出版企画と出版社の出会いの場 出版持込ステーション

※このコラムは情報誌『Amelia』2005年4月号の転載です。

出版持込の秘訣:出版企画の持込大作戦!

・・・持ち込み成功の秘訣を探る・・・

 出版翻訳の分野でデビューを目指すなら、原書を読み、訳文を作成するといった翻訳修業も大切ですが、同時に自分自身をアピールすることも重要です。その方法のひとつが出版企画の持ち込み。いずれはこんな本を訳したい、という優れた原書を持ち込めば、編集者に自分の見識眼と好きなジャンルをアピールできるのです。

持ち込み奨励

 書籍翻訳者を目指すなら、自ら翻訳したい原書を出版社に持ち込むのもひとつの方法です。もちろん、持ち込んだ企画が採用され、本が出版される確率は決して高くはありません。でも、そもそも出版社では数多くの原書が検討されており、その結果実際に翻訳出版されるのはそのなかのごく一部。ですから、一度の持ち込みで採用される確率が低いのも仕方がないのです。とはいえ、多くの編集者は企画の持ち込みを歓迎し、プロの目できちんと検討をしています。そして、そこから生まれた書籍も確かにあるのです。

持ち込みのメリット

 企画を持ち込むことには多くのメリットがあります。まず第一に、企画書を書くという作業は、その本の内容だけでなく、著者の経歴、原書の評価、日本でのそのジャンルの傾向など、さまざまな情報を集めることが不可欠であり、本を深く知ることになります。翻訳者にとって、本の善し悪しを見抜く力はとても大切。企画書を作成することで見識眼を磨きましょう。さらに、企画書を通して自分の本を見る目や翻訳者になりたいという熱意を編集者に伝えることができます。実はこれが何よりも重要。編集者は翻訳者に一緒に仕事をするパートナーとしての“信頼”を求めています。企画書を持ち込み、その本に関する情報を熱く語ることで、編集者との間に信頼関係が生まれるのです。

編集者に聞きました

出版企画の持ち込みのノウハウ教えます!

「翻訳者になる第一歩として何かいい本を探して持ち込みたいが、どうやって企画書を書けばいいの?」「訳したい本はあるけれど、どこに、どうやって持ち込めばいいの?」そんなみなさんの持ち込みに関する疑問に、ズバリお答えします!

Q企画書には何を書けばいいの?

 はじめに、企画書は何のための書類かを考えてください。企画書は、「その本が出版するに値するかどうか(≒売れるかどうか)、編集者が検討するための資料」です。従って次の2つの要素が必要になってきます。

 まず1つめは、その本に何が書かれているか。フィクションならば「登場人物」あらすじ」、ノンフィクションなら「目次」「章ごとの要約」などを簡潔にまとめます。

企画書に盛り込むべき基本項目

  • ・原書のタイトル
  • ・日本語のタイトル
  • ・著書名
  • ・総ページ数
  • ・ISBN
  • ・目次、登場人物など
  • ・あらすじ
  • ・作者について
  • ・書評など
  • ・分析、所感
  • ・試訳

 そしてもう1つは、その本に対する分析です。なぜこの本を出版したいと思うのか、この本が売れると思える根拠は何か、そうしたことを客観的に分析し、所感を述べることで、編集者の心を動かさなければならないのです。

 実は、この“客観的”であることが非常に重要です。自分が「いい本だ」と思って持ち込むわけですが、中には思い入れが強すぎてかなり主観的になり、「とにかく良い本だから出版してください」と熱く語りかけるばかりの企画書があるそうです。持ち込む側の熱意を伝えることもある程度は必要ですが、編集者が最も欲しているのは正しく判断するためのデータです。ただ褒めるだけではなく、ときにはネガティブな要素を正直に書き添えることも必要です。その分析が的確で「売れるかもしれない」「この本を作ってみたい」と編集者に思わせることができる企画書こそが、良い企画書なのです。

 ほかにも、右上にあげたような基本項目を書き添えましょう。「日本語のタイトル」は直訳ではなく、本にしたときにどのようなタイトルにしたら日本の読者に訴えかけるかを考えて、自分なりに付けてみるとよいでしょう。「総ページ数」は翻訳本となって出来上がったときのボリュームを知る上で、編集者にとっては重要な情報です。必ず入れましょう。「ISBN」(International Standard Book Numbers)とは、本を識別する番号のことで、版権を問い合わせる場合などに必要となります。洋書、和書ともに、どんな本でも必ず裏表紙などに書かれていますので、これも企画書に入れてください。

 なお、企画書の長さに決まりはありませんが、あまりに長いとこれを読む編集者も大変です。だらだらと長くなりすぎず、簡潔にまとめるよう心掛けてください。企画書全体として、A4用紙5 ~ 8枚程度を目指すとよいでしょう。

日本での出版状況を確認する

 持ち込みを行う際、とても重要なことのひとつに、日本での出版状況を確認するという作業があります。持ち込みたい書籍が既に日本で翻訳出版済みであれば、いくら良い企画書を作成しても、まったくの無駄になってしまうからです。

 持ち込みたい原書が見つかったら、その著者名や推定される日本語のタイトルから、日本で既に翻訳出版されていないかどうかを確認してください。インターネットを使って国会図書館やアマゾン・ジャパンなどオンライン書店のホームページで探してみるといいでしょう。

 ただし、まだ出版はされていなくても、既にどこかの出版社がその本の版権を取得していて翻訳作業が進行中であることも考えられます。残念ながら、今のところそれを簡単に調べる方法はありません。通常、版権の情報は版権エージェントが持っていますが、個々の問い合わせに応じられるシステムがないのが現状です。その点はあらかじめ覚悟しておく必要があります。

Q企画書はどこに送ればいいの?

 いくら良い企画書が出来上がっても、それをちゃんと検討してもらえる編集者の元に届けなければ、企画書は意味をなしません。中には「とても興味深い本だが、うちの出版社ではこれまでにこのジャンルは扱ったことがないから難しい」という理由で断ることもあるそうです。つまり、企画に適した出版社を探して持ち込むことが大切なのです。

 そのため、持ち込みたい本が決まったら、企画書を作成すると同時に、どの出版社に持ち込むべきかを検討してください。出版社のホームページや、出版目録などを見て、そのジャンルに強い出版社を選ぶとよいでしょう。

 また、これまでに訳書を出したことのない新人が持ち込む場合、一般に大手出版社よりも中小の出版社のほうが検討してくれる確率が高いといえます。それは、大手出版社のほうが採算ラインとなる初版部数が多く、「確実に売れる本」(例えば、有名著者の作品など)を求めているからです。

 比較的規模が小さく、なおかつ持ち込もうとしているジャンルに力を入れている出版社であれば、企画に興味を示してくれる可能性も高まりますし、たとえその企画自体は採用にならなかったとしても、「そのジャンルに詳しいなら、こんな本を探しているので、また企画をお願いします」と次に繋がることもあります。

 逆に、見当違いの出版社に持ち込むと「どうしてうちに持ってきたの?本についてあまり詳しくないのでは……」と思われてしまうこともあるので注意しましょう。

Q持ち込んだ企画書は必ず目を通してもらえる?

 基本的に、出版社の編集者は企画の持ち込みを歓迎しています。ただし、「優秀な編集者が揃っているから外部の持ち込み企画を採用する必要はない」と断る出版社も少数ですがあるようです。そうした事情をあらかじめ確認する意味でも、まずは電話かメールで連絡を取り、企画を持ち込みたいことを告げて、誰宛に送ればよいかを確認した方がいいでしょう。

 そのようなコンタクトなしに、いきなり「翻訳書編集部御中」と郵送されてくる企画書もあるようですが、大手出版社の場合は編集者の手に届くまでにどこかに埋もれてしまう可能性が高いですし、たとえ編集者に読んでもらえたとしても、あまり印象はよくありません。

 「企画の内容さえよければどんな方法でもいいだろう」ではなく、社会人としてのビジネスマナーをきちんとわきまえて行動することが大切です。編集者はその点も見ています。

Q最近出版されたばかりの新しい本のほうがいいの?

 必ずしも出版されたばかりの新しい本である必要はありません。むしろ、新しい本の情報は、ブックフェアや版権エージェントから、いち早く出版社に届いているので、翻訳出版するかどうか既に検討済みという場合が多いでしょう。それよりも、少し前に出版された本の中から、まだ翻訳されていない良書を見つけ出して持ち込む方が成功する確率が高いといえます。

 世界中で年間80万冊以上の本が出版されていますが、そのうち日本語に翻訳出版されている本は年間5400冊ほど。良い本だけれども、誰にも見出されずに埋もれている本は、まだまだたくさんあるはずです。

 また、本の売れゆきというのは、社会現象とリンクしています。つまり、いくら良い本でも、時代に合っていなければ出版されないのです。原書が出版された頃は日本の市場に合わないと思われた本でも、数年経った今なら受け入れられるというものもあるはずです。

 毎月、どんどん新しい書籍が発行されていますので、編集者は古い本までチェックをしている時間はありません。むしろそこが狙い目です。

Q英語以外の言語の本でもかまわない?

 もちろんかまいません。というよりも、編集者は英語以外の言語の情報も歓迎しています。

 編集者は「英語なら自分でも読めるが、その他の言語となるとさっぱりわからない」という人がほとんどです。また、版権エージェントから紹介される本も、英米の本が圧倒的に多く、それ以外の言語の情報はあまり流れていないのが現状です。

 かといって英語圏の書籍でないと翻訳出版は難しい、ということはまったくありません。元の言語が何であるかはいっさい関係なく、「本の内容」と「日本の読者に受け入れられるかどうか」ということが重要なのです。

 また、英語以外の言語の場合は、翻訳者の数も限られますので、持ち込んだ書籍の翻訳出版が決まった場合、翻訳者あるいは下訳者として採用されるケースは英語の場合より高いようです。

 英語以外の言語で文芸翻訳者を目指す方の場合、残念ながら翻訳の需要そのものは英語よりも低いのが現状です。しかしその反面、持ち込みが成功する確率は英語と比べて決して低くはありません。そうした方こそ、自分でどんどん持ち込みをして、みずからチャンスを作ることをおすすめします。