フリーランスの出版翻訳者を目指すための勉強法
出版翻訳の分野は独学でフリーランスとして翻訳者デビューを目指す方には人気の高いジャンルですが、翻訳実績の少ない方にとってはハードルが高いと言われています。その背景には翻訳書の出版数の減少傾向もあります。また新人の翻訳者の場合、出版社や翻訳会社とのコネクションがないケースが多く、それも一つの要因となっています。
読書が好きで出版翻訳の分野で活躍すべく勉強を続けている方であればこのような状況はすでにご存知かもしれません。ハードルは高くなりますが、たとえ新人でも出版翻訳者としてデビューするチャンスは確実にあります。今回のコラムではそんな出版翻訳について説明していきましょう。
出版翻訳とは
出版翻訳とは、海外の著作物を日本語に翻訳する仕事です。出版翻訳者の扱うジャンルは大きく分けて2つのジャンルがあります。
出版翻訳のジャンル
出版翻訳のジャンルはフィクションとノンフィクションの2つにカテゴライズされ、対象となる読者やその内容によってより細かく分類されます。
フィクション
ミステリー、文芸やロマンスなどの小説で出版翻訳の中でも特に人気の高いジャンルで以下のように分類されます。
- ・ミステリー: 根強いファンが多く人気の高いジャンル。
- ・ロマンス:出版翻訳の中でも需要が安定しているジャンルで出版社の多くがレーベルを持っています。
- ・絵本:小説などと比較してロングセラーとしての人気が高いジャンル。
- ・ヤングアダルト:その時の流行などを反映したものが多いこのジャンルは海外では大きなマーケットと需要が存在しています。
ノンフィクション
ビジネスや実用書が中心となりますが比較的ベストセラーが生まれやすいジャンルだと言われています。また対象となるジャンルが多岐にわたることが特徴的で、
- ・ビジネスや自己啓発書:日本における出版数が数多くベストセラーが生まれやすい
- ・ポピュラーサイエンスやルポ:常に一定のニーズが存在するため需要が安定している
- ・ファッション
- ・エンターテイメント
- ・ニュース関連
などのジャンルがあります。
出版翻訳者に求められるスキル
出版翻訳者として活躍するためには高い語学力だけではなく多くのスキルが求められるのが特徴的です。
・原文を読み取る力
原文に書かれているニュアンスや内容などを正しく理解するスキル
・文章の構成力
原文から翻訳した文章をユーザーにわかりやすく伝えるためのスキル
・日本語の表現力
翻訳者のスキルが特に試される部分で同じ文章でも対象となる読者層が大人と子供では使用する言葉や表現を変える必要があります。またフィクションの場合、正しい翻訳をするだけではなく読者がしっかり感情移入できるような表現や内容が求められるのが特徴です。
独学で出版翻訳者を目指すには
翻訳の勉強には様々な方法がありますので独学でフリーランスとしての出版翻訳者を目指すために鍛えておきたいスキルについて説明していきましょう。
スキルアップのために量をこなす
これから翻訳者を目指すのであれば正確に訳すことも大切ですが、まずはとにかくたくさん訳すという訓練が役立つことでしょう。もちろん翻訳においてクオリティはとても大切ですが、毎日できる限りの量を訳すというトレーニングは翻訳者としての将来に役立つものとなります。
翻訳スクールなどで学ぶ場合、通常の課題はそれほど多くありません。そこで求められるものは細部まで質の高い翻訳を行うことです。この勉強法はもちろんスキルアップに役立つことですが、プロとして仕事をするためには時には締め切りまでに大量の翻訳をこなすケースも少なくありません。
長編小説などを訳す場合には、翻訳者には相当な体力が求められます。そのためには常日頃から量をこなして翻訳する勉強も続けておくことが役立つようになるでしょう。
翻訳リズムを身につける
英語で書かれた文章の場合基本的に文章の語尾は単調となる傾向があります。例えば現在形なら現在形、過去形なら過去形での文章が続くことは珍しくありません。それを日本語に訳す場合、過去形で書かれているからと言って全ての語尾を「~した」と翻訳してしまうと、同じ語尾の繰り返しが連続してしまい読者にとっては読みにくいリズム感のない文章に仕上がってしまいます。
したがって英語から日本語に翻訳する場合には毎回語尾を調整する必要が出てきます。もちろんこれは翻訳者のさじ加減ではありますが、少なくとも読者がスムーズに読み進められないような語尾の繰り返しやリズムの悪い文章にならないように常にトレーニングしておくことが大切です。日本語の小説を読むときなど普段から語尾の使い方などに注目して勉強するのもスキルアップにつながるでしょう。
翻訳者に求められる日本語の語彙力
小説の翻訳では分野によって色々な日本語文体を駆使することが翻訳者には求められます。自分が得意とする分野の仕事だけを引き受けるのは現実的ではありませんので、いろんな分野の仕事をこなすことは重要です。
また小説の中に登場する会話文章などであれば登場する人物ごとに口頭表現を書いたりする必要もありますので、そこで求められるものは日本語の語彙力となります。そのためには日常から語彙力がアップできるような勉強法を心がけるようにしましょう。例えば類語辞典を積極的に活用する、普段使わない語彙を調べて学ぶ、翻訳に使えそうな表現を常にリストアップするなど地道に語彙力をアップさせる勉強を続けることが大切です。
例えば英語では一人称単数主格の表現は一つしかありませんが、それを日本語に訳す場合には
によって数多くの選択肢が存在します。翻訳者としての語彙力のスキルアップには漫画やアニメなどが参考になります。とっつきやすく面白いものですのでそこで使われている表現など参考になるものは数多くあるはずです。
日本語の幅広い表現力を身につけて、様々な文体を駆使できるように意識することが出版翻訳者としてのスキルアップにつながるでしょう。
日本語の感性を磨き続ける
翻訳者が持って生まれた感受性やクリエイティビティなどが影響してきますので「翻訳のセンスを磨く」というのはそもそも難しい課題かもしれません。それでもこの部分に関するトレーニングは可能でしょう。
そのためにできることは名文を読んで、そこで使われている言い回しの表現などを日々の勉強でストックしておくことです。とにかく読書を続けて翻訳者としての感性を身につけるために努力しましょう。「この分野なら誰にも負けない」そんなストロングポイントを持つことが翻訳者としてのスキルアップにつながるはずです。
出版翻訳には高いスキルが求められます。これからフリーランスとして翻訳者デビューを目指すのであれば日々の勉強は欠かせないものになります。
ゴールを目指すには
- ・専門スクールに通って基本的な知識を身につけながら、「アメリア」等の翻訳者ネットワークに登録し実務を経験する
- ・独学で勉強してトライアルにチャレンジする
といったいくつかの方法がありますので、これらを積極的に活用し翻訳者デビューを目指しましょう。