英語翻訳者として金融翻訳を専門分野に選ぶための知識
翻訳の専門分野の中でも特に高い専門性や知識が求められるジャンルのひとつに金融翻訳があります。金融翻訳者は、専門的な経済用語や法律用語などを的確に理解していなければなりません。また金融翻訳は、専門知識以外にも高い言語能力も求められます。
今回のコラムでは、フリーランスや副業として金融翻訳者デビューを目指している方のために、金融翻訳を専門分野に選ぶメリットとデメリット、金融翻訳者が身につけておかなければならないスキル、及びそのスキルを習得するための効率的な勉強法などを分かりやすく説明していきます。
金融翻訳とは
金融翻訳とは、 主に金融関連の文書や情報を他の言語に翻訳する仕事のことです。具体的には銀行や証券会社、保険会社などの金融機関が発行する資料や契約書、経済レポートなどを別の言語に置き換えます。
金融翻訳には、専門用語が多いだけでなく 法律文書なども含んでいて、間違った翻訳をすると大きな損失を招く可能性があるので、正確性が求められます。
金融翻訳を専門分野とするメリット・デメリット
金融翻訳を専門分野として選択するメリットは数多くあります。そのひとつが、専門知識が身につくことです。金融翻訳では専門的な翻訳が求められるため、実務をこなすにつれ多くの専門知識を身につけることができます。
この専門知識によって、契約書や財務報告書などの文章を的確に翻訳できるというスキルアップが可能になります。
その上、マーケットの動向や法規制の変更などにも迅速に対応できるスキルも身につきますので、クライアントに対する翻訳者としての価値と信頼性が高まるというメリットも生まれます。
継続的な学習と情報収集を必要とするジャンルですので、金融翻訳で得られた経験値は、将来他のジャンルの翻訳を手掛ける際の大きな助けになるでしょう。
デメリットもあります。金融翻訳者は最新の情報を収集して迅速に翻訳に反映させることが求められます。金融業界における市場や法律の変化は早く、翻訳者は情報を常にアップデートしなければなりません。この一連のフローが翻訳の効率を下げる場合があります。
またこのジャンルは、他の分野よりも高い専門性が求められますので、一般の翻訳者よりも高度なスキルや知識が必要です。
金融翻訳者に求められる特徴・向いている人
金融翻訳の分野では、金融に関する専門用語や法律をしっかりと理解し、正確で適切な翻訳を提供できる人が求められます。
金融翻訳者に向いている人
・専門的な金融知識を有している人
金融翻訳では証券取引、銀行業務、投資などの分野に精通していて、翻訳する文章の文脈を正確に理解した上で翻訳する能力が求められます。従って、金融業界に精通し専門的な知識をすでに身につけている人がこの分野の翻訳に向いています。
・正確性と柔軟性を兼ね備えた翻訳ができる人
金融関係の文書においては正確性が求められるため、誤りに気づける慎重で繊細な人が向いています。また新たな言葉が生まれたり、法律が頻繁に改正されたりするこの分野の翻訳者には柔軟性も必要です。
・クライアントとのコミュニケーションが得意な人
金融翻訳ではスピード感のある効率的な翻訳が求められますので、クライアントとの綿密なコミュニケーションは欠かせません。比較的短い納期の翻訳依頼などの場合、クライアントとの綿密なやり取りがスムーズな納品につながります。小さな問題でもリアルタイムにクライアントと共有できる翻訳者である必要があります。
・プロ意識が高い人
金融翻訳では機密情報の適切な取り扱いが求められます。クライアントから信頼を得るためには機密保持は特に重要ですので、翻訳者には機密保持を念頭に置いた高いプロ意識と倫理観を持って仕事に臨む気構えが必要です。
金融マーケットは日々変動しており法令が頻繁に変更されますので、迅速に対応できる高いプロ意識を持っていないと金融翻訳者は務まりません。
金融翻訳を専門分野とするための勉強法
金融翻訳者としてデビューを目指すための具体的な勉強法について見ていきましょう。
・金融関連の書籍や記事を積極的に読む
金融用語や金融業界に関する概念を理解するためには、専門書を読むことやWeb上の最新情報をインプットすることは大切です。海外の金融系のサイトなどを日々チェックするようにすれば、専門用語を学べますし、金融関連文書の文脈を理解する勉強にもなります。
また日々変化する金融業界に触れることで、新しく生まれる略語なども学ぶことができるため、こうした日々学んだことは翻訳にも生かすことができそうです。
・金融学や経済学に関する基本的な知識を勉強する
金融関連の知識は、様々な方法で身につけることが可能です。大学の授業やオンラインの教育プラットフォームなどを利用して、経済学や国際金融などを学ぶことをおすすめします。
・翻訳技術の向上にも注力する
金融関連の知識を身につけるだけでなく、翻訳業務の基本である翻訳技術の向上にも努めなければなりません。CATツールなどをしっかり学んで、効率的で正確な翻訳スキルを磨きましょう。
金融翻訳者の需要と将来性
金融翻訳者の需要は今後も高くなると考えられます。ビジネス環境がますますグローバル化する中で、企業や金融機関は高度な言語スキルを必要としています。特に専門用語や法律用語が多い金融関連の契約書やレポートには、プロの手による正確な翻訳が不可欠です。
また、新興市場の拡大や活発化する国際的な投資活動の中では、異なる言語による情報へのアクセスが必要です。
技術の進化により機械翻訳の利用が増えてきていますが、金融翻訳においては金融文書の専門性や厳密な表現の必要性から、機械翻訳ではない人間の翻訳者が行う翻訳の需要はますます増えています。クライアントが求めているのは、高品質で信頼性の高い翻訳ですので、どんなに機械翻訳が進化したとしても、金融翻訳者の需要がなくなることはないでしょう。
将来的な見通しとしても、国際的なビジネスの拡大や金融マーケットの変動が続く限り、金融翻訳者には安定した需要が見込まれます。
金融翻訳者は、将来にわたる需要に応えるために、常に金融マーケットの変化に敏感に反応して専門知識を蓄積していかなければなりません。
まとめ 金融翻訳者を目指すために日々勉強すべきこと
今回のコラムでは金融翻訳に関する情報をお伝えしましたが、金融翻訳者を目指すのであれば、日々以下の点に注意しながら勉強することをおすすめします。
・金融マーケットの基本原則を理解する
各種の金融商品や取引手法についての知識を深化させましょう。また財務指標や経済指標の分析方法なども習得し、マーケットの動向を把握する力を養うことも大切です。
・金融業界のトレンドやニュースを追いかける
金融翻訳者として英語スキルを向上させるためには、金融用語や専門的な表現を積極的に学びましょう。経済ニュースや金融関連文献などの翻訳を読み、そこで使用される専門用語の正確な理解と適切な表現を学ぶのも良いかもしれません。
翻訳業界の中でも特に高い専門性を問われるのが金融翻訳です。これから翻訳者デビューを目指す方には高いハードルかもしれません。ただ今後も高い需要が期待できる分野ですから、翻訳者として何を専門分野にするか迷っているのであれば、将来性が期待できる金融翻訳を学んでみてはいかがでしょうか。