ご利用企業インタビュー

パンローリング株式会社


パンローリングは1991年に株取引に使用するソフトウエアを開発、販売する会社として誕生しました。自身も投資家である社長と、システムエンジニアの副社長が、培ってきた経験と専門知識を生かして始めた会社です。

翻訳関連の事業をスタートさせたのは、1999年のことです。英語で書かれた投資に関する書籍を読みたかった社長が、どこかの出版社が出してくれるのを待つのではなく、自社で翻訳版を作ってしまおうと考えたことが発端でした。その後、日本人投資家の書き下ろし書籍も扱うようになり、出版業務が広がっていきました。

また、これらに加え、投資に関するセミナーの企画・運営、セミナーを収録したDVDの販売、さらに投資とは別路線として、昔懐かしい漫画の復刻版出版、耳で聞く書籍であるオーディオブックの制作、販売なども行っています。

投資に関する翻訳書については、これまで約10年間に161冊を刊行(2009年11月末現在)。近年は年間15冊のペースで出版を続けています。翻訳書の編集者は社内スタッフ1名、社外スタッフ1名の2名体制。社長が情報収集して気になる海外書籍をピックアップし、編集スタッフがリーディングをして翻訳出版する書籍を決めているのだそうです。



登録翻訳者の採用は、自社サイトとアメリアの「JOB」から応募を募り、トライアルを実施して決定しています。トライアルの合否を決める段階では、訳文のみを判定し、翻訳者の翻訳実績やバックグラウンドは一切問わないと編集部の世良敬明さんは言います。「採用はあくまでも訳文の良し悪しで判断しています。株取引や金融に関する経験や翻訳実績は特に問うていません。合格後に経歴書を見て、専門分野での経歴がある方は、なるべくその分野に近いテーマの書籍をお願いしようかと考えることはありますが。バックグラウンドは、あればもちろんよいですが、専門知識は必要に応じて学習し、きちんと調べものをして訳していただければ問題ないと考えています。ただ、合格には2段階あり、A合格ですぐにお仕事をお願いできる方と、B合格として下訳からお願いする方に分かれ、B合格の方のほうが多いのが現状です。まずは下訳の仕事をお願いして、その出来や翻訳に対する意欲などを考慮して、その後のお仕事をお願いすることになります」

合格はトライアル応募者のだいたい1割程度。誤字脱字、訳抜けなどがないことはもちろん、主にリサーチ力を判断しているとのことです。



翻訳者に求められるリサーチ力について、もう少し詳しく世良さんに伺いました。「例えば簡単な例で言う、“long”“short”という単語は、株取引では、『買う』『売る』と訳します。しかし『長い』『短い』あるいは『長期』『短期』と平気で訳される翻訳者さんがいらっしゃるのです。おそらくその訳では文章のつながりがおかしいはずです。おかしいと思ったら辞書を引く、専門用語としての使い方はないか確かめることが必要。与えられた英文をただ訳すのではなく、このテーマは何だろう、著者は何を伝えたいのだろう、と好奇心を持って仕事に取り組んでいれば、自然と調べなければならないところはわかると思います」

また、「本を1冊訳すのは長丁場であり、編集者との共同作業がうまくいくかどうかも重要。編集者との相性というか、その大本はコミュニケーション能力だと思いますが、それも非常に重要だと考えています」と世良さんは言います。翻訳者は翻訳の専門家として、きちんとリサーチして専門用語を間違えずに、日本語として読みやすい文章にし、編集者が長年この分野に携わってきた専門性を生かして、知識豊富な読者にも満足してもらえる専門書として作り上げる、いわば二人三脚の取り組みになるからです。


 自身で投資をしているという人以外、多くの人にとって投資分野の専門書はあまりなじみのないものでしょう。パンローリングの翻訳者について伺うと、必ずしも投資に詳しい人とは限らないとのこと。そこで、投資関連本にはどのような内容のものがあるのか、どのような人が翻訳者として向いているのか、編集部の世良さんに伺いました。

―投資本というと、投資に関するハウツー本のイメージくらいしか思い浮かばないのですが、どのような種類の本があるのでしょうか?

「実は非常に多種多様なものがあります。まず一般的に、著者自身が投資をしていて、その自分の投資スタイルについて経験や理論を書籍にまとめるタイプのものがあります。投資スタイルは投資家の数だけあると言っても過言ではありませんので、書籍の内容も著者ごとに個性が出ます。例えば、1円2円の利益を狙って頻繁に売り買いする投資家もいれば、一度買えば何年も持ち続けて大きな利益を狙う投資家もいます。安くなったら買う投資家もいれば、安くなるとさらにもっと安くなるだろうと見越して売る投資家もいます。そして、これらの間には、その中庸をいく無数の投資家がいるわけです。他にも、株式チャートをもとに分析を行うテクニカル分析、企業業績や財務を分析するファンダメンタルズ分析など、分析手法もさまざまです。儲けを出している投資家は自分のスタイルが良いと信じており、結果も出しているわけですから、それについて本を書きます。読者はそれを参考にして、自分自身のスタイルを探すというわけです。また、それだけではなく、投資に関する心理学的な考察の本もありますし、ソフトを使った株取引のための指南書もあります」

――となると翻訳者に求められる知識にも違いがありますね。

「翻訳者の方は、ご自身が投資をなさっていれば知識もあるでしょうから、それに越したことはありませんが、きちんと調べものができれば、必ずしも投資の経験がなくても構いません。ひとくちに投資本と言っても、先に申し上げたとおりさまざまな種類のものがありますので、例えばファンダメンタルズ分析であれば経済に強い方、心理学的考察の本であれば心理学を学んだことのある方、ソフトを使った指南書ならC言語などコンピュータ関係の知識がある方には、それぞれの優位性を発揮していただけるでしょう」

――この分野の翻訳者を目指す方にアドバイスをお願いします。

「われわれが扱う書籍は、小説のように文章を書くプロの作家が書いているのではなく、トレードや株取引の専門家ではあるが文章を書くことは専門ではない人が書いています。つまり元の英文がへただったり、やたらと形容詞がついていたりすることもあるのです。それをそのまま日本語にしてしまうと、非常に読みにくいものになってしまいます。そこは翻訳者の力量で、内容は同じで、より読みやすくできる日本語力を磨いていただきたいと思います」