ご利用企業インタビュー

株式会社アークコミュニケーションズ

ユーザーニーズに合った翻訳会社を作りたい

「翻訳を依頼する顧客の立場に立ったサービスを追求しよう」。今から13年前、株式会社アークコミュニケーションズの立ち上げ時(当時は別会社の一事業部、2005年に分社化して独立)、社長の大里真理子氏の念頭にはこの思いがありました。というのも、自身が仕事上、翻訳を依頼する立場にあったとき、ユーザーとしていくつか不満があったのです。

例えば、そのうちのひとつが翻訳料金の計算のしかたです。
10年あまり前に大里氏が翻訳会社に翻訳を依頼していた頃は、訳文に課金するのが一般的でした。しかし、簡潔な文章のほうがメッセージとして効果的だと考える大里氏にとって、これは納得のいかない課金方法でした。しかも、この方法だと翻訳が出来上がってみないと料金がわからないことになります。これも予算を立てて動く企業にとっては、使いやすいシステムではありません。

自分が身をもって感じた改良点を実行し、ユーザーニーズを実現させる翻訳会社を作ろう、そう考えたのでした。

会社を始めるに当たって、翻訳者にヒアリングも行いました。そこで出てきた翻訳者側からの不満のひとつに、「自分が出した翻訳が良かったのか悪かったのかわからない」というものがありました。

「手間が掛かるという理由で、翻訳者へのフィードバックはあまり積極的に行われていなかったようです。しかし、顧客ニーズをくみ取り、次回さらに良いサービスを提供するためにも、また翻訳会社として翻訳の質を上げていくうえでも、非常に重要なことです。石にかじりついてでも絶対にフィードバックは実行していこうと思いました」(大里氏)

こうして業界の慣習にとらわれない、独自の路線で会社をスタートさせました。

キーワードはビジネスコミュニケーション

社名にもうたっているとおり、アークコミュニケーションズはひとことで言うと“ビジネスコミュニケーションに関わるサポートをする会社”です。現在、柱となるサービスは4つありますが、これらはユーザーニーズから徐々に派生していきました。

まず、創業時のサービスの核は「翻訳/ローカリゼーション事業」でした。ソフトウエアのローカリゼーションのほか、プレスリリース、議事録、IR資料、財務資料など企業のビジネス活動に関わるあらゆる文書の翻訳を受けていました。

翻訳サービスを提供していると、次の段階として翻訳したものをどのような形で見せればよいか、例えばWebで公開するか、紙媒体に載せるかなど、効果的なメディアは何かを提案するサービスが生まれました。これが「Web/クロスメディア企画制作事業」です。

その次には、原文があれば翻訳ということになりますが、そもそも原文がない場合に、一から書くことをお手伝いしましょうと「ライティング事業」が始まりました。

最後に、これら3つのサービスは、場合によってはお客様のオフィスに伺ってオンサイトでお手伝いしたほうが効率がよいこともあり、約3年前に専門スタッフを派遣する「人材派遣/紹介事業」が始まったのです。

翻訳者の募集は年間を通じて随時行っています。翻訳者の能力として、同社が特に重要視しているのは、コンテンツに対する知識と日本語の表現力だといいます。「例えば、昨今、企業が熱心に取り組んでいるもののひとつにCSRレポートがありますが、このレポートとはそもそも何なのか、どういう目的で出そうとしているのか、翻訳をする者は、まずそれを知る必要があります。そしてそのうえで、目的に合った日本語の表現をすることが大切だからです。私たちは基本的に、これから翻訳者を目指そうとしている人に門戸を開きたいと思っていますので、採用の際に過去の実務経験はあまり重視していません。ただ、翻訳者として上に述べたようなことを勉強していく意欲があるかどうかは非常に重要だと考えています」(大里氏)

同社では翻訳者の翻訳に対する、あるいはビジネスコミュニケーションに対する意識を高めるために、さまざまな取り組みを行っています。その一部をご紹介しましょう。

翻訳者が翻訳を行い、別の翻訳者が原文と付き合わせてチェックして気になる点を先の翻訳者に伝えるという二重体制を、基本のサービスとしてお客様に推奨しています。この時点で、翻訳者には一度目のフィードバックがなされます。

お客様に納品後、その翻訳物はそのまま利用されることもありますが、表現や用語に訂正を加えて利用されることも少なくありません。その最終形をお客様から提供してもらい、社内スタッフ、翻訳者ともに確認します。翻訳者にとっては2度目のフィードバックです。

お客様の直しは、その担当者の好みで変更されるような場合もありますが、それも含めて利用される最終形に近づけていくことが重要であると同社では考えます。

創業時から毎年、その年に最も貢献してくれた翻訳者を3名選び、トランスレーター・オブ・ザ・イヤーとして表彰しています。選考の基準は、翻訳した量、翻訳の質、貢献度、お客様からの評価などで、それらの情報をもとにプロジェクトマネージャーが選出しています。

ローカライズで使う翻訳メモリのトレーニング、周辺知識を身につけるための専門書の貸し出し、講師を招いてのセミナー、また会計学などの専門分野について学びたい人には提携専門学校の割引制度なども用意しています。

メールや電話だけのつながりでは寂しいと、セミナーなどイベントの後にスタッフが翻訳者を誘って積極的に飲み会を行ったり、海外在住の翻訳者が訪ねてくる機会に他の翻訳者も誘って交流会を開くなど、スタッフと翻訳者、また登録翻訳者同士が言葉を交わし、つながりを深める機会を設けています。

年に4回の新聞の発行、社長ブログ、翻訳事業部ブログなどを通して、今どのような事業を展開しているか、スタッフはどのような人物かなど、幅広く話題の発信を行っています。

このところの経済の悪化で翻訳の仕事も減ってくるという懸念もありますが、私は逆にチャンスであると捉えています。企業がコストをスリム化しようとすると、一般的に正社員をカットしてアウトソーシングに動くからです。

ただし、そうなると翻訳者に要求されるレベルは非常に高くなります。できるだけ社内の担当者が手を掛けずにすむように、なるべく完璧な翻訳をあげてくれる翻訳者に頼みたいという要望がより強くなるはずだからです。

お客様である企業のニーズをくみ取った翻訳ができるレベルの高い翻訳者は引っ張りだこになるでしょう。そういう意味では翻訳サービスも選別されていくと思います。

また弊社では、翻訳から一歩進んだサービスとして、上がってきた翻訳をライターがお客様へのヒアリングをもとに大胆に削除、書き直し、あるいは書き足すなどして、より目的にあったものに作り替えていくサービスを行っています。できあがったものは翻訳者にもフィードバックします。お客様の最終目的を理解してもらい、翻訳の段階でもできることをくみ取ってもらうためです。読者を意識したメッセージ性の強い翻訳ができる翻訳者が数多く育ってくれることを願っています。