実務翻訳のジャンル「特許翻訳者」へのキャリアパス

特許翻訳は実務翻訳の一分野ですが、これから翻訳者を目指そうとしている方にはあまり耳慣れないジャンルかもしれません。世界的な傾向として知的財産権に関する関心が高まっていて、日本国内でも特許の出願件数は増加傾向を示しています。

特許翻訳とは、その言葉の通り知的財産権に関する様々な書類を翻訳する仕事のことです。日英、英日翻訳の両方で需要があるジャンルですが、その特徴は「原文に忠実な翻訳が求められる」こと。特許翻訳では、意訳すると本来の意味からかけ離れてしまうリスクが存在します。それぞれの国の特許法や商標法などにおいて意訳は、拒絶理由となってしまう可能性があります。

今回はそんな特許翻訳について、次の視点から説明していきましょう。

  • ・具体的な翻訳の内容と求められるスキル
  • ・特許翻訳者になるには

特許翻訳者に求められるスキルと特徴

ライセンス関係の契約書や特許明細書、優先権証明書などの書類では、かなり専門的で技術的な用語が用いられます。このような文章を翻訳する際、翻訳者に求められるものは、

  • ・高度な語学力
  • ・専門家と同じレベルの知識や理解力=特定分野の専門知識
  • ・日本以外の国の特許法にも精通していること
  • ・法律家としての一面を持っていること=法務知識

これらのスキルを身につけていないとできないのが、特許翻訳者の仕事です。

特許翻訳ならではのルールもありますので、具体的に見ていきましょう。

書式や表現ルール

まず特許明細書ですが、独特な表現や文体などがある上に書き方にもルールが存在します。従って、翻訳者は出願形式を熟知した上で翻訳する必要があります。また、特許明細書のフォーマットは国や地域によって異なりますので、翻訳を始める前に特許出願先の国の指定様式を必ず確認しておかなければなりません。

技術やコンセプトに関する知識とリサーチ

特許翻訳で翻訳者が行う主な仕事は発明に関する文書の翻訳です。そこで翻訳者に求められるのは、

  • ・発明コンセプトの理解
  • ・技術の裏づけとなる背景
  • ・アップデートされた技術情報や用語のリサーチ

です。他分野の翻訳でもリサーチ力は翻訳者にとって絶対に必要なファクターですが、特許翻訳も例外ではありません。

原文の読解力

特許翻訳者には原文の読解力が必須のスキルとなります。特に主語と述語の関係を明確に理解して、できる限り原文に即した翻訳を行わなければなりません。

特許関係の書類は、一文が長く読みにくい文章が少なくありません。特許翻訳ではどんなに難解な文章であっても、しっかりと全体を理解して原文を忠実に翻訳するスキルが特に求められます。

特許翻訳者が翻訳する書類

特許翻訳を必要とする代表的な書類には、特許明細書、拒絶理由通知書、意見書、補正書などがあります。

特許明細書

特許明細書は特許権を取得する際に特許庁へ提出する、発明内容を詳細に説明した文章で構成されている書類です。また海外で特許権を取得する際には、その国の言語に翻訳した明細書を提出する必要があります。

拒絶理由通知書・意見書・補正書

拒絶理由通知書が発出されるのは、特許審査の過程で基準を満たしていない理由が見つかった場合です。海外に特許出願をしている場合は、当然その国の言語で書かれた通知書が発出されますので、翻訳者は正確にその内容を翻訳しなければなりません。

修正の上改めて特許出願する際、拒絶理由を解消するための意見書や補正書なども翻訳して提出する必要があります。意見書というのは拒絶理由に対する意見を述べるための文章です。補正書はその言葉の通り記載内容を訂正するための書類です。海外に出願する際はこれらの書類の翻訳も必須となります。

翻訳者の行う仕事

特許の出願書類は願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、そして図面の5項目で構成されています。特許の出願書類は、50ページ以上のボリュームになることが少なくありません。

特許翻訳者になるには

特許翻訳者として活動するために必要な資格は特にありません。もちろんフリーランスで活動することも可能で企業からの受注を請ける活動が中心になります。特許翻訳者として仕事を請けるためには、前述したような知識とスキルは不可欠です。

また特許出願は機械・電気・科学技術の3つに分野に分かれますので、翻訳者はそれぞれのジャンルに対して高校~高専レベルの理解力が必要となります。この部分の知識が不足していると、日本語で書かれた出願書類の内容を正確に理解することができないため、正しく翻訳することができません。

求められる語学力は他分野の翻訳者と同じレベルで構いませんが、これから特許翻訳者を目指す方には以下の2つの方法をおすすめします。

  • ・スクールに通って基本的な知識を身につけた後、「アメリア」等の翻訳者ネットワークに登録し実務を経験する
  • ・独学で勉強してトライアルにチャレンジする

また「知的財産翻訳検定試験」や「技術英語能力検定」などを受けてみるのもいいでしょう。これらの検定試験を受けると、特許翻訳者としての立ち位置を知ることができますし、こうした検定試験のスコアはスキルの証明にもなるので、求人応募の際に少し有利になるかもしれません。

特許翻訳者としてデビューするには高い英語スキルはもちろん必須ですが、それ以上に重要なのは高い日本語能力です。特許翻訳に特化したスキルを身につけるために、特許明細書を数多く読み込み、特許翻訳独特の表現に慣れるようにしましょう。特許明細書は最新技術をきちんと説明するための書類ですので、日頃の勉強の中で特許や新しい技術に関する理解も深めておくことが大切です。

特許翻訳は独特なルールや決まり事が多いジャンルなので、特許翻訳に役立つ英語スキルは意識してアップするようにしましょう。また翻訳者には常に高い専門性が求められますので、特許翻訳者としてデビューした後も、継続して勉強し続けなければならないのがこの分野の特徴と言えるかもしれません。

導入文でも書きましたが、特許翻訳者に求められるのはクリエイティブな翻訳ではなく、原文に忠実な翻訳スキルです。

この分野の翻訳では、電子や機械などの工業分野からバイオテクノロジーまで幅広い分野の技術的で高度な内容の翻訳が求められる上に、独自の文体やルールが存在します。長期的な需要が望めますし、しかも海外向けの日英翻訳の需要が急増している反面、スキルのある特許翻訳者の絶対数が不足しています。

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