ご利用企業インタビュー

株式会社アスカ・コーポレーション

アスカコーポレーションは医薬科学分野を専門とする翻訳会社として1995年に設立されました。本社は大阪市中央区道修町(どしょうまち)にあります。この場所は昔から薬の町として知られていました。江戸時代、日本に入ってくる薬はまず道修町に集まり、全国に流通していったのだそうです。現在も数多くの製薬会社がこのエリアに本社を置いており、そのため医薬翻訳のニーズも高いというわけです。

医薬科学分野の翻訳とは、具体的にどのようなものを翻訳するのでしょうか。制作部QCマネージャーの早川威士さんに伺いました。「大きく分けると2つあります。1つは新薬申請書類の翻訳です。製薬会社が新薬を販売する際には、当局に申請し承認を受けなければなりません。国内外での申請時に、文書の和訳、英訳が必要になります。この翻訳には薬に関する知識はもちろん、新薬申請の流れや、当局に出す書類のスタイルなどの知識がなければできません。もう1つは医学論文など学術的文書の翻訳です。研究者が直接使用する場合もあれば、広報的資料として専門医や患者向けの翻訳もあります。こちらも、日英・英日両方のニーズがあります」

現在、同社のスタッフは大阪本社に約15名、東京事務所に3名在籍しています。製薬会社の中には本社を東京に移す会社も多く、そこで東京事務所では常駐の営業スタッフがその対応に当たっており、必要に応じて大阪のスタッフも出向くというスタイルを取っているのです。制作の拠点は現在も大阪です。プロジェクトマネージャー3名、チェッカーなど制作担当スタッフが約10名おり、翻訳は基本的にフリーランスの登録翻訳者が行います。

「翻訳者は弊社WebサイトやアメリアのJOB INDEXなどを通して募集しています。まずトライアルを受けていただきますが、その際に翻訳の実績はあまり重視していません。訳文が一定レベル以上にある人について、職歴学歴等を参考に審査をしています。専門知識と言語的センスがあるかどうかを重要視しています」(早川さん)

トライアル合格者には面接、電話でのヒアリングを行い、そこでは将来のビジョンなどについても尋ねるといいます。「経歴書だけでは知ることのできないプロ翻訳者としての姿勢や、医学に対する知識と関心、この分野でずっと仕事をしていく意志があるかどうかなどを直接お話しすることで伺いたいと思っています。翻訳者は我々の仕事のパートナーです。弊社スタッフと同じ価値観、目的意識を持つ方と一緒に仕事をしていきたいですね」(早川さん)

同社では、年末に登録翻訳者の評価を行っています。レベルは<S、A、B、新人>の4段階で、まず登録時にレベルが決められますが、毎年末には、その年1年間の翻訳実績、訳文のクオリティー、取り組み方などが総合的に判断され、再評価がなされます。レベルが上がると、レートのベースアップや、翻訳依頼が優先的にされるなど、翻訳者に実質的なメリットもあります。

「翻訳者の皆さんにはスキルアップをしていただきたいですし、それを正しく評価することは翻訳者の方にも弊社にも非常に意味のあることだと考えます」(早川さん)

また同社では登録翻訳者を対象に、仕事をスムーズに進めるためのセミナーも開催しています。

「例えばTradosの使い方などパソコンスキルや、翻訳のノウハウに関するセミナーを主に行っています。また、業務を通じてのフィードバックも積極的に行っています。皆さんがスキルや知識を高めるためのサポートにも力を注いでいます。これらの翻訳者育成の枠組みを私たちは『ASCA メソッド』と名付け、品質向上のための最重要戦略としています」(早川さん)

サイエンス誌は米国科学振興協会(AAAS)が週刊で発行している科学雑誌で、イギリスの『ネイチャー』とともに世界の二大科学雑誌として知られています。同社ではAAAS より委託を受けて、サイエンス誌の日本事務局を運営しています。

例えば、プロモーションの一環として日本語版Webサイトを展開しており、そこでは目次の日本語訳や要約を作成して掲載しています。翻訳自体は非常に短いですが、最新の科学情報である論文の内容を理解した上で翻訳する必要があり、かなり深い知識が必要となります。従って、これには研究者を中心とした翻訳チームが取り組んでいます。

登録翻訳者の中には、医科学分野に興味があり、サイエンス誌の公式Webサイト経由で同社を知り、翻訳者を目指すようになった方もいるとのことです。まずはこの分野に興味を持てるかということが、非常に重要でしょう。ぜひ、一度サイエンス誌のWebサイトを覗いてみてください。

同社の翻訳者である田村房子さんがWebサイト上で連載する、科学英語の勉強コーナーです。2008年4月から始まったSEASON 1 では、先に紹介した米国サイエンス誌の英語を題材に、覚えてほしいフレーズや用語が紹介されています。SEASON 2 では、医学論文の書き方が順を追って説明されていますが、これは医学論文を書こうとしている人のみならず、論文の構成を学ぶ上でも役に立つはずです。医薬分野の翻訳者を目指している方、興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

制作部 QC マネージャー 早川威士さん

ご応募いただいたトライアルのうち、実は約8割が訳文の最初のパラグラフを見た時点で不合格になってしまいます。ケアレスミスや誤訳といった基本的な誤りも多いのですが、ほとんどが申請文書や論文で用いられる言い回しやスタイルに一致していないためです。

翻訳では原語の読解力や表現力なども重要な要素ですが、それ以前の問題として自分が携わっているカテゴリーの文章に慣れ親しんでることが大切です。これから医薬分野のトライアルに挑もうとされている方は、普段から専門誌や文献、厚労省等の資料に目を通すなどして、自分がどういうスタイルで文章を書かなければいけないのかということを学ばれるとよいかと思います。

次に多いのが、残念ながらケアレスミスです。数字の誤り、誤字(誤変換)、訳抜けなどがミスとしてよく挙げられますが、これらは見直しによって防げるものです。翻訳の仕事は時間との戦いでもあります。比較的時間の余裕があるトライアルでミスがあるような方は、時間に追われる実務ではケアレスミスを頻発するのではないかと不安になります。

最後に読みやすさも重視しています。そのためには言語的センスのほか、内容理解も欠かせませんので、課題文の内容・主旨がわかるまでじっくり取り組んでみてください。

現在、トライアルの合格率は5%程度です。半年ごとに課題を更新していますので、再チャレンジは歓迎です。前回に対してどのくらい伸びているかも評価の対象にしています。私たちが求めているのは、これからずっといっしょに仕事をしていくパートナーです。翻訳のスキルだけではなく、熱意なども見ていますので、準備をしっかり整えて、ぜひチャレンジしてください。