【アメリア】第5回ジョーク翻訳コンテスト

第5回ジョーク翻訳コンテスト with 翻訳お料理番  


:どうもどうも! 情報誌『Amelia』の「翻訳お料理番」でアシスタントを務めておりますで〜す。

君の後始末役のJoshuaで〜す。

:なんですと? それにしてもジョーク翻訳はWebでもものすごい参加数でしたね。

:内容もそれほど難しくなかったからな。解釈を間違えていた人は恐らく一人もいなかったぞ。



車の扱いにはくれぐれも慎重にあそばせ!

:冒頭のA man drives to a gas station…を「車に乗った男」と訳していた人が多かったな〜。

:え、それが何か……ハッ、まさか自動車ではなくリヤカーとか?

(バシッ!)アホッ、リヤカーがなんで給油すんだよっ! もちろん、男は車に乗ってるんだよ。でもガソリンスタンドに来る人間としては当たり前の情報だから、男の特徴のような形で訳すと、何かの犯人の目撃証言のようになってしまう。

:イダーッ! いつもより手が早いのはWeb版だから? つまり「男が車でやってきて」程度に抑えておくということですか。

:そう、もしくは、車に乗っていることは後の文でも明らかになるのだから、ここでは車を訳出しない手もある。上位20位の人たちはそこら辺をうまく処理しているね。

:ペンギンの助数詞についてのツッコミいや、コメントは多かったですね。

:確かにペンギンは「羽」なんだけど、「匹」となっていてもジョークそのものに影響はないわけだから、致命的な欠点のように責めるのは可哀想。

:あら、お優しい。でもレーティングする側としては、「2匹」とされていると「ちょっと一言よろしいかしら?」なーんて、デヴィ夫人になってしまうのもわかる気がします。

:まあね。それじゃ、「匹」としてしまった人はどうぞ、お気を付けあそばせ!

:男と店員のセリフなんですけど、店員の口調がカジュアルなものと丁寧なものに分かれてましたね。

:カジュアルにしたのはきっとWhat's up…とかHey, なんてあるからだろう。でも、それを意識して日本語にすると、カジュアルのつもりでも無礼になってしまうことが多い。

:文面からして、この二人は顔見知りって感じしないですもんね。

:だから店員の口調は丁寧にした方がいい。日本では店員は客に対して基本的に敬語を使うだろ。男の口調は店員ほど制限しなくてもいいと思う。紳士的でも、下町のおっちゃん風でも。

:男のセリフ、I found themを「拾った」と訳すのに異議を唱えている人もいましたが。

:男はペンギンたちを犬猫と同じペット感覚で見ていて、飼う気マンマンなのだ。だから「拾った」が最も適切な訳じゃないかな。

:単純に「見つけた」とするのはどうですか。

:うーん、「見つけた」だと男に積極性のようなものを感じてしまう。男にはそんなつもり全くなかったんだから。

Hey, that's a good idea. のところで「おう、そりゃ名案だな」が誤訳じゃないか、というコメントがありましたが。

:ホワーイ?「名案っていうほどのもんじゃないだろう」という意味で誤訳だと思ったのかな。訳者の名誉のためにも一言、誤訳というほどのもんじゃありませーん。さて、この後のsays the man in the car and drives away. で気になった点があるのだが、私もちょっと一言よろしいかしら?



男が走り去る。その時、車は?

:え、こんなところでですか。クンクンクン、でも夫人、何にも匂わねーですぜ。

:ちょっと、あーた、お下品な方ね〜って何をさせるんだ。(バシッ!)また車にまつわることなのだが、「男はそう言うと、走り去った」としていた人が多かった。

:イッター、自分から始めておいて……。何か問題があるのですか。

:翻訳されたものしか読んでいない人でも、話の流れから男は車で走り去っていったと解釈してくれるだろう。でも、やはり車で来た男が車で走り去るとは限らない。車を置いて行くことだってあり得るわけだから。ここは「男はそう言うと、車で走り去った」とちゃんと「車」も訳出すべき。

:第8文、the penguins are still in the back seat of the car.stillを「まだ」としていた訳文が多かったです。なんだかペンギンたちはずーっと後部座席に座っていたような印象を受けるのですが。

:んなワケないんだけど、君の言うこともわかる。「まだ」には同じ状態が中断されることなく継続しているという感じがするからな。ここは「前日同様」とか「また」というように訳語を少し工夫すると違和感を解消できる。



動物園に行ったペンギンは?

:それでは最後の文。Oh, I did.And we had a …を1つのセリフとしてつなげてみました。

:オチの前に一呼吸置きたいから、Oh, I didで一度切った方がいいな。

:了解。we had a swell time. というのは「とても楽しかった」というような感じでいいですか。

:それだと楽しんだのは男だけという風にもとれる。ここは最も大事なオチの部分。we、つまりペンギンも一緒に楽しんだということがわかる訳にしなくてはこのジョークの可笑しさが半減してしまう。ランキング5位のf0_0yさんの「こいつらも喜んじゃってさ」、16位のYUKKAさんの「こいつらと思い切り楽しんできたさ」はいいね。

:15位へちまさんの「こいつらも最高に盛り上がってた」はどうですか。

:動物園に行って「盛り上がった」という感想は耳にしたことないけど、光景を想像したら笑ってしまった。

beachは「海」「海岸」「ビーチ」と分かれてました。

:ペンギンが海で人間と行楽しているということを伝えるには「ビーチ」とするのが一番じゃないか。

:ここで、店員は男がペンギンの処置に困っていたのではなかったということに気付くわけですね。

:そういうこと。



タイトルは読者の興味を惹き付ける程度に

:タイトルはどういう風に訳すといいですか。

○○ go to □□は、『スミス都へ行く』など、主人公の訪問先で一騒動という話の定番タイトル。だけど、このジョークのタイトルは、goが主体性の無いものを主語にする場合もあるという点に妙味があるのだと思う。

:??? えーと、Fは「ペンギンと動物園に行こう!」としてみました。

J:ウォッホン、たとえば、the box goes here. が「そこの箱、ここに置いて」という意味になるのは、boxgoするのは人間の主体的行為によるものだということが前提になっているのだ。このタイトルも、処分に困った人間がペンギンの意志に関わらず動物園に連れて行くという意味で読める。でも、オチを知ってからタイトルを見ると、ペンギンが楽しく遊びに行くという意味で読めるわけ。

:では、の訳でもオッケーということですよね!

君のはネタバレ度が強い。「動物園に行こう!」だったら処分ではなくなってしまうからオチを先取りしている。散らつかせる程度なら、興味が増すけど。ジョークはオチの場面にくるまで、読者の興味を惹き付けておかなくてはならない。チラリズムの精神だよ。



勢いで言葉を使うのはノンノン!

:さて、そろそろ締めに入りましょう。Joshua夫人、他に気になったことはございますか。

:それじゃ、もう一言よろしいかしら? って攻撃するぞ。ちょっとした言葉の表現かな。「目をこらす」、「ちょこんと」、「繰り出す」など言葉の選び方に工夫は見られるけど、原文の意味から離れてしまうのはダメ。言葉は勢いや雰囲気で使うのではなく、意味を正しく理解した上で使って欲しい。

:それじゃ、店員は別に目をこらしている訳ではないと。

spotだから、偶然視界に入ったのだよ。それに、ペンギンは必ずしもちょこんとサイズとは限らない。体長1メートル以上の皇帝ペンギンだったら「ちょこんと」はないだろ。

:「ビーチへ繰り出す」とは言いますよね。

:すでにペンギンを連れて車で外に出ている状態で「繰り出す」というのは不自然。「ビーチへ行く」だとウキウキ感が出てないかも、と思ってしまう気持ちはわかるけど間違った表現をしてはいかん。

:セリフが関西弁の訳文もありましたが、表現手法としてはどうですか。

:ジョークの内容も関西弁も正しく理解しているなら問題ないけど、関西弁にしておけば面白いという思い込みは危険。でも、16位のハッピーキャットさんの関西弁はコクがあって楽しく読めたよ。

:地の文が全て現在形だったので訳しづらいと感じた人も多かったと思います。

:物語の筋を語るときの常道だからね。ただ、日本語でそれを行うと不自然。時系列に沿っていれば過去形を用いた方がスムーズに読める箇所もある。

:いやぁ、我々のテリトリーもとうとうWebにまで広がってまいりましたよ。ここを制覇してしまえば、世界を制したのも同じ。『TIME』誌の表紙を飾るのも時間の問題ですね。あらヤダ、そうなると顔バレしちゃいますね。

:最後にここまで言ってよろしいかしら? 安心なさい。万が一そんなことになっても、アタクシがあーたの顔にモザイクかけておくよう手配してあげますから。




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