翻訳ニーズの高いIT翻訳で必要なスキル

翻訳業界でも注目が高まってきているIT翻訳は、実務翻訳にカテゴライズされます。一般的に「IT」と称されるカテゴリーですが、どのようなものを対象とした翻訳なのか分かりにくい部分があります。

近年、政府がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推奨していることもあり、企業によるITサービスの利用が大きな広がりを見せています。それに伴いIT翻訳の需要も高くなってきています。一般的にIT翻訳はマニュアルなどの技術関係の翻訳をイメージされることが多いのですが、現状はそれだけにとどまらず、マーケティング関連の翻訳やウェブサイトの多言語化など幅広いジャンルに及んでいます。

今回のコラムでは、IT翻訳者を目指すために学んでおきたいポイントについて説明していきましょう。

IT翻訳とは

翻訳業務の大半を占めると言われている実務翻訳(産業翻訳)のうちの1つのジャンルがIT翻訳です。一般的なイメージでは技術系のマニュアルなどを多言語化するものと捉えられがちですが、翻訳者に求められるジャンルはここ数年、大きな広がりを見せています。具体的に見ていきましょう。

IT翻訳の対象となる範囲

Windows等のPCが普及を始めた2000年代初期におけるIT翻訳は、商品やサービスの技術マニュアルなどの翻訳業務がほとんどでした。しかしグローバル規模でネットが普及し、多くの企業がITを活用したウェブサイトやデジタルカタログなどマーケティング分野においてIT翻訳を行うようになり、その需要が一気に広まってきました。

この背景には世界的なDX化があります。世界中の産業分野におけるビジネス展開でITは不可欠なものとなってきました。そのためIT翻訳者に求められるスキルは多岐にわたり、マーケティングの分野にまで広がっています。そのような状況を受け、IT翻訳の分野では幅広いジャンルに対応できる翻訳者の存在が欠かせなくなってきています。

IT翻訳者が行っているのは以下のような翻訳業務です。

  • ・技術マニュアルなどの翻訳
  • ・企業WebサイトなどのUI翻訳(主にシステム画面などの翻訳)
  • ・企業公式サイトのプレスリリース翻訳
  • ・ソフトウェアなどのローカライズ
  • ・設計書や仕様書などの翻訳
  • ・Webサイトの翻訳
  • ・デジタルカタログの翻訳
  • ・商品紹介やパンフレット、ソフトウェア取扱説明書の翻訳

上記の翻訳にはSNSなどのコンテンツも含まれます。

高度な専門性が求められるIT翻訳

実務翻訳の一つの分野であるIT翻訳は、翻訳者に高い専門性と正確性を求めます。翻訳の些細なミスが企業のビジネス損失に直結してしまうだけでなく、企業イメージにも影響してしまう可能性があります。

まだ世に出ていない新しい分野のコンテンツを扱うこともありますので、翻訳者は「最新の技術情報」を理解できる高いスキルを持っていなければなりません。IT翻訳でも特に需要が多い技術系マニュアルの翻訳では、AI翻訳が積極的に導入されていますが、この分野は日々技術革新が行われています。しかし、テクノロジーの進歩とAI翻訳の発展(学習)速度が異なるため、情報がアップデートされるまでにタイムロスが生じてしまいます。

このような背景から、AI翻訳では誤訳というリスクを常時抱えています。そのリスクを避けるために、専門知識とリサーチ力を持ったIT翻訳者を熱望する声が日増しに高くなっています。

IT翻訳で求められるスキル「ローカライズとトランスクリエーション」

高い専門性を必要とするこの分野で、翻訳者はどのようなスキルを身につけておかなければならないのでしょうか?

IT翻訳者は、一般的な翻訳スキル以外にマーケティング翻訳に関する知識も必要です。世界の多くの企業がITを活用したマーケティングを行っている状況下で翻訳者を目指すのであれば ぜひ学んでおきたいのが以下の2つのスキルです。

1.ローカライズスキル

ウェブサイトを訪問するユーザーが住んでいる国や地域の文化や社会的背景に配慮した翻訳ができるスキル

2.トランスクリエーションのスキル

トランスクリエーション(transcreation)とは、「translation」と「creation」を組み合わせた主にマーケティング翻訳で使われる造語です。原文に忠実な一般的な翻訳とは違い、原文の持つ意味を発展的に捉え原文以上の訴求力を持たせる翻訳を行う、コピーライティングに近いスキルが求められます。

特にトランスクリエーションでは、高いレベルのスキルが必要です。

・ユーザーに良い印象を残す翻訳

トランスクリエーションをしっかりと行うことができれば、企業サイトを訪れるユーザーにコンテンツや商品に対する印象を強く残すことができます。言葉の置き換えだけではなく「ユーザーに対する訴求力」も求められますので、単なる翻訳者ではなくクリエイターとしての能力も必要です。

ウェブサイトの場合、ユーザーがどのくらいの時間そのページに滞在していたかといったデータを見ることができますので、離脱率の少ない(最後まで読んでもらえる)文章を翻訳者は作成しなければなりません。

・企業の売上を伸ばす翻訳

企業サイトにおけるユーザーの滞在率が上がれば、結果として売上に繋がります。多くの国でサービスや商品などを販促展開していくための大きなキーポイントとなるのがトランスクリエーションです。

・言語の違いによる違和感を感じさせない翻訳

企業サイトを訪れたユーザーが、言語が違うことによって違和感を感じてしまわないように翻訳することも大切です。そのためには、サイトが閲覧される国の特徴や文化などをしっかりと理解した上で翻訳する必要があります。

トランスクリエーションの実例をいくつか分かりやすく紹介しましょう。IT翻訳分野ではではありませんが、例えば映画の字幕やタイトルなどは、短くかつキャッチーなワードチョイスが求められます。そこにはトランスクリエーションの技術がふんだんに詰め込んであります。

また企業サイトなどにある「会社のスローガン」などは、国が違っても親しまれるように分かりやすく統一感を持たせて必要があります。企業の顔とも言えるので、翻訳者のトランスクリエーションスキルが最も試される部分だと言えます。

このように翻訳者であると同時にクリエイターとしてのスキルも求められるのが、トランスクリエーションです。実務翻訳の中の一つの分野であるIT翻訳ですが、今後も様々な方面に広がっていくものと予想されます。

これから翻訳者を目指すのであれば、最短距離でデビューを目指すようにしましょう。そのためには、

  • ・専門スクールに通って基本的な知識を身につけた後、「アメリア」等の翻訳者ネットワークに登録し実務を経験する
  • ・独学で勉強してトライアルにチャレンジする

といったいくつか方法があります。

今回のコラムを参考にIT翻訳を専門分野とする翻訳者を目指してみてはいかがでしょう。

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