ご利用企業インタビュー

有限会社 シーライトパブリッシング

有限会社 シーライトパブリッシング独自の路線で設立9年目の翻訳専門出版社

有限会社シーライトパブリッシングは2005年に設立された比較的新しい出版社です。代表取締役の塚田隆志さん以下、スタッフは3名。新興、小規模な出版社だけに、業界の慣習にとらわれずさまざまな新しい試みにも挑戦しつつ、独自の路線で翻訳出版に取り組んでいます。

子どもの頃から本好きで、学生時代のアルバイトはいつも書店だったという塚田さん。いつか出版に関わる仕事をしたいという思いを持ち続け、長年携わってきたコンサルティング会社経営のかたわら、8年前に同社を設立しました。

「コンサルティングの仕事で資料としてイタリアの書籍を1冊翻訳しようとしたときに、せっかくだからその本を出版第1号にしようと思いました。ずっとコンサルティング会社と出版社の併業でコンサルティング業のほうがメインでしたから、スタッフからすると出版は社長の趣味に見えていたかもしれませんが、今年からは出版社の方に力を入れていこうと考え体制を整えました」(塚田さん)

これまでに手がけた書籍は全部で20冊。内訳は、理工系3冊、音楽3冊、観光2冊、文芸書12冊です。

「まずは理工系、音楽などの学術書から始めましたが、今後は文芸書や絵本を増やしていきたいと思っています」(塚田さん)

電子出版とPODをプロモーションに活用

同社が手がける本は現在、そのほとんどがイタリア語からの翻訳書です。

「最初に出版した本がたまたまイタリア語でした。弊社のような規模の小さな出版社は大手のように多種多様な本を出すことができませんから、絞り込んで特色を出す必要があります。アメリカ文化の輸入は既に十分行われていますし、日本が今後学ぶべきは歴史あるヨーロッパの文化であろうという考えから、まずは縁のあったイタリア語の翻訳出版を手がけました。次はフランス語を考えています。徐々に守備範囲を広げていきたいと思っています」(塚田さん)

また同社では2011年から電子出版やPOD(プリント・オン・デマンド)にも積極的に取り組んでいるそうです。

「電子出版とPODにはプロモーション的な意味があります。弊社で扱うのは日本で評価のかたまっていない作家がほとんどなので、どれくらいの売れ行きが見込めるかを読むのが難しいんです。そこで、まずは印刷ほどコストのかからないこれらのやり方で読者の反応を確かめ、評価がよければ紙の書籍でも出版する、といったことをしています」(塚田さん)

出版事業を続けるために、試行錯誤の末、なるべくコスト的なリスクの回避できるこのやり方にたどり着いたのだそうです。

版権は自社で取得、持込企画も歓迎

翻訳出版する作品は、イタリアの出版社や版権を管理するエージェントから送られてくる出版物リストから選んだり、翻訳者からの持込企画を検討したりして決めているそうです。

「英語以外の本は、まだ日本に紹介されていないものが多く、他の出版社と競合することも少ないので、版権交渉は日本の版権エージェントを通さずに自社で行っています。直接やり取りをしていると、新刊情報なども送られてくるので、まずはそれらの情報を検討します。また、翻訳者さん自身が訳したい本を持ち込んでくれるのも歓迎しています」(塚田さん)

翻訳は、知人を通して紹介された方や、アメリアで募集してリーディングを依頼した方のなかから作品に合う方を選び依頼しているそうです。

「語学力があっても翻訳力があるとは限りませんので、その点アメリア会員の方は優秀ですね。書籍の翻訳をお願いすると長期間のお付き合いになりますので、まずはリーディングなどをしていただき、日本語表現が原書の作風に合うか、また一緒に本を作り上げていくためのコミュニケーションが取れるかどうかなどを見させていただくようにしています。末永くお付き合いのできる翻訳者さんと出会えることを期待しています」(塚田さん)

わが社のここが自慢! 著者も翻訳者も新たに発掘

大手出版社と同じようなやり方をしても太刀打ちできない。なんらかの個性を打ち出して、名前を覚えてもらえる出版社にならなければ。そんな思いから、どのようなやり方が自社に合っているのか、試行錯誤を繰り返し、そのスタイルを確立していったと代表の塚田さんは言います。

「まず、原書の著者は日本で紹介されるのは初めてという方が多いのが特徴と言えます。英語以外の言語では、日本未発表の埋もれた名作がたくさんあると、実際にイタリアの書籍を手がけて確信しました。日本で既に人気がある作家の版権を大手と争うのではなく、日本の読者に受け入れられそうな新しい作家や作品を発掘して紹介することが弊社のような出版社の使命だと思っています」(塚田さん)

さらに、その作品を翻訳する翻訳者も新人の方や、あるいは実務など他の分野で活躍はしているものの書籍の翻訳は初めてという方が多いのだそうです。

「翻訳者の方にデビューの場を提供できているというのも、弊社の自慢のひとつかもしれません。ご自身で訳したい作品を持ち込んでいただくと必ず検討します。一緒に作品を作り上げながら出版社・翻訳者としてお互いに成長していければと思っています」(塚田さん)

スタッフからひとこと!

日本語表現のバリエーションを豊富に

原作の雰囲気に合う訳文を書く翻訳者を選ぶのは、編集者として腕の見せどころ。そんな編集者の立場から、翻訳を学習中の方へのメッセージをいただきました。

「日本語の表現というのは翻訳者の数だけあって、例えば同じ原文でも『川の清流が』、『川の清らかな水の流れが』と、違いが出てきます。どちらも正しいのですが、この作品にはどちらが合うのか、それを見極めることが編集者としては重要です。翻訳者としてキャリアの長い方の中には、こちらの希望・判断に合わせて自由自在に文体を使い分けることができる方がいらっしゃいます。日本語の表現にバリエーションがある方であれば、どんなジャンルの本でもそれに合った文体に仕上げてくれるだろうという安心感があり、仕事の依頼もおのずと多くなります。ですから新人の方にも、日本語の表現力を磨くことをお願いしたいですね。無理なお願いをすることもあるかもしれませんが、聞く耳を持って、こちらの意向をくみとって訳していただける方と、一緒に末永くやっていきたいと思っています。それから弊社では翻訳者さんからの持込企画も歓迎しています。やはりご自身で思い入れのある作品は、筆の乗りが違うようで、生き生きとした訳が上がってきます。そんな効果も期待しつつ、共に素晴らしい作品を世に送り出していければと思っています」(塚田さん)

〜同社から出版された最近の翻訳書〜

『時鐘の翼』『時鐘の翼』
ルカ・マサーリ著
久保耕司訳

第一次世界大戦の運命を変えようと100年先の未来からの介入が。イタリアを代表するSFエンターテインメントです。



『君はだぁれ?』『君はだぁれ?』
パオラ・マストローコラ著
川西麻理訳

アヒルに訪れた人生を哲学するような難問! 自分がだれかなんて、そんなこと、どうしたらわかるっていうの!?



『罪のスガタ』『罪のスガタ』
シルヴァーノ・アゴスティ著
野村雅夫訳

人間が本質的に抱える矛盾、そこから生まれる罪のスガタは……。作家であり映画監督でもある著者。「罪とは何か」を考えるきっかけとなる一冊。