ご利用企業インタビュー

株式会社パセイジ

1987年にオフィス機器などのマニュアル制作から業務を開始したパセイジ。海外輸出対象の機種であれば、マニュアルの多言語化が必要で、翻訳サービスも行ってきました。その後、海外企業のソフトウエアを日本で展開する際のローカライズが業務に加わり、現在はマニュアル制作とローカライズの2本柱で事業を展開しています。

まずマニュアル制作では、社内のテクニカルライターにより日本語版マニュアルの書き起こしが行われます。これはクライアントの製品開発と並行して行われることが多く、仕様変更などに合わせて途中で文面の変更を余儀なくされることが少なくありません。ある程度、日本語版マニュアルの内容が固まってきたところで、日英翻訳が行われ、英語版の制作に入ります。多言語への展開は英語版から行われます。

テクニカルライティングは、クライアントとの綿密な打ち合わせが必要で、企画立案から担当するケースも多いので、社員スタッフが対応しているとのこと。日英翻訳は登録翻訳者に依頼、英語から多言語の翻訳はオーストリアにある関連会社をベースに各国語のネイティブ翻訳者が行っています。

一方、ローカライズのほうは、英語版のソフトウエアを日本で売り出すにあたり、そのマニュアル、ユーザーインターフェイス、ヘルプなどを日本語に翻訳することになります。

登録翻訳者は、同社のホームページやアメリアのJOBINDEXなどを通して年間を通して募集しています。日英翻訳、英日翻訳の両方のニーズがある同社ですが、担当部署はそれぞれ違うので、各担当者が必要に応じてトライアルを実施しています。

マニュアル制作で日英翻訳のコーディネート業務を担当するのは翻訳・制作管理部の菊地昌枝さんです。日本語版制作と同時に翻訳も進んでいくので途中変更などが非常に多く、コーディネーターはその管理が重要な役目のひとつです。
「日英翻訳者は基本的に英語ネイティブの方が条件です。トライアルでは、テクニカルの知識、こなれた英語、日本語読解力を見るための3つの課題を訳していただきます。合格率はだいたい1割程度です」(菊地さん)

これに対してローカライズグループでは、Trados などの翻訳メモリを使用できる英日翻訳者を募集しています。ローカライズグループ・リーダーの嶋村栄一さんはホームページなどを通して応募してきた方に実施するトライアルに加えて、アメリアの「会員プロフィール検索」を活用して案件に合う方を探し、個別にスカウトすることも多いと言います。

「IT 業界ではプロジェクトが1カ月2カ月先延ばしになったり、場合によっては直前にキャンセルになることも少なからずあるので、合格した翻訳者さんになるべくご迷惑をおかけしないように、仕事がある程度確実になってから、アメリアの『会員プロフィール検索』で案件に合う実績やバックグラウンドをお持ちの方に声を掛けてトライアルを受けていただいています。プロフィール文は決まったフォーマットがなく、みなさん自由に書かれているので、その書き方でさまざまなことがわかります。まず、書かれた日本語を読むと、文章力がある程度見えます。プロフィール文が長く力強ければ、それだけ仕事に対する熱意を感じます。また、翻訳実績や使えるツールなども書かれているので、その案件をお願いできるかどうかも判断しやすいですね」(嶋村さん)

プロフィールを見てから声を掛けているので、トライアルでの合格率は高いそうです。むしろ島村さんが重視しているのは、トライアルの結果よりも、初めて依頼した仕事での対応だと言います。

「私の経験上、トライアルでの出来はあまり当てになりません。合否に関わるトライアルは一生懸命やったが、実際の仕事になると出来が悪いというケースがあるのです。メールのやり取りなども含めて、最初の仕事で判断をして、そこで非常に良いお仕事をしてくださった方は、その後に依頼する優先順位が上がりますね」(嶋村さん)


  翻訳・制作管理部 菊地昌枝さん

翻訳物というのは、翻訳しただけで終わりではありません。翻訳した文字が世の中に出るためには、出来上がった翻訳原稿をチェックする工程があり、データとして仕上げるDTPの作業があり、お客様のチェック後には、翻訳の正確さ以外にもニュアンスやお客様の好みも含めて直しの依頼があり、それらすべてが完了して、はじめて読み手の元に届けられます。ですから翻訳者の方にも、「私は翻訳者。翻訳したから終わり」ではなく、その先の作業を考えて翻訳をしていただければと思うのです。

そういう意味で、会社にお勤めの経験のある方は、仕事を進める上でやりやすいというのが正直な感想です。おそらく、組織の中で他部署やお客様との関連を意識して働いた経験が、翻訳にも良い意味で表れてくるのだと思います。もちろん、会社勤めが絶対の条件という意味ではありません。翻訳者さんはフリーランスではありますが、大勢のスタッフの一員という意識を持っていただきたいのです。

具体的には、質問の仕方にもそれが表れると思います。自分で調べたり、考えたりせずに、安易に質問をしてくる方がいます。また逆に、尋ねずに自分本位に翻訳をしてきて、後工程でそのフォローをしなければならないこともあります。タイミング良く、必要な質問をしてくる方は、仕事の流れがよくわかっているなと安心します。

それから、トライアルを受ける方の中に、「コンピュータはあまり詳しくないのですが…」という方がいらっしゃいます。もちろん、エンジニア並みの知識を翻訳者の方に求めているわけではありませんが、少なくともコンピュータのユーザーとして上級者でないと、その分野の翻訳はできません。

ローカライズの翻訳者になりたいのであれば、例えば、実際にお手持ちのソフトウエアの英語版を手に入れて翻訳し、比較してみるといった勉強もできます。特に翻訳などフリーランスの仕事は、誰かに教わるものではなく、自分で気づいて自分で直していくことの積み重ねで上達していくものだと思います。どれだけ勉強しているかは、トライアルの訳文に必ず表れますので、知識を蓄えてぜひチャンスをつかんでください。

ローカライズグループ・リーダー 嶋村栄一さん

これは私個人の意見ですが、翻訳者を目指して学習中の方は、自分で翻訳するだけではなく、他人の翻訳物をチェックするという仕事を経験すると、とてもよい勉強になると思います。私自身、多くの翻訳者の方の翻訳を見ているわけですが、いろいろと見るうちに、翻訳の良し悪しがわかるようになってきますし、それを正しく直そうとする仕事が自分の力になっていくと感じています。

ときどき、社内のレビュアーの手が足りなくなって、登録翻訳者の方に、チェックのお仕事をお願いすることがあるのですが、「翻訳しかしません」と断られることもあります。これは、せっかくのチャンスなのにもったいないなと感じています。チェックの仕事で他の人の翻訳を見ることは、とても勉強になりますので、積極的にお引き受けいただければと思います。

それから、これは登録翻訳者の方へのお願いですが、タイミングが合わなくて、ご登録いただいても仕事をお願いできずにいる場合もあります。そんなときは、翻訳者さんのほうからご連絡をいただくのもありがたいのです。ほとんどの方が“待ち”なのですが、例えば『来週は予定が空いているのですが、何かありませんか』『明日、明後日と急に空いたのですが…』などと情報をいただくと、仕事に対するその方の意気込みを感じます。まだ翻訳の実力が足りない方であっても、やる気があるなら仕事をしながら吸収していっていただけるかな、と期待も含めてお願いしようかと思うものです。かといって、頻繁にメールを送られると、それはまた困るのですが、そのあたりは加減をしながら連絡をいただけると嬉しいです。