ご利用企業インタビュー

株式会社フォアクロス

多言語に対応できる日本語版制作会社


フォアクロスは日本語版制作を主な業務とする会社です。字幕翻訳や吹替翻訳も日本語版制作の一部ですが、それだけではなく、まず英語音声の映像があった場合、日本語版にするには字幕か吹替か、用途や予算を考慮して提案するところからスタートし、翻訳はもちろん、吹替の場合は声優の手配、演出、収録から編集まで、すべてを請け負っています。

株式会社フォアクロスとしては、2004年10月にスタートしましたが、前身はヴイ・ビジョンスタジオという技術部門を持つポストプロダクション(映像作品の最終の制作を行う)の中に1997年に誕生した日本語版制作部でした。ちょうどCSの放送局が相次いで開局された頃で、需要増加を見込み新設された部署でした。ただ、日本語版制作を手掛けている会社は既に多数存在したため、他社との差別化を図るために英語以外の言語、例えば中国語や韓国語、アジア言語、ヨーロッパ言語など多言語に対応できるという特色を打ち出し業務を拡大してきました。手がけた作品の中には、日本でも大ヒットしたタイ映画『アタック・ナンバーハーフ』などがあります。

その後、映画やドラマだけではなく、ドキュメンタリーやゲーム、テレビショッピング番組、企業ビデオなど、言語やジャンルを問わず仕事の幅を広げてきましたが、時代の流れによりインターネットコンテンツなど、柔軟な対応が求められる作品が増加してきたため、制作部門に特化した会社として、ヴイ・ビジョンスタジオから分社独立し、フォアクロスが誕生しました。

創設当初より多言語に対応できることにこだわりをもってきたフォアクロス。業界でも有名で、多言語の依頼が数多く舞い込むそうです。

最近手がけた仕事をいくつかご紹介いただきました。写真のDVDはスウェーデンのアニメ『おばけのラーバン』です。スウェーデンでは3歳の子どもも知っている国民的人気番組で、日本でも絵本が発売されています。稀少言語からの翻訳の場合、英語の対訳や字幕の台本を使って翻訳し、オリジナル言語のニュアンスと変わってしまう作品も見られますが、『おばけのラーバン』の吹替版ではスウェーデン語の翻訳者が担当しました。

他にもフランスのミステリーやドイツのアクション映画、中国のドラマシリーズ、イタリア、オランダ、ロシア映画など各国語の作品を手掛けています。

英語以外で最も多いのは韓国語だそうです。これはもうブームの域を超えて、ひとつのジャンルとして確立された感があるとのこと。映画やドラマ、最近はドラマの中でも歴史ドラマが増えてきており男性視聴者にも人気だとか。他にも、スターの素顔が見られるバラエティ番組やイベントの映像、音楽番組などの需要もあります。また、日本語版だけでなく、日本語の作品に外国語の字幕や吹替をつける仕事も増加の傾向にあるそうです。

「洞爺湖サミットで上映された、日本の文化を紹介するドキュメンタリー映画の英語版制作を手がけました。日本独特の文化が描かれているので、原文のニュアンスを正しく理解する日本人翻訳者と、英語ネイティブとのチームで翻訳にあたりました。また外務省が制作したアニメーションの英語・中国語・韓国語・ロシア語の吹替翻訳も担当しています」(新井氏)

翻訳者は日本語制作チームの一員

現在、登録翻訳者は約140名います。多言語に対応可能なことを強みとするフォアクロスでは、当然ながらさまざまな言語の翻訳スタッフを抱えることが、重要なことのひとつとなります。アメリアを通して、また自社HPを通して、翻訳者は随時募集。書類選考を通過し、トライアルに進んでいただく方が一定数集まった時点でトライアル説明会を開き、直接顔を合わせて課題を渡します。自宅で翻訳をして、出来上がった原稿を持ってきていただき、その際に面談を行います。トライアルの開催は不定期ですが、毎年3回程度行っています。

「私たち制作の仕事は、ただ翻訳して終わりではなく、日本語の完成版を作るところまで全工程を含みます。翻訳者さんにも、制作チームの一員であるという意識を持って仕事をしていただきたいのです。自分の訳に固執しすぎることなく、チームの他のメンバーや、クライアントの意見を原稿に反映させ、柔軟に対応してまとめ上げる。そのためには、コミュニケーション能力も重要と考えます。ですから、たとえ短い時間でも仕事を始める前に一度は直接会ってお話をしておきたいと考え、ご足労いただくことをお願いしています。遠方の方で、お越しいただくのが難しい場合は、電話でお話しさせていただくこともあります」(取締役/プロデューサー新井有美氏)

同社ではだいたい年間の応募が200名ほど、そのうち書類選考を通過してトライアルに進むのが20〜30名、合格者は年間で10名程度です。

映像翻訳のルールが学べる養成講座を開講

書類審査では、これまでの作品履歴などを重視します。やはりすぐに仕事をお願いする場合、映像翻訳の十分な実績があることが必須条件になります。ただ、実務に通用する語学力を持ちながら、映像翻訳に関する知識がないために仕事ができない方も大勢いるだろう、との考えのもと、新たな人材を発掘する目的で2005年より映像翻訳者養成講座を年に3回ほど開催しています。

「特に英語以外の言語の場合、分野を区切らず仕事をしたいという方は多いはずです。例えば、中国語翻訳者で日頃は書籍や実務の翻訳をしているが、映像翻訳のルールも習得したい、といった方です。ただ、あくまでも学校ではなく、映像の仕事が始められるように映像翻訳のルールを学んでいただくためのコースですから、語学力、翻訳力はすでにお持ちの方を対象としており、原文読解などは含まない多言語混合のクラスです。2カ月7回( プロクラス)で修了後はトライアルを受けていただきます」( 新井氏)

映像翻訳の経験がなくても、稀少言語の翻訳者として実績があるという方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。

例えば、“Thank you.”という台詞が出てきたとき、皆さんならどのような訳を付けるでしょうか。シチュエーションやキャラクターによって、さまざまに訳し分ける必要があります。「すみません」という場面もあるでしょう。「ご苦労かけます」というのがふさわしい人間関係もあるかもしれません。男同士の友情の場面では「恩に着る」だったり「感謝する」だったり。スピーチの最後の決まり文句なら「以上です」や「終わります」でしょう。常に、この場面で求められているのはどういう台詞なのかを考えながら訳さないと、ワンパターンで面白みのない翻訳になってしまい、原文のニュアンスもうまく伝わりません。映像翻訳には自分で理解した内容を的確にアウトプットできる日本語表現力が求められるのです。

女性の翻訳者が年配の男性の台詞を訳すとぎこちない文章になってしまったり、固い台詞は上手でも子供の台詞がわざとらしくなってしまったり、苦手な部分が見えてしまう翻訳者さんもいますが、プロであればさまざまなキャラクターの台詞に対応する必要があります。映像翻訳、特に情報量が限られる字幕の場合、細かい情報は省いたとしても観終わった時に原語で観たのと同じ感覚が残るように表現することを目指してほしいと思います。

語学力を磨くだけではなく、いろいろな年代の人と会話したり日本のドラマや映画の台詞を研究して語彙を収集するなど、表現力の幅を広げることも大切だと思います。