ご利用企業インタビュー

久遠特許事務所

久遠特許事務所

奥山所長(後列中央)と翻訳部の皆さん。
後列左側が岡村さん、右側が村岡さん。
前列左から、佐藤さん、入江さん、河合さん。

日本経済の発展と共に90余年の歴史を誇る

 久遠特許事務所は今年で創業91年を迎える歴史ある特許事務所です。大正末期に創設され、戦後の日本経済成長期には国内で出願される特許数の増加にともない、事務所も大きく発展を遂げました。

 日本国内の特許出願数はその後も増え続け2001年にピークを迎えるのですが、それから後は日本経済の停滞、少子高齢化などを受け、減少に転じます。一方で国内企業が海外市場に目を向けるようになり、日本企業の海外特許出願が増えていくことになります。

 「弊社で扱う特許出願数も、かつては“日本企業の国内出願”“日本企業の海外出願”“海外企業の日本出願”がほぼ均等で1/3ずつでしたが、最近は総数は変わらないものの、日本企業の国内出願が減って、そのぶん海外出願が増えているという状況です」(所長奥山尚一さん)

 現在、所員は75人、うち弁理士が20人ほど。業界のなかでは中堅規模で、あらゆる技術分野をカバーしており、取り扱う特許件数は年間1200〜1300件ほどだそうです。そのうち日英・英日いずれかの翻訳が必要となるものが全体の7割近くを占めるといいます。

 「20年ほど前からネイティブチェッカーを所内に置いて、翻訳の質の向上に取り組んでいます。現在はネイティブチェッカー含めて所内翻訳部5人、外部の翻訳者6〜7人と、一部翻訳会社に依頼をして翻訳業務を進めています」(奥山所長)

翻訳の質の向上を目指してさらなる人員強化を

 所長の奥山さん自身、米国の大学で化学を学んだこともあり、日本に戻って特許の仕事を始めて、自分で翻訳やチェックをするようになると、特許翻訳はとても面白いと感じたそうです。15年ほど前からは特許翻訳講座の講師も務めるようになり、所内の翻訳の質の向上、翻訳者の育成などにも力を入れてきました。

 「ここしばらく他の業務に手を取られ、翻訳は所員に任せきりになっていましたが、いま改めて所内の翻訳体制強化に取り組んでいます。翻訳は外部の翻訳会社に依頼するよりも、所内の翻訳者が行ったほうが確実に品質管理ができ、質の向上につながると思うからです。翻訳部は現在5人、産休中の2人が復帰すれば7人になりますが、さらに人員を増やし、外部翻訳者も増強して、今まで以上に所内で翻訳できる体制を整えていきたいと考えています」(奥山所長)

 国際出願が増え始めた20年前に比べて、特許翻訳の品質は格段に上がってきているそうですが、それでもさらなるレベルアップが望まれると奥山さんはいいます。

 「特許翻訳というと出願のための翻訳と思われる方が多いかもしれませんが、実は権利を取得してからが大事なんです。日本企業はあまり訴訟をしませんが、万一訴訟になったときに権利行使できるかどうかは、特許明細書にどのように書かれているかがポイントになってきます。そのためにも誤認されるおそれのない正確な翻訳が重要なのです」(奥山所長)

技術や化学に興味があり学ぶ意欲のある翻訳者募集

 現在、久遠特許事務所ではアメリアのJOBを通して、オンサイトの翻訳者を募集しています。

 「外部スタッフとしてフリーランス翻訳者を採用するトライアルを実施することも考えていますが、まずは所内の体制強化が最優先事項です」(奥山所長)

 特許に関する翻訳には、大きく分けて2種類があります。特許庁に出願する書類である特許明細書の翻訳と、出願した内容に何か不備があった場合に特許庁とやりとりをする、いわゆる中間処理と呼ばれる書類の翻訳です。所内の翻訳者は、主に中間処理の翻訳を担当するそうです。

 「所員として採用する場合は、実務翻訳の経験がある方であれば、特許翻訳の実績は問いません。ただ、特許は非常に特殊な世界ですので、特許制度について本を読むなどして基礎的な知識くらいは身につけておいていただきたいです」(奥山所長)

 日本語でも普段はなじみのない言い回しが使われているのが特許関連文書の特徴とのこと。英語でも同様なので、特許翻訳についてもある程度の知識があるほうが望ましいといえそうです。

 「技術に関してのバックグラウンドは必要ありません。“高校のとき化学の授業が好きだった”“科学雑誌を読むのは面白い”というくらいの親和性があれば十分です。実際に仕事で弁理士や技術者とのやりとりを通して、知識が身についていきますから」(奥山所長)

わが社のここが自慢! 海外特許出願でお客様から高い評価

 日本企業の海外への特許出願には、長年にわたり力を入れてきたという久遠特許事務所。

 「小規模な特許事務所の中には海外出願は取り扱わないところもあります。中堅の事務所なら海外出願は必ずやっていると思いますが、大半を外部の翻訳会社に依頼しているケースも少なくありません。わが事務所は私自身が特許翻訳に早くから関心があったこともあり、かなり前からネイティブチェッカーを置いて、所内翻訳にも力を入れてきました。その甲斐あってか、お客様からも『海外特許出願で、実際に特許取得に至る率が高い』との評価をいただいています。今後もこの体制を強化していきたいと考えています」(奥山所長)

 分野についても、小規模事務所なら特定のクライアントの限られた分野に集中することになりますが、中堅・大手になるとクライアントも多岐にわたり、あらゆる分野の案件を扱うそうです。大手は取り扱い件数が膨大になるので、効率化のために仕事を細分化する傾向にありますが、中堅はそこまでは人員がいないため、弁理士も翻訳者もあらゆる分野・業務を手分けして担当することになるのだそうです。

 「スタッフは結果的に幅広い仕事の経験を積めることになります。それも言ってみればメリットですよね」(奥山所長)

スタッフからひとこと!

「特許にとってより良い翻訳を目指し、
日々取り組んでいます」

 現在、久遠特許事務所で所内翻訳者として働く5人の方に、特許翻訳の仕事の内容や仕事を通して思うことをお話いただきました。

 岡村さんは入所して約15年。主に、中間処理の日英・英日翻訳を担当しているそうです。

 「入所前に、特許翻訳の学校でひととおり勉強しましたが、入所後に仕事をしながら実践的に学べたことが大きいと感じています。中間処理は、書かれている指摘事項に明確に答えなければ特許が取得できないので、どう書き直せば発明者が望む範囲で特許が取得できるのか、発明者や技術者の方と相談しながら回答書を作っていきます。元々技術に興味があったので、技術者とのやりとりも、図面を見ることも楽しく、勉強になっています」(岡村さん)

 佐藤さんはフリーランスの時期も含めると約25年にわたり特許翻訳に携わっているベテラン翻訳者です。

 「長年、特許翻訳の和訳に携わっていたのですが、10年ほど前にこの事務所に来て、ネイティブの方にチェックしていただくようになり英訳のスキルを伸ばすことができました。以前は勉強のために海外の文献を読むなどしていましたが、日本人独特の癖が抜けずに、なかなかスキルアップできませんでした。ネイティブに直接チェックしてもらうことで、過不足なくシンプルな言い回しで原文の意図を正確に伝える英語表現が習得できたと、ありがたく思っています」(佐藤さん)

 そのネイティブチェックを担当するのは英語が母国語の村岡さんです。

 「皆さんの日英翻訳のチェックをしたり、英語原文や翻訳に関する質問に答えたりしています。例えば、ドイツ語から英語に翻訳された明細書には、英語の中にドイツ語が紛れて残っていたりするケースもあります。日本人翻訳者にはドイツ語だと見抜くのが難しいので、私がチェックをして正しく直します。また有機化学の専門用語には似たような単語が多く、間違えると致命的なので精査します。バイオなどの先端分野では辞書に載っていない新用語もたびたび出てきます。情報源を調べるなどして訳語を探るのも仕事です」(村岡さん)

 そして新人が2人。入所3カ月目の入江さん、2カ月目の河合さんはともに、特許翻訳会社から転職してきたそうです。

 「大学は英文科で、技術のバックグラウンドはありませんが、所内では法的な文書からコレポンまで、いろいろな英語に接することができ、仕事の面白さを感じています」(入江さん)

 「今は所長の指導の下、修業をしている最中です。特許翻訳にはどのような表現がふさわしいか、直接指導で身につけていくことができるので大変ありがたいです」(河合さん)