メディカル翻訳者に求められるスキルと他翻訳分野との違い

翻訳者を目指す方の中にはメディカル分野に興味があるという方だけでなく、文系だけどメディカル翻訳者になりたいという方もいます。

では、メディカル翻訳者になるにはどんなスキルや知識が必要なのでしょうか?

今回のコラムではメディカル翻訳者に求められるスキル、翻訳対象となる文書、他の翻訳分野との違いなどについてまとめました。メディカル翻訳に興味がある方はぜひ参考にしてください。

メディカル翻訳とは

メディカル翻訳は、医学や医療関連の文書を異なる言語に翻訳するプロセスです。メディカル翻訳には専門的な知識が要求され、誤訳が人の生死に直結することもあります。メディカル翻訳者には、医学的な専門用語や対象国間の文化的な違いを正確に理解し、適切な文脈で翻訳することが求められます。

メディカル翻訳の対象となる文書

メディカル翻訳の対象となる文書はさまざまですが、主に次のようなものがあります。

1.医療記録や診断書:
医師や看護師が患者の病歴、診断結果、治療内容などを記録した文書。
2.医学論文や研究論文:
医学、医療、薬学などの分野に関する研究成果や学術的な議論を含む文書。
3.医薬品の説明書や医療機器の添付文書:
医薬品や医療機器の使用方法、副作用、注意事項などを記載した文書。
4.医療機関の規則や手順書:
医療施設内の規則や運営手順・方針などが記載された文書。
5.患者教育資料:
疾患や治療に関する情報を患者やその家族に提供するための資料。

メディカル翻訳と他の翻訳分野の違い

メディカル翻訳と他の翻訳分野の違いはいくつかあります。一番の違いは、メディカル翻訳は医学的知識や専門用語に対する十分な理解が必要ということで、医学用語や解剖学の用語、医薬品の名称など、専門的な知識が必要です。他の翻訳分野でも専門用語をよく理解しておかなければなりませんが、メディカル翻訳ではそれ以上に高い専門性が求められます。

第二に、メディカル翻訳は命にかかわる重要な情報を扱うことがあります。誤った翻訳や誤解を生むような翻訳は、患者の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、メディカル翻訳者は訳文の正確性と精度を最優先に考えなければなりません。他の翻訳分野でも正確性は重要ですが、人の命にかかわるメディカル翻訳ではその重要性がさらに際立ちます。

第三に、メディカル翻訳は法的な規制や規定にも厳格に従わなければなりません。特に医薬品や医療機器の翻訳では、国際的な規制機関が示すガイドラインに従う必要があります。そのため、メディカル翻訳者はこれらの規制やガイドラインについての知識を持っている必要があります。

最後に、メディカル翻訳は患者と医療施設や医療専門家とのコミュニケーションを円滑にする役割も担っているため、言葉の選び方や表現の使い方には特に配慮が必要です。他の翻訳分野でもコミュニケーションの円滑化は重要ですが、メディカル翻訳では患者の理解を促し、医療プロセスをサポートする役割が重視されます。

メディカル翻訳の需要と将来性

メディカル翻訳の需要は、世界中で急速に拡大していてその理由はいくつかあります。

一つ目の理由は、グローバル化が進んだことによりメディカル関連の情報やサービスへのアクセスが増えていることです。人々は自国外でも治療を受けることがありますが、その際、言語が障壁になり適切な治療を受けられないことがあるため、こうした事態を受け、メディカル翻訳の需要は高まっています。

二つ目の理由は、多言語コミュニティの存在の増加です。特に移民や難民の増加により、さまざまな言語を話す患者が増えていて、これらの患者が適切な医療サービスを受けられるようにするためには、メディカル情報や医師の話を正確に伝える翻訳が必要です。

三つ目の理由は、医療技術の進歩により、世界中で新しい医療や治療法が開発されていることです。これらの情報は、世界各国で共有できるよう努める必要があり、例えば新薬の試験結果や治療ガイドラインは、国際的な医療コミュニティで利用できるよう速やかに翻訳する必要があります。

さらに、法的要件も医療翻訳の需要を後押ししています。特に、患者の権利や個人情報保護に関する法律は厳格化しており、患者と医療機関との間のコミュニケーションは正確かつ適切に行われることが求められます。

以上のような理由から、メディカル翻訳の需要は今後もますます増加すると予想され、こうした動きに伴い高品質で信頼性の高いメディカル翻訳サービスの需要も高まっています。

メディカル翻訳者に求められるスキルと専門知識

メディカル翻訳者に求められるスキルと専門知識は多岐にわたります。そのうちの主なものを以下で紹介します。

1.言語能力:
高度な言語能力は必須です。母国語と同等の言語能力が求められます。また、医学用語や医療文書の専門用語を理解し、正確に翻訳できる能力も必要です。
2.専門知識:
医学や医療に関する専門知識は不可欠です。解剖学、生理学、薬理学、疾患や治療法に関する知識など、医療関係全般にわたる知識の習得が求められます。
3.文化的理解(ローカライズスキル):
医療は文化の違いに影響を受けることがあります。言語や文化に関する深い理解と、それに基づく正確な翻訳が求められます。
4.精度と正確性:
医療文書の翻訳においては、翻訳の精度と正確性が極めて重要です。誤った翻訳をすると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、極めて慎重に翻訳することが求められます。
5.機密性とプライバシーの尊重:
医療情報は機密性が非常に高いため、機密情報の取り扱いに関する法律や規制を遵守し、プライバシーを尊重することが求められます。
6.時間管理能力:
医療文書の翻訳はしばしば緊急性を必要としますので、厳しい締め切りを守れるだけの時間管理能力が求められます。
7.ソフトウェア技術:
翻訳ツールやCATツール(Computer-Assisted Translation tools)の使用経験があると有利です。これらのツールを使いこなせれば、効率的に作業することができます。
9.継続的な学習と更新:
医療の進歩は日々進んでおり、新しい用語や技術が日々登場します。翻訳者には継続的な学習と自己更新が求められます。

これらのスキルと専門知識を持つメディカル翻訳者は、医療関連の情報を効果的に伝える高品質な翻訳を提供できます。

メディカル翻訳に向いている人

メディカル翻訳に向いている人には、以下のような特徴があります。

医学的知識に対する興味と理解の深さを備えています。医療用語や解剖学、疾患、治療法に関する知識があると、正確に翻訳することができます。また、専門用語や医学的表現を適切に使いこなせる言語能力も必要です。

独学でメディカル翻訳者を目指すために不可欠なもの

独学でメディカル翻訳者を目指すためには、いくつかの不可欠な要素があります。まず、基礎的な医学知識は欠かせません。解剖学、病態生理学、薬理学など、医学の基本的な概念を理解する必要があります。医学は専門用語が多く、それらの正確に翻訳できるスキルが求められるため、医学辞典や医学専門書、オンラインリソースなどを活用して、医学用語に精通することが大事です。

次に重要なのが言語能力です。翻訳者は元の文書を正確に理解し、的確に目的言語に翻訳する必要があります。そのためには、ソース言語とターゲット言語の両方に堪能でなければなりません。

最後に、翻訳技術の習得も重要です。翻訳ソフトウェアの使用方法や翻訳の基本原則を理解し、翻訳スキルを常に磨いておかなければなりません。継続的な学習と実践を通じてこれらの要素を身につけることが、独学でメディカル翻訳者を目指す上で不可欠です。

メディカル翻訳まとめ

メディカル翻訳は他分野に比べて難易度が高いジャンルです。医療に関する専門知識が要求されますし、命にかかわる重大な文書を扱うため誤訳が許されません。メディカル翻訳を目指すのであれば、この道でやっていくという覚悟が必要です。

反面、メディカル翻訳は需要が安定しており将来性の高い分野です。社会性もあるため、やりがいを感じるでしょう。医薬や医療機器などの分野に興味があり、翻訳者としての力量にも自信がある方は、メディカル翻訳者を目指してみてはいかがでしょうか。

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