【アメリア】みんなで作るインタビュー2・相原真理子さんインタビュー編2
  みんなで作るインタビュー


 [インタビュー編 2]
読み物  
第2回 相原真理子さん
<第2回> 紹介編インタビュー編 1|インタビュー編 2  全3ページ

いろいろな経験をすること それが翻訳家の財産になります
   
科学捜査やコンピュータなど、専門的な内容がいっぱい出てきますよね。どうやって調べるのですか?(よっしー さん)

やはり人に聞くのが一番ですね。特に、検屍官シリーズの最初のほうでコンピュータが出てきたのですが、これが私には大変でした。
コーンウェルはコンピュータのアナリストだったので非常に詳しいのですが、私はワープロも使ったことがない機械音痴(今はパソコンを使っていますが、検屍官シリーズの三作目ぐらいまでは手書きだったんですよ)。それこそ「フロッピーをドライブに入れる」と言われても、何のことかわからないという状態でした。そこで、知り合いのOAに強い人に頼み、つきっきりで教えてもらい、ゲラもチェックしてらいました。
いったんわかってしまうと、それほど大変ではありませんでしたが、それでもコンピュータ


がプロットに関わってくるものに関しては、その都度、詳しい人に見てもらうようにしています。
読者の中には、非常に詳しい方もいらっしゃいますから、少しでも間違っていると、とてもいいかげんな訳し方をしたように思われてしまいますので、一応、間違えていないということを確認してもらいました。
最近は、インターネットを使うようになり、調べ物がとても楽になりましたね。というのは、コーンウェルは地名や店名など、実在のものを多く使うんです。地方の小さな店でもインターネットにホームページを持っていたりしますから、それを見て、自分で行った気になれる。その点は、とても助かっていますね。

 
検屍官シリーズに出てきた犯人で、一番気に入っているのは誰ですか?(tacto さん)

犯人で気に入っている者はいません。
コーンウェルはちょっとした脇役にも個性を与えて書いているのですが、悪者については人間性を与えて書くのがイヤだとインタビューかなにかで答えています。ですから、ほかの登場人物に比べて、悪者には個性がなく、ただ悪の象徴のように出てきているんです。要するに、人間らしくない。だから、「気に入った」というのはないですね。
他の人の作品のなかでは、悪人でもちょっと人間らしいところがあったりという場合もありますよね。でも、コーンウェルはそういう書き方をしていません。徹底的に悪という扱い方なので、共感できないし、感情移入できないのです。作品全体で好きな登場人物はと言われる


と、やはりマリーノが一番好きです。
マリーノはすごく無骨で大雑把という設定ですが、意外にシャイで、人に気を使うところがあるんですよね。
たとえば、スカーペッタが自分から食事に誘ったのに忙しくてすっかり忘れてしまって、マリーノは誘われたからスカーペッタの家にやってきたという場面で、スカーペッタが忘れていることに気付いたマリーノは「どうしたんだよ」などと言わないで、「ちょっと寄ったんだけど」いう風に言う、とかね。すごく悪ぶったりするわりに、繊細な面を持っていたり、子供が好きだったり、愛すべきところがたくさんあると思うんです。そこが好きですね。

 
検屍官シリーズで読んだのですが、犯人が被害者をロープでしばる方法が複雑でしたが、実際に試してみたのでしょうか? 非常に危険だと思いますが。(JD さん)

ロープを結んだところの描写を訳すときに、実際に結び目を作ってみたことが一度だけあります。原文を読んだだけでは納得できなくて、実際にやってみないと訳せないなと思って。
“危険だ”とおっしゃっているところをみると、首を絞めるかなにかの描写のことかも知れませんが、それは、したことはありません。恐いです。
著者のコーンウェルは、実際にあったことを


取材をして書くという主義のようで、たとえば『死因』でスカーペッタが川に潜るシーンがあるのですが、ご本人も本当に潜ったそうです。
ヘリコプターからの描写がある場面では、自分でもヘリコプターに乗ったり。必ず体験してみるようなので、ロープの場面も、もしかしたらやってみたのかも知れませんね。
私は、川に潜ったり、ヘリコプターに乗るなんて、とても出来ません!(笑)

 
先日、『嫌われものほど美しい〜ゴキブリから寄生虫まで』(早川書房)という訳書を読みました。先生にしては意外な分野の本だったので驚きましたが、先生ご自身は、苦手なジャンルというものはないのですか? 好きな分野、苦手な分野について教えてください。(ももんが さん)

意外だと言われる事もあるんですが、生き物が好きな私にとって、この分野の本を訳すのは、意外でもなんでもないんですよ。現に、デビュー作は犬の調教師の話ですし、それ以外にも、猫の関係の本が2冊、獣医さんの本とか、“かもめの離婚”という本も訳しました。
動物関連の本は、今までに合計7、8冊は訳しています。今後もすごくやりたいと思っている分野です。今、最も興味あるのはチンパンジー。大好きなんですよ。
反対に、苦手な分野は経済ですね。翻訳家として駆け出しの頃に、断れなくて3冊ほど苦労して訳したことがあります。自分としてはかなり苦しかったし、そのうちの1冊はこれは無理だと思って、やりかけて返したこともあります。
翻訳を始めたばかりの頃は、どんな分野が


好きかということがよくわからないので、分野を狭めずに挑戦したほうがいいと思うのですが、やはり無理だな、合わないなと思ったら、やめたほうがいいかも知れません。そういうものはエネルギーが余分に必要なわりには、楽しくありませんから。
依頼を受けて、内容を見てから断ったというものもいくつもあります。ひとつは経済関連のもの。それからミステリーでも、面白いんだけれども嫌だというものは断りました。内容が残酷で、必然性がないように思える場面で、わざとおどろおどろしいものが出てくる感じがしたことと、主人公が好きになれなくて感情移入できなかった、というのが理由です。でも、その作品は、その後、別の方が訳してベストセラーになりました。

 
 
企業秘密でなければ、今後の翻訳スケジュールを教えてください。(トンボ さん)
まず、5〜6年前に自分で持ちこんで出版にまでこぎつけた本が10月に出たばかりです。『気になる夢、本当になる夢』(早川書房)



という題で、臨床心理学士が書いた夢判断の本です。それから、『ターシャ・テューダーの人生』(文芸春秋)が11月に出る予定です。
今、訳しているのは、耳の聞こえないお医者さんの話で、アメリカ人の方ですがご本人か書かれたノンフィクションです。出版時期は決まっていませんが草思社から出版の予定です。
次に訳す予定の本は、これもノンフィクションで、アメリカでベストセラーになった本なんですが、捕鯨船が難破して、ただ一人生き残った人が漂流するという話で集英社から出版の予定です。
それから、アメリカではもう出版されているのですが、コーンウェルのクックブックというのがあって、それを訳す予定なんです。コーンウェルは料理が好きなようで、作品のなかにも料理の場面がたくさん出てくるんですよ。それらのレシピと実際の料理の写真、それから作品のなかの料理の描写の部分の抜粋に、それに因んだコーンウェルの付記もあって、とても楽しい本なんです。これは、来年の秋頃出版の予定です。

 
 
私は出版翻訳家を目指して勉強中です。私たち、出版翻訳家を目指す者に向けてアドバイスをお願いします!(rude さん)

最初は範囲を狭めてしまわないで様々な分野にトライしたほうがいいと思います。そんなとき、いろいろな経験をしていればいるほど役立ちますので、翻訳のためにということを意識する、しないに関わらず、様々なことにチャレンジしてみてください。意外なことが役に立つものですよ。
たとえば、失恋などもそうです。経験が全くないと訳しにくいものです。じっと電話が鳴るのを待っていた、なんていう場面で、そういう経験があれば、すごくぴったりした訳ができると思いませんか?ある程度のところまでは想像がつきますが、実際に経験したことがあって訳すのとでは、やり易さが違いますので、いろいろな経験をして欲しいと思います。
多くの人と会って、たくさん話を聞くということも大切です。たとえばヨット好きの人と知り合い


になれれば、翻訳の途中でヨットの描写が出てきたときに、その人に聞くことができます。
自分で調べるといっても、それには限度があります。どのようにして調べるか、人に聞くということも含めて、その方法をいっぱい持っているということは、とても重要なことだと思います。
それから、言葉に対して敏感になって欲しいと思います。翻訳をし始めると自然にそうなると思うのですが、テレビを見ていてもそうだし、喫茶店で回りの人が話している言葉が耳に入ってきたときもそうだし、若い人の口調はこんな風だとか、中年男性はこうだとか、それを自分のストックにしようと意識して耳を傾けることです。漫然とそのなかにいるのと、意識しているのとでは違います。
翻訳家としては、そんなことがすべて財産になると思います。

 
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