ご利用企業インタビュー

株式会社飛鳥新社

創業38年、斬新な切り口で数々のベストセラーを生み出す

 飛鳥新社は1978年創立の出版社です。趣味・実用、ビジネス、自己啓発、エッセイ、ノンフィクション等々、幅広いジャンルの書籍を出版しています。

 同社初のミリオンセラーとなったのが1992年発行の『磯野家の謎』です。他にも、99歳の詩人柴田トヨさんの詩集『くじけないで』、自己改革エンタテインメント小説「夢をかなえるゾウ」シリーズなど、ユニークなジャンルでミリオンセラーを出してきました。

 翻訳書の出版も創業間もない頃から手掛けてきました。エボラ出血熱について書かれた1994年発行のノンフィクション『ホット・ゾーン』、セックスについて女性みずからが書いた『ジョアンナの愛し方』など、数々のベストセラー本が誕生しています。

 「一般的な小説のジャンル以外のものは何でも手がけるのがわが社のスタンスです。和書、翻訳書ともに、ちょっと変わった切り口でマスコミが取り上げてくれるような本、時代を先駆けるテーマの本など、平たく言えば常にベストセラーを狙った本づくりをしています」(出版部第二編集副編集長 矢島和郎さん)

翻訳書、和書と分けずに、ただ読者に求められる本を

 年間の出版点数は60〜70点、そのうち10冊前後が翻訳書です。

 「翻訳書だけを扱う部署というのは特にありません。編集者の中に私を含めて3、4人、翻訳書も担当する者がいます。例えば私の場合は、年間8冊ほど担当しますが、そのうちの3、4冊が翻訳書です」(矢島さん)

 翻訳出版のための原書探しは、エージェントからの情報、春秋の海外ブックフェアが中心だそうです。

 「付き合いのある翻訳者さんに原書をご紹介いただいて出版に至ったケースもあります。最近は日本の著者が充実してきており、あえて翻訳書でなくてもいいという風潮が読者にも編集者にもあるように感じますが、しかし海外の本は、時間を掛けて事例を集めしっかり書かれているものが多い印象もあり、ノンフィクションやビジネス書のジャンルでそういう良い原書があれば、日本の読者向けに編集して出せればいいなと思っています。最近は英語以外の本にも注目が集まっているので、弊社でも北欧のビジネス書を翻訳出版しましたが、そういう英語以外の原書情報も歓迎です」(矢島さん)

ベテランから新人まで、翻訳者は実績にあわせて登用する

 翻訳出版は年間10冊前後、検討のためのリーディングは年間50冊以上を依頼しているそうですが、翻訳者、リーダーはどのように決めているのでしょうか。

 「リーディングは2パターンあって、出版が決まったら翻訳をお願いしたいと思っている人に依頼するケースと、公平に本の良し悪しを判断してほしいので翻訳はお願いしないことを断ったうえでリーディングのみを依頼するケースです。どちらが適当か、その都度判断しています。翻訳も大きく分けると2パターンですね。売れている本を出している翻訳者さんを日頃からチェックしていて、本のテイストに合う方に依頼するケース。弊社とお付き合いのない方でも、ホームページをお持ちでしたら、そこから連絡が取れますし、既訳書の出版社に問い合わせて教えていただくこともあります。もうひとつは、そのジャンルの日本の著者の方に監修をお願いするケースです。日本人読者に向けて、大幅に編集を加える作品もありますので、その場合は監修者を付けて、翻訳者さんには編集のベースとなる翻訳をお願いするというかたちです。その場合、翻訳者さんの実績は気にしませんので、1冊訳すのはこれが初めてという方も多いですね」(矢島さん)

わが社のここが自慢! 見たことのないユニーク本で大ホームランを!

 間もなく創業40周年を迎える飛鳥新社。中堅どころの出版社ですが、ベストセラーになった本の名前を聞くと「あぁ、知ってる」「それなら持ってるよ」という方も多いのではないでしょうか。

 「出版社にはそれぞれ特色があり、編集者はその方針に沿って企画を立て、本づくりをします。弊社の場合は『今までなかったもの』を世に送り出すことを目指しています。もちろん、いつもうまくいくわけではありませんが、当たれば10万部以上売れるような本ですね。その条件を満たしていれば、和書か翻訳書かということには、まったくこだわっていません」(矢島さん)

 同社のホームページを見ると、その言葉のとおり硬軟おり交ぜて、ユニークなタイトルの本が並んでいます。翻訳書で最近矢島さんが編集を担当した『おやすみ、ロジャー』もそのひとつです。

 「この本のことは昨年夏にエージェントの紹介で知りました。自費出版でありながら、英語版が欧米で軒並みアマゾン総合ランキング1位を取った話題作で、版権取得は7社競合でしたが、弊社が版権を得ることができました。まさに、今まで見たことのない、わが社が出すべき本だと思いました」(矢島さん)

 『おやすみ、ロジャー』は、眠りたくても眠れないうさぎのロジャーが、だれでも眠らせてくれる「あくびおじさん」のもとを訪ねるというストーリーの絵本です。

 「これは絵本の体裁ではありますが、読んで聞かせると子どもが眠くなる仕掛けが満載で、その意味では実用書でもあります。日本語にしたときに、その眠くなる仕掛けがうまく機能しなくなっては困りますので、言葉選びには気を使いました。睡眠のスペシャリストの方に監修をお願いして、例えばsleepは「寝る」よりも「眠る」のほうが語感がいい、「疲れた」よりも「くたくた」のほうが感じが伝わる、というように訳語を選んでいきました。お陰様でテレビや雑誌でも紹介されて、着実に売上を伸ばしています。10月に朗読CDを発売し、来春にはシリーズ2冊目も発売の予定です」(矢島さん)

 とにかく面白い本を、日本人読者に伝わるように編集して届ける。ベストセラーという明確な目標を掲げ、常に大ホームランを目指して本づくりをするのが同社のスタイルだそうです。

スタッフからひとこと!

読みやすさか正確さか、
何を求められているかを見極めて

 日本人読者に伝わることをいちばんに意識して、ときには超訳並の編集も辞さないという同社。編集の矢島さんに、本づくりのパートナーである翻訳者に求めることを聞きました。

 「特に実用書や自己啓発、ビジネス書などは、なるべく読みやすくしてくださいとお願いすることが多いですね。腕のいい翻訳者さんは、特に何の指示をしなくても、原文に沿いつつ流れるような日本語にしてくださるので、ほとんど編集することなくそのまま出版することになり助かります。一方で、大幅な編集をしないと著者の真意が伝わらないと判断した場合は、それも厭いません。原文の意を理解したうえでの超訳も歓迎です。ただ、翻訳者さんの中には原文を大事に考えて、超訳まではできないという方も少なくありません。こちらとしても読みやすさ重視の一方で、原書に何を書いてあったか知りたいところもありますので、当たり前の話になってしまいますが、正確に訳すことも大事だと思っています。その場合は、翻訳者さんにはとにかく忠実に訳してもらい、削除や加筆などの編集作業は編集者がするという分担作業になります。そのような編集方針をご理解いただき、出版社、編集者が目指すところをくみ取ってうまく翻訳していただけると助かります」(矢島さん)