ご利用企業インタビュー

株式会社アイティエルエス

※情報誌『Amelia』2017年のインタビューです。

株式会社アイティエルエス
IT分野の最新テクノロジーに関する翻訳をメインに

 株式会社アイティエルエスは設立2011年と比較的新しい会社ですが、中堅システムインテグレーター企業の翻訳事業部に所属していたメンバーが中心となり、クライアントを引き継ぐかたちで業務をスタートさせました。そのため、ベテラン社員は翻訳業務に携わって30年以上、メインのクライアントは20年以上の付き合いという安定した会社です。

 社名のアイティエルエスは「ITLocalizationService」の頭文字。社名が表すとおり、メインとする分野はITで、英日を中心に日英も手がけています。

 「昨年あたりから、よくご依頼を受けるようになったのがAI(人工知能)がらみの案件です。お客様の扱う商品やサービスにAIが組み込まれるようになり、その仕様書やユーザーインターフェイスなどの翻訳依頼が増えてきました。IoT(モノのインターネット)もトレンドです。また、セキュリティ関連は新たな技術が次々と生み出されている分野なので、安定して多くのご依頼があります。文書の翻訳だけでなく動画の字幕の翻訳が増えてきているのも近年の特徴です。企業が製品の紹介にYouTubeを使うようになってきており、昨年あたりから依頼が来るようになりましたが、今後はさらに増えていくのではないでしょうか」(翻訳事業部プロジェクト・マネージャー白濱祥子さん)

一般ユーザーにもわかりやすい翻訳を

 最近、依頼が増えてきたというAI関連の翻訳について、もう少し詳しく教えていただきました。

 「AIとは、コンピュータに蓄積された膨大なデータをコンピュータ自らが分析し、理解し、学習し、最適な解を導き出すテクノロジーです。ただ、AIの技術的な仕組みの部分は各企業のトップシークレットなので翻訳の対象ではありません。翻訳の依頼があるのは、AIを使って提供されているサービスに関する内容です」(翻訳校閲担当倉田朋彦さん)

 例えば、人間の医師が導き出せなかった患者の病名を、コンピュータが膨大なデータを元に導き出したり、企業のカスタマーサービス部門では、お客様からの問い合わせに対してコンピュータが最適な回答を返したり、といったものがあるそうです。

 では、新しく登場したAI関連の翻訳をするにあたり、翻訳者が注意すべきはどのような点でしょうか。

 「今までは、エンジニアやプログラマーなどその分野のプロが読むものが多かったのですが、さまざまなものがAI化したことにより、一般ユーザー向けに書かれたマニュアルやマーケティング文書などを訳すことが増えてきました。読み手がITに詳しい人なら専門用語はカタカナ語にすればよかったところを、一般の人向けには場合によっては用語の説明を加えるなど、わかりやすくする工夫が必要になってきます」(倉田さん)

IT分野に強い翻訳者を常時募集

 社内スタッフは、コーディネーターが5名、翻訳やレビューをするチームが10名の体制です。常に稼働している在宅の翻訳者は、約30名ほどだそうです。

 「レビューは基本的に社内で行っており、対応できる者がいない英語以外の言語の場合のみ外部スタッフに依頼しています。翻訳は登録翻訳者の方にお願いしますが、最近はソフトウエアの細かな更新など、分量が少なく納期の短い案件が増えており、そういうものは社内で翻訳します」(白濱さん)

 在宅翻訳者はアメリアのJOBや同社のサイトから募集しているそうです。

 「応募書類を確認して、翻訳ツールを使用でき、IT系の経歴をお持ちで弊社からお願いする仕事がありそうな分野の方であれば、すぐにトライアルをお願いします。弊社ではあまり扱いのない分野や言語の方であれば、書類選考で合格した方を登録させていただいて、案件が発生した際に改めてご相談させていただいています」(白濱さん)

 またオンサイトのレビュアーの募集も随時行っているそうです。

 「レビューと翻訳は同一チームが行っています。レビュアーの仕事から始めていただきますが、ゆくゆくは翻訳もできるようになっていってほしいと思っています」(白濱さん)

わが社のここが自慢! 翻訳者は大事な存在、長くつきあえる関係に

 最終的な翻訳品質を左右するレビューの工程が非常に重要と考え、同社では社内スタッフが行うようにしています。そして、レビュアーにはもう一つ重要な仕事があるそうです。

 「それは翻訳者へのフィードバックです。翻訳者が納品した訳文とレビュー後の違いを分析して、どのような傾向があったかなどを翻訳者へフィードバックするようにしています」(白濱さん)

 フィードバックは納品が終わった後に行うそうです。時間を取るのもなかなか大変でしょうが、同社では翻訳者との重要なコミュニケーション手段であり、翻訳品質を上げるうえでも欠かせないことと捉え、実践しているといいます。

 「フィードバックをお送りすると『もらえないことが多いので、ありがたい』とおっしゃって、詳細に確認してくださり、質問を返してくださる方もいます。そういう方には特に積極的にお送りするようになりますね。それから、お客様からのコメントは『よく調べてくださって、ありがとうございます』という簡単な感想のみであっても、翻訳者に必ずお伝えします。喜んでいただけますし、もっと良い仕事をしようというモチベーションにもつながると思いますから」(白濱さん)

 フィードバックの結果、翻訳者の訳文に成長は見られるのでしょうか。

 「そうですね、人によって違いはありますが、フィードバックを返した結果、そのクライアントの希望に近い訳文が上がってくるようになる翻訳者もいます。それはクライアントにとっても、弊社にとっても、翻訳者にとってもうれしいこと。フィードバックは確かに手間が掛かりますが、翻訳者を大事にし、長く付き合っていくことは弊社にとってとても重要なことですから、今後も続けていきたいです」(白濱さん)

スタッフからひとこと!

二人三脚でクライアントの要望に応えたい

 最近は、ITについて詳しくない一般読者向けのコンテンツが増えているというIT翻訳。これに対応するために求められる翻訳者のスキルは一段と高いものになっているとプロジェクト・マネージャー(PM)の白濱さんは言います。

 「これまで翻訳者は、読みやすさよりも正確さやスピードが最優先の技術者向けの文書を翻訳支援ツールを使って大量に訳す方と、読みやすさ重視のマーケティング系翻訳をする方に分かれていて、それぞれの適性にあった案件をお願いしていました。ところが最近は『ツールを使って大量に、しかも一般読者向けだから読みやすく訳してほしい』という案件が増えました。翻訳者には、自分が苦手な部分(前者は読みやすさ、後者はツールの使用)を勉強してスキルアップしていただきたいです」(白濱さん)

白濱さん

 翻訳者の負担が大きくなる分、PMとしてできる限りのサポートをしていきたいと白濱さん。

 「われわれPMの仕事は、翻訳者にできるだけ翻訳に集中していただけるように翻訳まわりの準備をすること。質問があったら即座に回答して、翻訳者がストレスを感じずに仕事を進めていただけるようにと考えています。翻訳者から納品される訳文の質が上がれば、社内での後工程の負担が大きく違ってきます。翻訳者には、翻訳の質を上げるために時間を使ってもらえるよう、できる限りのサポートをしたいと思っています」(白濱さん)