ご利用企業インタビュー

株式会社リベル

株式会社リベル多言語の翻訳者が集まり10年前に会社を設立

リベルは今から約10年前に8人の翻訳者が集まって始めた会社です。代表の山本知子さんは、そのころ実務を中心に20年以上のキャリアを持つフリーランスのフランス語翻訳者で、書籍翻訳も何冊か手がけ始めたところでした。

「翻訳者は1人だと孤独ですが、仲間が集まればもっとダイナミックな仕事ができるんじゃないかと、いずれは会社にすることを目標にグループを作りました」(山本さん)

スタート時のメンバーは、韓国語、フランス語、スペイン語、イタリア語、中国語、英語などさまざまな言語の翻訳者と編集者の合計8人。事務所は山本さんの自宅の一室でした。

「書籍翻訳を目指していたのと、メンバーの翻訳言語がさまざまだったことで、『本』と『自由』の意味を併せ持つラテン語の『リベル』と名乗ることにしました」(山本さん)

多言語の翻訳者グループを作ったことを公表すると、リーディングの依頼などが徐々に入るようになり、そこから翻訳の受注にもつながり、仕事は順調に増えていきました。

「振り返ると、今から10年前は英語以外の出版翻訳が増えてきたころで、多言語の翻訳会社は時代に合っていたように思います。また会社法の改正で法人化もすぐにできましたし、仕事量も順調に増加し、共通のオフィスが必要になって、3年目から東京にオフィスを構えました」(山本さん)

未経験者でもOK、大切なのは日本語文章力

会社設立当初は、8人のメンバーとその知人の翻訳者に依頼して仕事をこなしていましたが、だんだんと仕事量が増え、外注できる翻訳者を見つける必要が出てきました。

「翻訳者をどのように探そうかと思っていたときに、知人からアメリアのことを聞きました。以来、いつもアメリアを通して募集をさせていただいています」(山本さん)

現在、リーディングのみ依頼した人も含めると約150名の登録翻訳者がおり、そのうち70〜80名は共訳も含めて同社より書籍翻訳の仕事を依頼したことがあるといいます。

何か仕事が発生したら、募集をかけてトライアルを実施しますが、プロフィールや書籍翻訳の実績は参考にする程度で、採否はあくまでも訳文の出来で判断しているそうです。

「例えば、弊社が8年前にアメリアを通して初めて採用したフランス語の下訳者の方は、おそらく実力があってもチャンスが少なく、また当時は会社員で翻訳の実務経験がなかったので最初の仕事を得るのが難しかったのでしょう。しかしトライアルの訳文がよかったので下訳をお願いし、今では10冊以上の訳書があります。また、たとえその時のトライアルで選ばれなかったとしても、優秀な訳文を出した方には別の仕事をお願いするようにしています。必ずチャンスはありますので、英語以外の言語の方も英語の方も、ぜひご応募ください」(山本さん)

翻訳者の実績に繋がる仕事の仕方を

現在、同社が受けるリーディングの依頼は年間200冊近く、翻訳の依頼は年間70冊以上あるといいます。

「リーディングは時間がかかるわりには報酬の少ない仕事ですが、翻訳者にとってはいい勉強になります。作品を読み込み、わかりやすくまとめなければならないからです。自身の文章力をアピールする機会にもなります。弊社にとっても大切な仕事で、弊社ではリーディングをした作品が翻訳出版されると決まった場合は、リーダーを翻訳者の第一候補として検討してもらうことを出版社にお願いしています。リーダーが必ずしも単独訳者になるとは限りませんが、共訳や下訳として奥付に名前を載せてもらうだけでも実績になります。出版社も質の高い翻訳者を探すのが難しいようで、ほとんどの場合、弊社に依頼していただいています」(山本さん)

また同社では、単に翻訳者を紹介するだけではなく、翻訳でもリーディングでも必ず社内でチェックして、必要があれば翻訳者に指示を出して書き直しをさせたり、リライトをしてから出版社に納品するシステムをとっており、それが出版社から信頼を得ている一つの理由と考えられます。

「普通なら出版社も実績のない人に仕事をお願いするのは躊躇するでしょうが、当社なら締切を守り品質も保証してくれるという安心感があるようです。翻訳者にとっても、リーディングや翻訳が初めてであれば、誰かにアドバイスしてほしいと思うものでしょう。指示を受け、直しを行いながら成長していっていただければと思っています」(山本さん)

わが社のここが自慢!日本未紹介の作品を積極的に発掘したい

同社が書籍翻訳を受注する経緯には、3パターンがあるといいます。1つめは、出版社が版権を取得し、翻訳を依頼されるケース。2つめは、同社がリーディングをした作品の翻訳出版が決まり、翻訳の依頼を受けるケース。「リベルに頼めば何とかなる」と、当初は英語以外の言語でよく声が掛かり、現在は英語の依頼も多いそうです。

「最近は北欧言語の依頼も多いです。弊社にもその言語の登録翻訳者がいない場合は、アメリアの『会員プロフィール検索』を活用して翻訳者さんを探します」(山本さん)

そして3つめは、同社の側から企画を出版社に持ち込んで検討してもらい、版権取得に至って翻訳を依頼してもらうというケースです。英語以外の作品は持ち込みの数が少ないので、編集者の方にも喜ばれています。

「登録翻訳者の方が持ち込まれる場合もありますが、版権エージェントと組んでレジュメを作ることもあります。弊社の登録翻訳者が原書を読んで、面白そうならレジュメを書きます。それを出版社に持ち込み検討してもらうのです。この場合のリーディングは無償ですが、出版が決まれば翻訳を依頼されるので、よい作品をたくさん探して、どんどん売り込みたいと思っています」(山本さん)

スタッフからひとこと!

一般読者が楽しめる読みやすい日本語を

最初は誰でも実績ゼロ。翻訳者としての仕事歴ではなく、あくまでも試訳の良し悪しで採否を判断するという山本さんに、訳文のどのようなところを見ているのかを伺いました。

「トライアルでは誤訳のあるなしだけでなく、『日本語の読み物としてどうか?』という視点でも見ます。書店で手にとって読んでみたときに違和感のない文章でなければいけません。目指すは、読みやすくて格調の高い文章ですが、そのような文章が書ける力は一朝一夕で身につくものではないでしょう。偏りすぎずに幅広いジャンルの日本語の本を読むのがいいと思います。『違和感のない文章』のひとつとして、書籍で標準的に使用されている用字用語を使っているか、という点も大事です。いまの一般書籍では「無い」「有る」「全く」という表記は少なく、「ない」「ある」「まったく」がほとんどです。ですから、試訳の中に前者のような漢字が入っていると「この訳者は慣れていないな」と思います。そのあたりの感覚は、用字用語の基準がしっかりしている新聞を読んで養うのもいいでしょう」(山本さん)

また、海外在住で、住んでいる国の言語から日本語への翻訳を仕事にしている方も少なくないと思いますが、書籍翻訳者としてはそこにひとつ注意すべき点があると山本さんは指摘します。

「海外在住の翻訳者の方に意外と誤訳が多いのです。日本に住む翻訳者なら知らないからこそ納得いくまで調べるところを、ネイティブに聞いたから大丈夫と調べずに書いてしまったために誤訳することがよくあります。私たち日本人が日本語の作品を読んでも深く理解できない場合もあります。それは外国人でも同じで、ネイティブだからといって正しい説明をしてくれるとは限りません。それから、日本語力をアピールしたいと思うせいか、妙に難しい熟語や言い回しを使う方が結構いらっしゃいます。言葉は生きものですから、日本のドラマを観たり、読書も名作だけでなく最新ベストセラーも幅広く読むといった努力も大切だと思います」(山本さん)

スタッフの皆さん。左から2 番目が代表の山本さん