ご利用企業インタビュー

株式会社MCL

株式会社MCLがん情報の翻訳プロジェクトからスタート

京都御所のすぐ近くに位置する株式会社MCLは、25年前に別業種の会社としてスタートしました。翻訳部門ができたのは9年前の2002年のことです。社長の村田桂子さんは当時、京都大学医学部の研究生でした。そこで、がん情報を翻訳するプロジェクトに携わったそうです。

「それは、米国国立がん研究所が配信する『がん情報サイトPDQ(Physician Data Query)』の翻訳でした。サイトは毎月更新されるため、その更新作業を仕事として受けることになり、平井と二人で翻訳部門を立ち上げました」(村田さん)

今でこそ、英語サイトの更新の1カ月後には日本語版サイトの更新が完了していますが、はじめたばかりのころは更新作業に8カ月も掛かっていたといいます。

「更新内容を理解するために徹底的に調べあげ、なおかつ全体で約107万ワードあるサイト内の整合性を取るには、どうしてもこれだけの期間が必要でした。しかし、情報をいち早く届けるのも大事なこと。そこで更新を効率よく行えるように、翻訳支援ツールの開発を始めました」(村田さん)

最初に完成したのが『対訳君』という翻訳支援ツールです。文章、フレーズ、単語、文字など、どんな単位ででも検索でき、それらを含む文章が対訳の状態で瞬時に表示されます。

「翻訳者は内容理解や表現探しに利用できますし、チェッカーは翻訳後の対訳データを登録すれば、訳語の統一や既存訳との整合性を取るために使えます。その後『CheckAlign』という翻訳の品質を向上させるためのツールも開発しました。2つのツールを活用することで作業効率がぐんとアップしました」と開発責任者である平井由里子さんは言います。

熱意をもって原文を完璧に理解することが重要

その後は、医薬関係の書籍の翻訳、論文の翻訳、製薬会社から依頼される文書の翻訳と、医薬を専門分野として業務の幅を広げていきました。スタッフもはじめは2人からスタートして、現在は9人になりました。登録翻訳者の数は約70名。同社のHP、アメリアの「JOB」、医薬系専門のサイトなどを通して募集をしています。

「実は今までは『2年以上の実務経験』を募集条件とさせていただいていましたが、今後は経験不問で募集したいと考えています」(村田さん)

翻訳部門を立ち上げてすぐの頃は即戦力になる翻訳者が必要でしたが、今後は仕事を通して信頼できる翻訳者を育てていきたいと考えるようになったそうです。

「スタッフ採用時にも最初は即戦力を期待して中途採用を試みていましたが、仕事の専門性が高く、なかなか定着しませんでした。そこで、経験は問わずにやる気重視で新卒を採用したところ、興味を持って学びながら仕事に取り組んでくれています。社員、登録翻訳者ともに、内容に興味をもって、どんなに難しい内容であろうと、完全に理解できるまで調べ上げてやるぞ。また、クライアントや患者さんに喜んでもらいたい、という熱い想いが重要だと思っています」(村田さん)

「翻訳は単なる言葉の置き換えではなく、大切なのは情報を伝えていくこと。たとえ翻訳実績がなくても、この文章は何を言わんとしているのかをしっかりとくみ取って、言葉にできる力を持っている方であれば、お願いする仕事をこなしながら、きっと大きく成長していっていただけるんじゃないかと、そう感じています」(平井さん)

わが社のここが自慢!  徹底したクオリティ・コントロール(QC) で信頼を得る

何よりも翻訳の品質を重視し、スタッフ、翻訳者ともに「完璧に理解するまで調べ上げる」ことを信条としているという同社。そのQCへの取り組みについて伺いました。

「まず、現在QCチーフをしている木原をご紹介させていただきます。数年前、私は2年ほどアメリアの定例トライアル<実務>メディカルの審査員をしましたが、木原はそのときAAを取得したアメリア会員でした。その後、弊社の登録翻訳者になり、仕事を依頼するようになりました。医薬についての知識は最初はありませんでしたが、徹底的に調べものをしてくれるので、出来上がった翻訳の質は高かったです。ただ、基礎から学びながら調べるため時間がかかり、時給に換算すると当初は数百円だったとか。それでも、仕事をこなすごとに翻訳スピードが上がり、また分野もどんどん広げていこうと意欲的でしたので、ぐんぐん伸びていきました。4年ほど登録翻訳者として仕事をお願いしていましたが、ちょうど弊社でも人手が足りなくなり、社員としてQCを担当してもらえないかと声を掛け、入社してもらいました。弊社は京都にありますが、彼は東京在住のまま、在宅社員として活躍してくれています」

それではQC担当の木原さんに、同社のQCの方針について伺いたいと思います。

「いちばん大切なのは、全体の論旨が通っていること。そして、クライアントに有益になる情報だと思えば、恐れずにコメントをどんどん残すことだと考えます。実際、クライアントからのフィードバックでもコメントがあってありがたかったとおっしゃっていただいています」(木原さん)

コメントは、多すぎると煩わしいと感じられる場合もありますが、それはそのコメントの重要性によるでしょう。クライアントの判断が必要、あるいはクライアントがぜひ知っておくべき内容が書かれたコメントであれば、どんなに量が多くても必ず喜ばれるはずです。

「それからわが社の自慢としては、いろいろな分野に対応できるところですね。あまり実績のない分野であっても、徹底的に調べることで品質は必ず維持します」(木原さん)

調べものは重要ですが、専門性が高くなればなるほど難しさも増していきます。登録翻訳者の頃から調べものに定評があった木原さんに、その極意を尋ねてみました。

「仕事に関わる内容を調べるのは当然ですが、その周辺分野まで範囲を広げて、普段から常に調べておくことが大切です。最初は断片的にしか理解できなくても、あるとき情報が繋がって、大局的に理解できるようになります。また、周辺情報を調べたことで、理解できなかった原文の筋が通り、論旨の通った訳文が書けることがあります。それが翻訳の醍醐味だと思います」(木原さん)

スタッフからひとこと! 翻訳者はパートナー、ともに学びつつ よい仕事をしていきたい

同社で翻訳コーディネーターを始めた若手3人の方に、抱負を語っていただきました。

吉田久倫さんと村田知穂さんは入社したての新人です。吉田さんは理系の出身ですが、翻訳に関する仕事は初めて。一方、村田さんは文系の出身で翻訳や通訳の勉強を続けてきたそうです。

「現在、トライアルの窓口をしていますが、メールのやり取りの中で翻訳者さんの翻訳に対する熱意が感じられることが多々あります。翻訳者さんにはそれぞれ目指す分野などの違いがあると思いますので、コーディネーターとしてできるだけ翻訳者さんのご希望に沿うような案件をお願いしたいと考えています。それによりお互いの信頼関係が深まり、またスキルアップに繋がっていけば、より良い仕事ができると思います」(吉田さん)

「翻訳に興味があり、この仕事に就きました。この分野の翻訳は語学力と専門知識の両方が必要で、そのバランスが難しいと思います。医薬の勉強については、私もはじめたばかりで難しいと感じますが、これから知識を深めていきたいです。コーディネーターの仕事は、翻訳について深く追究するところがある反面、案件全体を見渡し動かしていくことも大切だと思います。学ぶことが多く、日々勉強させていただいています」(村田知さん)

占部早紀さんは同社の事務の仕事を担当しつつ、翻訳コーディネーターとしても自身の守備範囲を広げつつあります。

「よい翻訳に仕上げるためには、翻訳者さんに無理をさせすぎず、気持ちよくお仕事をしていただくことも大事。翻訳者の方とやりとりする際、こちらからの一方的なお願いにならないよう、納期の面やその他のやり取りでも気をつけるようにしています」(占部さん)

ソフト開発にも意欲的!
『対訳君』『CheckAlign』

同社のシステム関係を担当しているのが中村和美さん。

対訳君&CheckAlign

「翻訳を効率的に、またミスなく行うために、現場の声を元に弊社が開発した翻訳支援ツールを、多くの翻訳者に役立ててほしいと、パッケージ化して販売しています。ぜひご活用ください」(中村さん)

先に紹介した『対訳君』のほかに、対訳のデータベースを作成したり、数字や記号などに間違いがないか、指定用語がきちんと使われているかなど、ケアレスミスをチェックしてくれる『CheckAlign』も翻訳者にぜひ使ってもらいたいツールだそうです。