グローバル化で需要が増え続ける映像翻訳の仕事と高まる求人
映像翻訳と言うと一般的には「劇場やテレビで放送や公開される洋画などの翻訳」、そんなイメージが強いかも知れません。
ところがネット環境の急激な進化により映像情報発信の方法がますます多様化されてきているのが現状です。企業のグローバル化なども追い風となり、映像翻訳者が活躍できる場所は加速度的に増え続けています。
「映像翻訳」の世界には特殊な決まりごとなども多く、このジャンルでの翻訳者を目指すのであれば学んでおきたいルールが存在します。
映像翻訳の仕事とは?
映像翻訳は基本的に海外の映画やドラマなどを日本語に翻訳する仕事です。最近では地上波や衛星放送だけにとどまらず、ネット配信で視聴するユーザーが多くなってきています。
その背景にはNetflixなど世界的な規模の定額制動画配信サービスが急増していることがあります。
またそのフィールドでの映像翻訳者の仕事は、一般的にイメージされる映画やドラマに限らずドキュメンタリーやスポーツなど多岐に渡ります。
言語に関しても英語だけではなく中国語やヨーロッパ言語などの需要も高まっていることもあり、翻訳者の求人需要は一気に高まってきているのが現状です。
映像翻訳を希望する方は多いかもしれませんが、プロの現場に通用するスキルを持った翻訳者は数多くありません。
また他の分野で翻訳のエキスパートとして仕事をされている方でも、映像翻訳者としてすぐに活躍できるわけではありません。
映像翻訳の仕事は字幕、吹き替え、ボイスオーバーの三つにカテゴライズされますが、それぞれ特有のルールが存在します。
字幕の映像翻訳の仕事
字幕は言語の音声を流したままにして画面上に日本語訳を表示させる手法です。字幕を作る映像翻訳の仕事で求められるものは「映像の邪魔にならない」翻訳です。
字幕で表示される文字数が多すぎると視聴者は本来の映像を楽しめなくなってしまいます。ここで翻訳者に必要なスキルは、
- ・視覚的にパッと見て理解できる言葉選び
- ・作品に集中できる言葉選び
の2点。またそれ以外にもルールが存在します。
映像翻訳のプロを目指すなら覚えておきたい字幕の特殊なルール
1.基本的に1秒の台詞に対して日本語での表現は4文字まで、表示される字幕は2行以内というルール
従って字幕の翻訳者は非常に限られた文字数の中で言葉をいかに伝えられるか、そのセンスが求められることになります。
2.句読点は使わない
映像鑑賞を妨げないようにするために文字数を最低限に抑えるためのルールです。また記号なども視聴の邪魔になるのであまり使われることはありません。
文章を区切るには半角、あるいは全角の「スペース」が使用されます。字幕の仕事では、すっきりと読みやすい文章と文字スペースのバランスも含めて表現しなくてはなりません。
吹き替えでの映像翻訳の仕事
外国語のメイン音声の代わりに声優が演じる日本語の台詞に差し替える手法です。
ユーザーは映像と音声でストーリーを理解しますので
- ・耳で聞いていて分かりやすい言葉
- ・登場人物の口の動きにあった言葉
で表現される必要があります。
また声優がアフレコの際に利用する日本語の台本を作成するのも映像翻訳者の仕事となります。吹き替えの翻訳作業で大切なのは、オリジナルの俳優の口の動きに合わせることですので、俳優が話すセリフのテンポを考慮しながらの翻訳作業となります。
実際に英語で1秒に話せる単語数は3つほどです。
例えばそのセリフが’’How are you?’’だった場合、それを4文字以内で置き換えなければなりません。
吹き替えでは視聴者の聞き取りやすさが最優先されますので、翻訳者には出来る限り聞き取りやすい言葉を選ぶセンスも求められます。
また同音異義語が存在する場合(例えば「過程」や「家庭」など)や熟語などは特に誤解を招いてしまいますので、「耳で聞いて瞬間的に判断できる言葉」に言い換える必要があります。
ボイスオーバーでの映像翻訳の仕事
ニュースやドキュメンタリーなどでよく使われる手法です。インタビューやナレーションの部分で使用されますが、外国語の音声は残したまま日本語のセリフを音声でかぶせる手法です。
基本的には解説や一人語りなどの場面が多いこともあり、吹き替えのように口の動きを意識することもなければ、字幕のように限られた文字数での表現を求められることもありません。
訳注がない映像翻訳で求められる翻訳者のスキル
ドラマや映画に限らず、海外のエンターテイメントに触れることで視聴者はいろいろな国の文化や風俗などを知ることができます。
映像翻訳で一番難しいのは、「日本では一般的ではない習慣」などを日本語に置き換え伝えることでしょう。ただ単純にセリフを翻訳しても、そもそも土台となるその国の文化的な背景まで伝えることはできません。
最近では特に英語圏以外の国の作品も多数放送や配信されていることもありますので、この傾向はさらに強くなってきています。
このように映像翻訳は、常に定められた「ルールや制限」の中で、ユーザーに快適な視聴環境を与えなくてはいけない仕事です。
ただ映画が好きで語学ができるから、というモチベーションだけではなかなかクリアできないのがこの映像翻訳の仕事。
それでも世界的な映像翻訳者の需要は今も増え続けています。しっかりと基礎から学ぶことができれば、引く手あまたのブルーオーシャンともいえるのがこの映像翻訳の世界です。