正式なビジネス文書やコーポレートサイトで使うのは避けるべきでしょう。
翻訳者にも難しい英語の句読法
punctuationと呼ばれる句読法ですが、日本語では一般的に使用されるのは句読点や括弧(「」や『』など)だけです。
英語での句読法実に多彩で、例えばカンマ一つにしても使い方ひとつで文章全体の意味が変わってきてしまいます。
punctuation例
- ・カンマ(,)
- ・感嘆符(!)
- ・ピリオド(.)
- ・疑問符(?)
- ・引用符(“”)
- ・アポストロフィ(')
- ・コロン(:)
- ・セミコロン(;)
- ・ハイフン(-)
- ・ダッシュ(—)
このような記号に加えて「表記」という意味では大文字や数字の表し方、斜体(italics)の使い方など学ぶべきポイントは数多くあります。
一番多く使われる「カンマ」は特に使い方を覚えたい表現方法。使い方一つで文書そのものの意味が変わってきてしまいますので、正しい使い方をマスターすることが必須です。
具体例を挙げてみましょう。
そしてカンマが入ると
となりますがこの二つの意味は全く異なります。
例えば上記1のカンマがない場合では、複数の兄弟や姉妹がいてそのうちの一人がMaryである、そのような意味に。
逆にカンマが入った場合には「兄弟は一人しかいない、それがMary」を表現する使い方です。
このように表記法や句読記号を使い分けることで英文における表現の幅は一気に広がります。翻訳する文章に微妙なニュアンスなどを付加することもできるように。
特にビジネス関係の文書ではこの知識は役立ちます。句読法のマスターは翻訳者を目指す方には確実にスキルアップへのツールとなります。
これら記号の使い方について知るには英米で出版されている英文スタイルガイドが非常に役立ちます。ただしアメリカとイギリスではpunctuationの定義が異なってきます。翻訳者として書く英文を統一させるためにはどちらか一冊を選んで徹底的に読み込むことがおススメの勉強法です。
翻訳者を目指すのであればとにかく英文を読む
文法を学んだり句読法を勉強するのは大切ですが、翻訳者として仕事のクオリティを上げたいのであれば絶対に欠かせないのが英文を読むことです。
英語の書物を読むことで得られるメリットは数多く存在します。
英語を読むことで得られる単語や表現方法の引き出し
英語がネイティブではない場合、表現方法を自分で編み出すことはできません。あくまで英語を母国語としている人たちの文章の組み立てや表現方法などを学んで自分のものにするのが翻訳者。
そもそも元となる引き出しを持っていなければ英語の文章は綴れません。その引き出しを持つために必要なのが英文を読むことです。この作業工程を繰り返すことでいろいろな表現方法や単語の使い方など、翻訳者としてのインプットを増やすことが可能になります。
また表現方法だけではなく主語の立て方や、結論に至るまでのロジック展開など学べることは数多くあるでしょう。
翻訳者としての勉強のために読むべきものは?
どんなジャンルであっても英文を浴びるほど読むことは結果的なスキルアップにつながります。まずは自分が興味のあるジャンルで、身近にある雑誌や新聞など読み物は何でも構いません。
ただし以下の2点だけには注意することが大切です。
- 1.必ず英語を母国語とする人が書いた文章を読む
- 2.ネットニュースやブログなどは言葉遣いがいい加減な場合もある
1.は当たり前かもしれませんが、イギリスとアメリカでは表現方法なども異なりますのでどちらかに統一された文章だけを読むようにしましょう。
またWeb系の媒体は記事が書かれているソースそのものの信頼性が低かったり、使われている言葉の正確性に欠ける場合が少なくありません。
英語で読書するということは、その国の文化や歴史的な背景も理解することにつながります。
さらにはアメリカ人やイギリス人の一般的な考え方を理解することで、翻訳という文章のアウトプット作業に必ず役立つものになるでしょう。