ご利用企業インタビュー

株式会社ワイズ・インフィニティ

人の縁から字幕翻訳の世界に

今年、創業10年を迎える同社は、そもそもフリーランスで字幕翻訳と放送翻訳をしていた社長の山下奈々子氏が自宅を事務所に一人で始めた会社でした。

アメリカに留学中に結婚、25歳までに三児の母になっていた山下さん。帰国後、英会話教室で講師の仕事をしていましたが、人の縁と偶然が重なった結果、字幕翻訳を手がけるようになったと言います。当時は、ビデオデッキが家庭に普及してソフトの需要が高まった頃でした。「ゴルフの練習に出かけた母が、そこで出会った初対面の方と話をしていて、娘さんが英語を話せるなら頼みたい仕事があるということになって。それが映画の字幕をチェックする仕事でした」(山下社長)。他の翻訳者が訳した字幕をチェックする仕事を何本かやったあと、ビデオを1本渡されて、訳してみて、と言われたそうです。「見よう見まねで始めましたが、納品後に試写を見ながらディレクターにフィードバックを受け、それでやり方を身につけていきました」(山下社長)

次に訪れた出会いはテレビ局でした。「たまたま別の用で訪れたテレビ局で雑談中に、字幕の仕事をしていることを告げると、テレビ局でも翻訳が必要な仕事があるから、今度お願いしたいと言われて。本当に数日後に連絡があり、放送翻訳の仕事をするようになりました」(山下社長)。それから、ニュース番組や海外取材ビデオのディクテーションと翻訳を次々と頼まれるようになり、人の縁から仕事は他の部署、他のテレビ局へと広がっていきました。そんなふうにしてフリーランスで十数年仕事を続けましたが、一人ではどうにも立ちゆかなくなり、会社にしたのが2000年のことです。

3本柱で事業が拡張した10年間

会社設立当初は、自宅の一室を事務所として使い、社員は自分一人だけ、知り合いを中心とした翻訳者のネットワークを駆使して仕事をこなしていきました。フリーランスの頃に手がけていた、字幕翻訳と放送翻訳を2本柱としてスタートし、設立1年後に翻訳者育成のための教育事業が加わり、以来ずっと3本柱で事業を展開しています。

字幕翻訳は90年代後半にCS・BS 放送が登場し、またDVDの特典映像も増えて、ちょうど仕事量が増加していた時期でした。しかし、仕事量の増えた頃は、それに反比例して字幕の質が落ちた頃でもあったといいます。「ドラマをDVD化する際のリライトを担当したところ、読み切れないほど長い字幕、句読点のある字幕など、字幕翻訳のルールを無視した字幕が多くて、本当に大変な思いをしました」(山下社長)。その経験から、このままでは業界がダメになる、何とかしてクオリティーを保たなければ、と始めたのがスクール事業でした。

放送翻訳は、会社設立2年目の2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起こり、この関連のニュースを中心に仕事が殺到しました。放送翻訳はテレビ局に出向いて、本番までの短い時間で翻訳をこなさなければならない仕事です。翻訳とはいえ通訳のスキルが要求される部分もあります。

SST ではどこにも負けない翻訳会社

字幕翻訳に関しては、いちはやくSST(字幕制作ソフト)を導入し、扱える翻訳者の育成にも力を入れました。SST の特徴は、ハコ切りやスポッティングがこのソフトひとつで行えるところですが、やはりツールですので、使いこなせなければ、仕事として通用するレベルのものは出来上がりません。翻訳者への普及や教育にも力を注ぎ、今ではほぼ100%がSST による仕事であるだけでなく、SST によるスポッティングのみの仕事も来るほど業界での信頼を集めています。

「翻訳者さんの中には、スポッティングやハコ書きは翻訳ではないので積極的に習得しない方がいますが、翻訳はもちろんこれらが完璧にできれば翻訳者として強味になります。スポッティングやハコ書きの良し悪しは、字幕の読みやすさに大きく影響します」(山下社長)

現在、同社の社員は10名。字幕担当4名、放送担当2名、スクール担当3名と総務です。字幕の登録翻訳者は400名ほど、放送翻訳では50カ国語の翻訳者の登録があり、月々、仕事を発注している人数は70〜80人ほどです。

登録を希望する翻訳者にはトライアルを実施しています。2年以上の経験者には無料トライアルを、それ以外の方は有料になります(金額など詳細は同社HP 参照)。「経験がなくても素晴らしい翻訳をする方がいることは事実ですが、やはり経験が大きくものを言う分野ですので、新人の方は最初は投資だと思って、実力を付けてぜひ有料トライアルにチャレンジしていただきたいです」(山下社長)

わが社のここが自慢! 社会の役に立つ会社に

企業理念を大事にしていると話す山下社長。10年前から変わらない企業理念は“愛のある経営”です。愛とは相手に関心を持つこと、相手の役に立ちたいと思う気持ち。「例えば、困っていたら今日すぐ来てくれたとか、無理な注文だったのに納期よりも早く上げてくれたとか、相手が思っていた100%ではダメ、101%でも102%でも少しでもいいから上回るような仕事をしないと」
(山下社長)

2005年、同社の寄付によりカンボジアに建てられた小学校

毎週金曜日は始業の45分前から仕事への取り組み方などを考える勉強会を行っています。参加は自由ですが、社長以下ほぼ全員が参加して活発な意見交換を行っています。また、同社では経営方針の1つである「事業利益の一部を社会に還元する」を、発展途上国に学校を建てる事業への寄付という形で実現させています。

「利益が多く出たからやるのではなく、利益に応じて少なくても多くても寄付をするようにしています。これまでカンボジアとセネガルに学校を建てました。国内の地震被災地に寄付金を送った年もあります」(山下社長)

スタッフからひとこと 強い決意でやり続けてほしい

字幕翻訳者を目指して学習中のみなさんへ、また仕事の幅を広げようとトライアルなどに挑戦中のみなさんへ、メッセージをいただきました。

前列左より、山下社長、山田さん、後列は花田さん

「何よりも大切なのはやり続けることだと思います。私自身、最初のチェックの仕事をしていた頃は、チェック料など雀の涙で、往復の電車賃とランチ代に消えていたほどです。それでも止めずにやり続けたからこそ今があるのだと思います。この仕事で一本立ちするのは簡単なことではありませんが、軌道に乗るまでは他でアルバイトをしながらでもやりたいのかどうか、その本気度が重要なのだと思います」

続いて既にお仕事を始めている方々へ、字幕担当の花田達矢さんより。「日本語が不自然だったり、放送禁止用語が使われたりしている訳が意外に少なくありません。また、ちょっと注意をすれば防げるミスやリサーチ不足なども結構目につきます。映像翻訳はほとんどがエンターテインメント作品なので、丹念に調べればほとんどの場合は解決できるはず。時間を惜しまず、良い訳に仕上げていただきたいです」

放送翻訳担当の山田あかねさんより。「放送翻訳は現場に出向いてビデオなどの素材を見ながら行う翻訳なので、ヒアリングができることが必須条件になります。だいたい10分の素材を1時間半から2時間で翻訳できるスピードが必要になります。24時間動けて、深夜OK、東京23区内在住など、出来る方は限られると思いますが、経験があり臨機応変に対応できる方は特に歓迎ですので、ぜひ登録していただきたいです」