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読み物
 

『グローバルな正義を求めて 』 染谷有美子さん(エコロ・ジャパン翻訳チーム)のオススメ!
 

2005年4月、3Rイニシアティブ閣僚会合のために当時の独環境大臣ユルゲン・トリッティン氏が来日しました。合わせて開催された講演会後のレセプションパーティーでのこと。「あなたの著書を現在訳しています!」。環境政策の話そっちのけで、突然ドイツ語で話かける私に彼はやや面食らったようでした。淡い期待を胸に、原書とサインペンはちゃっかり持参していました。

トリッティン氏は、1998年に連邦環境大臣に就任して以来、原子力発電事業の停止や、それに代わるものとして風力発電を中心とした再生可能エネルギーを促進する政策を推し進め、2005年11月に政権が変わるまでの間、「環境先進国ドイツ」立国に大きく貢献した人物。本書は彼の
唯一の著書です。

緑の党出身の彼の視点は、世界経済のグローバル化の影響とエネルギー・貧困問題、それが引き起こす環境破壊、エコロジー的な世代間・国家間の公正さへと移り、日本の環境問題の捉え方で見落としがちなことにも気づかせてくれます。一方で、随所にエピソードを織り込み、今世界で起きていることに関心のある市民誰もが興味をもって読み進められるものに仕上がっています。

この本の共訳に参加したきっかけは、環境NGOでの仕事でした。翻訳者を志し勉強を始めた6年前には、自分がNGOの専従スタッフとして最前線で駆けずり回る姿など想像もしていませんでした。専門のドイツ語と、他人事ではない環境問題、それを繋ぐ翻訳――。「ドイツの環境分野の役立つ情報を日本に伝えること」を、自分の当時の目標に据えました。

それが、ひょんなことから翻訳ではなく環境問題の仕事につき、まわりまわって今回の共訳の話に行き着くわけです。専業の合い間を縫っての訳出作業で監訳者に泣きつく場面もありましたが、同じ環境分野出身の共訳者と、環境NGOの仲間という心強い味方を得てかたちにすることができました。

今やエコロジーの話題でよくお目にかかる「循環型社会」「持続可能な」という言葉が本書でも頻出します。これにあやかって、これからも環境保護活動と翻訳を循環させ、環境問題解決に寄与する翻訳を、持続可能な生業としていきたいと思います。
(06.12.01)