ご利用企業インタビュー

株式会社エクシム・インターナショナル

エクシム・インターナショナルは、もともと翻訳会社で翻訳コーディネーターをしていた永島克彦氏が1988年に立ち上げた会社です。「当時私が勤めていたのは非常に大きな会社で、さまざまな案件を手がけていました。それだけに、業務処理が定型化しており、それがよいところでもありましたが、個別の案件ごとのきめ細かいサービスという面では欠けているところでもあり、徐々にジレンマを感じるようになっていきました。そこで、規模は小さくても、お客様に満足していただける質の高い翻訳サービスを目指して自ら会社を立ち上げたのです」(永島社長)。

会社設立当初は社員はご自身1名のみ、横浜の自宅を事務所にして仕事を受け、それまで付き合いのあった在宅翻訳者さんにお願いして業務をこなすことからスタートしたと言います。「バブル最後の時代で、景気はまだ悪くなかったので、知人や友人の紹介で営業に行くと、順調に仕事をいただけました。半年後には利便性を考えて東京に事務所を開き、社員も3名になりました」(永島社長)。

その後、お客様のニーズに沿って通訳の手配や国際会議の企画・運営、翻訳に付随する業務としては印刷物のデザインなど制作も手がけるように。現在は社員6名で翻訳をメインとしながら、これらの業務もこなしています。

1992年には、日本で仕事をしていたフランス人の友人が母国に帰ることになり、フランス事務所を立ち上げて欧州での窓口ができることになりました。「ちょうどEC統合などが進んでいる時期でした。以来、フランス事務所も順調に受注をいただいております。多いのは仏⇔日の翻訳ですが、英⇔日の需要も少なくありません。仏⇔英や、その他ヨーロッパ言語の翻訳もあります」(永島社長)。

現在、東京事務所は社長を含めて5名のスタッフで運営しています。週に1度、進捗状況などを確認するミーティングを行いますが、常に横の連携を取りながら仕事を進めているので、会議に長時間を割く必要はありません。「小さな会社のメリットですね。スタッフが現在どのような仕事をしているのか、お互いにある程度理解しており、仕事の流れも把握していますので、今日は忙しそうだなと思ったらすぐにフォローをして、すべての案件が滞りなく進むように心がけています」(マーケティング・ディレクター青柳睦子さん)。

「コーディネーターはお客様単位で担当しており、付き合いの長いお客様が多いので、その点でも、お客様に合った、また案件に合ったきめ細かいサービスが行いやすい体制を維持しています。これは私が会社を設立した目的でもありますし、常に最優先事項として取り組んでいます」
(永島社長)。

同社が登録翻訳者に求める資質として、最も重視しているのは、日本語の表現力だと言います。

「トライアルの訳文を拝見すると、誤訳はほとんどないのですが、日本語の表現では気になることが多いです。たいていのお客様は出来上がった日本語訳のみにまず目を通されます。

そこで、引っかかるところがあると、この翻訳はちょっと……ということになりかねません」と永島社長。「ほんの少しの工夫で、ずいぶんと読みやすい訳文になることがよくあります。例えば、語順を入れ替えるとか、長い文章は2つに区切るとか。一文一文に間違いはなくても、全体の流れがスムーズでなければ、よい翻訳とは言えません。トライアルを受ける方には、そのあたりの工夫をしていただけると合格に近づけると思います」

特に同社の場合は、広報関係の文書など、読者に読ませる内容のもの、翻訳者の日本語力が問われる案件が多いのが特長です。「弊社では、翻訳メモリなどを使う案件ではなく、翻訳者の力量が問われる分野の翻訳を得意としています。ですから、トライアルでは、実績も考慮しますが、何よりも訳文を重視します。定年後に翻訳を始めた、専門分野をお持ちの方、日本語力のある方などにも活躍していただきたいですね」(永島社長)

お客様が必要とする訳文を、きめ細かいサービスで提供することをモットーとする同社では、最近新たな取り組みを始めています。それは、翻訳に取り掛かる前のひと手間によって、仕上がりの文章をよりニーズに合ったものにしようというものです。

「やり方はさまざまです。例えば、日英翻訳の依頼で、元の日本語の文章が日本人が読んでも読みづらいというケースがありました。翻訳するのは英語ネイティブの翻訳者ですので、そのまま訳してもらうと、微妙に間違った解釈になりかねません。そこで先に原文である日本語のリライトを行いました。このような場合は、この日本語を見て英語ネイティブの翻訳者が翻訳することを想定してリライトをすることが大事ですね」(永島社長)

これをプレエディティングと言います。厳しい納期のなか、リライトのための時間を捻出することは大変ですが、これによって出来上がる英文の質はぐんとアップするのです。

また、別の日英翻訳の案件で、建築会社より、コンペに応募するための書類として、ある建造物を説明した文章を翻訳してほしいという依頼がありました。しかし、担当の青柳さんが日本語の文章を読んだところ、何を伝えようとしているのかわからなかったのです。これでは翻訳者が翻訳できるはずがありません。

「幸い、その建築物が都内にあったので、実際に見に行ってみました。百聞は一見にしかず。建物を見ると、この文章が言わんとしていることがすべて理解できたのです。その情報を翻訳者さんに伝えて参考にしていただきました」(青柳さん)。

また、実際に見に行くことが出来なくても、Googleのイメージ検索なども役に立つと青柳さんは言います。

コーディネーションの段階で多少時間をかけても、それがよい翻訳につながるのであれば、率先して行いたい。同社ではそのように心がけています。


マーケティング・ディレクター 青柳睦子さん

翻訳に関わる者(翻訳者のみならず、翻訳コーディネーターやチェッカーもそうですが)には、日本語力が欠かせません。特に翻訳の場合は、ただ単に表現テクニックが優れているというだけではなく、原文の目的に合った適切な表現が使われているかどうかが重要だと思います。例えば、契約書の翻訳なのにやわらかい文章で書かれていたら違和感があります。逆にPRの文章が契約書のようにかたいものでもよくありません。また、同じ英語の単語であっても、その単語が登場する文書の種類によって選ぶべき訳語は違ってくるべきだと思います。翻訳者の方には、そのあたりにも気を配って翻訳していただければと思います。

とはいえ、そもそもどのような目的の文章なのか、原文を渡されただけでは判断できないこともあるでしょう。本来はわれわれ翻訳コーディネーターがきちんと伝えるべきなのですが、時に配慮が足りずに、情報が不足していることもあるかもしれません。そんなときは、「これは何に使われる書類ですか?」「どのような方が読む文章ですか?」と尋ねていただきたいと思います。翻訳者とコーディネーターの間でコミュニケーションをとることはとても大切で、コミュニケーションがうまくいけば、できあがる訳文も良くなると感じています。私自身の自戒も込めてですが、お互いに連絡を取り合い、よいものを作っていければと思っています。