ご利用企業インタビュー

株式会社映画公論社

エンタメ系の日本語字幕を中心に幅広く対応

 株式会社映画公論社は 1999年創業の日本語版制作会社です。代表取締役の郷真佐美さんは、大手の映像プロダクションや字幕制作会社に勤めた後、独立して同社を立ち上げました。

 「ジャンルは、映画、ドラマ、アニメ、ドキュメンタリーから、最近、依頼が増えてきた企業 CMや経済ニュースまで、映像作品であれば何でも手がけます。媒体も、劇場、テレビの地上波、BS・CS、DVD、インターネットなど、多岐にわたります。字幕と吹替はどちらも対応していますが、得意としているのは字幕で全体の9割を占めています」(郷さん)

 最近、依頼が増えたという企業CMや経済ニュースとは、どのような内容なのか聞いてみました。

 「企業CMの仕事は、海外で作られた大手メーカーの製品CMを、日本のユーザーに向けてYouTubeで流すために日本語字幕を付けるというものです。経済ニュースのほうは、地上波やBS・CSの経済専門チャンネルで流す映像に字幕を付けます。1本あたり数分程度と短いですが、現在は毎月300本あまり受注しています。ただ全体量としては映画やドラマのほうが圧倒的に多く、全体の8割がエンタメ系です」(郷さん)

 ほとんどが英日翻訳だそうですが、数は少ないものの最近は日本語から他言語への依頼も増えてきているといいます。

 「日本のアニメ作品を世界に向けて発信するために、サンプルとなる1話分を英語あるいは中国語や韓国語、ヨーロッパ言語などにする仕事です。現在は全体の1%にも満たない量ですが、今後増えることを期待しています」(郷さん)

需要増加の今はデビューのチャンス!

 同社のスタッフは、オンサイトと在宅勤務をあわせて現在12名です。社内スタッフは全員ディレクターですが、なかには翻訳者志望の方もいて、数名はディレクション業務に加えて翻訳もしているそうです。登録翻訳者は、常時稼働している方が30名ほどだということです。

 「弊社の登録翻訳者だけでは受注をこなしきれないので、一部、外部の翻訳会社に翻訳からチェックまでを依頼して、社内では最終チェックのみを行う案件もあります」(郷さん)

 登録翻訳者の新規採用は、必要に応じて、アメリアWebサイトの「求人検索」で求人募集をしたり、付き合いのある翻訳者さんに若手の方を紹介してもらったりしているそうです。

 「ここ数年は、動画配信サービスが盛況で需要が増え、映像翻訳者は仕事が手一杯の方が多いようで、求人を出しても以前ほど応募がありません。今は新人の翻訳者の方にとっては仕事を得る大きなチャンスの時期だと思います。弊社でも、以前より少しハードルを下げて採用していますから。ただし、仕事を得られたからといって安心はできません。フィードバックを次の仕事に反映し、実力を伸ばしていってくれることを期待しており、半年経っても最初と変わらない出来映えであれば、見込みがないと考えて次の新人を探します。いずれ動画配信サービスの需要も一段落するでしょうが、翻訳者として生き残れるかどうかは、それまでにどれだけ実力を伸ばせるかにかかっています。これは中堅やベテランの方も同じこと。常に選ばれる翻訳者であるために、今こそ切磋琢磨していただきたいと思います」(郷さん)

新人大歓迎、仕事をしながら腕を磨いてほしい

 新規に登録翻訳者を採用する際には、書類選考後にトライアルを実施しています。トライアルは 5~10 分ほどの短い映像の翻訳を実際に作ってもらいます。

 「採用か不採用かは、だいたい最初の1分ほどを見るとわかりますね。基礎となる英語力はもちろん、それに加えて字幕を作るセンスが必要です。これまで数多くの方の字幕を見てきましたが、英語力が高いからといって字幕翻訳がうまいとは限りません」(郷さん)

 実際に新人採用を担当しているディレクターの角田敏之さんはこう言います。

 「実績は重視していません。以前、翻訳者さんからの紹介で6名の方にトライアルを受けていただいたことがありましたが、そのとき合格して今も仕事をしていただいている2名の方は翻訳学校で勉強を終えたばかりのまったくの新人でした。他に実績のある方もいましたが、合格にはなりませんでした」(角田さん)

 「実績の有無で違いがあるのは、仕事のやり方に慣れているかどうかの部分です。確かに、実務経験のない新人と仕事をするのは、ディレクターは教えなければならないことが多く大変ですが、何回か仕事をすれば皆さんきちんと覚えてくれるので問題ありません。ただ、翻訳者としてのセンスの部分は、翻訳者自ら磨いていただかないと、我々ではどうすることもできません。新人であれ経験者であれ、翻訳のセンスのある方を見いだしていきたいと思っています」(郷さん)

ここが自慢!

依頼を断らず、どんな仕事もきっちりと対応する

 社員12名という小さな規模の会社でありながら、毎月の取り扱い本数は約1000本もあるという同社。

 「このところ、動画配信会社からシリーズもののドラマをまとめて数十話から、多いときには100話以上の依頼がくるケースが増えています。また、数年前から手がけている経済ニュースの字幕翻訳は1本あたり数分と短いですが毎月300本以上を受注していますので、合計すると毎月1000本以上を扱っていることになります」(郷さん)

 営業スタッフは1人もおらず、自社をアピールするホームページも持っていないという同社。にもかかわらず、これだけ大量の案件を毎月コンスタントに受注している、その秘訣はどこにあるのでしょうか。

 「秘訣というわけではありませんが、1人1人のスタッフがしっかりしてくれているところがうちの強みだと思っています。新人が入社してきたら、まずはアシスタントとして先輩に付かせて、ディレクターとして一人前になるまで先輩が細かく指導します。社内で翻訳するものは基本的に2人でダブルチェックをしますし、外部の翻訳会社に依頼したものも、きっちりチェックします。仕事によって単価に違いはありますが、単価が安いから工程を省いたり、かける時間を短縮したりするといったことはしません。言ってみれば、町の食堂と同じです。美味しいものを作っていればお客さんは自ずと集まって来るものでしょう。当たり前のことを愚直にこなしているだけ。でも、その当たり前のことをきっちりと行っている会社が少ないということかもしれません」(郷さん)

 そして、基本的に依頼された仕事は断らないことを信条としていると郷さんは言います。

 「これまで18年間で断った仕事は10本ないと思います。これが最大の営業かもしれません。どんなに単価の安い仕事でも、断らずにきちんとこなせば、必ず次につながりますから。これはフリーランスの翻訳者にも通じるところがあるのではないでしょうか。どんなに厳しい条件の仕事でも、毎回頑張って受けてくれる翻訳者には優先的に仕事を出したいと思いますし、その人から『今、手が空いている』と連絡があれば、何とか仕事を見つけてでも依頼したいと思うものです」(郷さん)

スタッフからひとこと!

何を求められているかを考え、翻訳に込める

 毎月1000本もの作品の日本語版制作を行っているという同社。次も依頼したくなる翻訳者はどういう人か伺いました。

 「クライアントの依頼により成り立つ仕事ですから、どんなによい字幕を作ったと思っても、それが自己満足では意味がありません。逆に、自分は気に入らなくても、お客様が欲しいというものが出来上がっていれば、仕事として合格です。『お客様のご希望ですからこうしてください』と伝えたときに、柔軟に対応していただける人であることは重要だと考えています」(郷さん)

 「メールの返信が早い人。24時間経っても返事がない人は、仕事をするパートナーとしては選びません。メールを送って数分後には携帯から『わかりました。出先なので帰ったらすぐに確認します』と返信してくる人も増えています。納品後の急ぎのチェックなどが発生した時のことを考えると、常日頃からメールの返信が早いことは重要なポイントなんです」(角田さん)

 最後に、映像翻訳の需要が増えているこの好機に仕事を得ることができた新人翻訳者にアドバイスをいただきました。

 「仕事をしながら成長していくためには、しっかりチェックバックをもらって見直すことが一番だと思います。学生の頃のテストと同じ。チェックの入らなかったところは忘れてもいい。なぜ直されたのか、どういう訳が求められていたのかを考え、理解することが重要です。チェックバックがなかったら、自分から『最終納品、どうなっていますか』とメールをすればいいでしょう。データを送ることはそれほど手間ではありませんから、よろこんでお送りします。学びたいという姿勢のアピールにもなると思います」(角田さん)