【アメリア】みんなで作るインタビュー5・マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッド・インタビュー編1
  みんなで作るインタビュー


 [インタビュー編 1]
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 第5回 MILSグループ
 
<第5回> 紹介編|インタビュー編 1|インタビュー編 2  全3ページ

スタイルガイドは、何人くらいで、どれくらいの時間で作ったのですか?(りょう さん)

弊社のスタイル ガイドは、初版が 8 年前に発行され、昨年 10 月末に改訂した第 4 版が最新版となっています。初版と第 2 版については当時の制作担当者がいないこともあり、どの程度の人数と時間をかけたかわかりません。ただ、第 1 版は、MILS グループの担当者 (3 名) が中心になって、社内の製品マニュアル制作にかかわっている担当者全員の協力、そして外部の制作専門会社のアドバイスや制作支援も得て完成させたということを聞いております。第 3 版や第 4 版は、外部の支援を受けませんでしたが、社内で製品のドキュメントやユーザー インターフェイスなどのローカライズにかかわっている担当者 (数十名) の協力を得て、企画から完成まで半年ほどかけました。MILS グループは担当者 1 名、アシスタント 1 名で取り組みました。
スタイル ガイドで規定するルールは、全 MS 製品に共通して適用できるものでなくてはいけないため、各製品グループからの要望や意見を聞き、必要に応じてルールの内容だけ



でなく、その必要性なども含め議論をします。多くの製品グループを巻き込んだ議論や調整をコーディネートするために、 MILS グループの担当者も相当な時間を使うことになります。また、各製品グループも内部で話し合ったりして時間を使っているので、MILS グループ側で使った時間と合わせると、数百時間はかかっているのではないかと思います。
 
翻訳の品質について、用語とスタイルを整えても、まだすくい取れないものがあるでしょうか? あるとすればそれは何だとお考えですか?(おだいず さん)

用語とスタイルは、言語的な品質を構成する要素の一部分であると考えます。
翻訳の品質を評価するとき、弊社では 4 つのカテゴリ (正確性、用語、スタイル、言語品質) を評価の観点としています。この中の用語とスタイルについては、弊社から提供する訳語やスタイルのルールに従っていれば、ある程度のレベルを確保することはできます。しかし、正確性と言語品質は、翻訳者の方々の実力や知識、経験に、より大きく依存する要素です。
正確性と言った場合、英文の内容を等価的に翻訳できていることだけでなく、技術的な


観点から見ても間違いのない訳文になっている必要があります。また、言語品質という面では、たとえ訳文として間違ってなくても、誰が読んでも誤解することがない、読みやすく、わかりやすい日本語になっていなくてはいけません。
正確で言語品質の高い翻訳をしていただくために、MILS グループでは、翻訳エラー集をはじめとした各種の参考資料を提供したり、翻訳されたドキュメントなどをスポットでレビューして、その結果をフィードバックしたりしています。

 
いったん決めたスタイルや用語を変更するのは、どんな場合ですか? ユーザーの声を吸い上げて変更することもあるのでしょうか? パソコンが一気に普及した頃の話ですが、「不正な操作」(illegal operations)という言葉が一部で論議を呼んだことがありました。あれはどうなりましたか?(Stacy さん)

スタイルの変更
MILS が認識している範囲内で、エンド ユーザーからのスタイル変更に関する要望を受けたことはほとんどありません。内部的にも、変更が発生することはまずないと言っていいでしょう。ただ、スタイルガイドの改定ごとに、あいまいなルールをより確固にしたり、使いやすくするために使用例を追加したり、構成を多少変えるようなことはしてきています。

用語の変更
大きく分けますと、次の 3 つの要因により、一度決定した訳語を変更する場合があります。
A. エンド ユーザーからのご指摘
B. ユーザビリティ テストの結果
C. 社内スタッフ (MILS を含む) からのフィードバック


A は、ご質問の中で言及されているように、「不正な xxx」のケースが該当します。ただし、この一件はエンド ユーザーから直接弊社のサポート チームに寄せられたものではなく、まさに「一部で議論となっていた現象」を弊社が深刻に受け止めて対応した例と言えます。対応の詳細については、後述します。B は、エンド ユーザーからの公式なフィードバックと言えます。こちらは、主に新機能に関するフィードバックを得ることを目的としていますが、既存の用語を変更するための情報源ともなり得ています。C については、製品間の不整合を統一する際に発生する変更や、旧来使用してきた用語を時代の潮流に適合させるために行う変更などが挙げられます。

「不正な xxx」
「不正な xxx」、「xxx は不正です」などの表現には、「違法な」、「よこしまな」、「正義や道徳に反する」といった悪意を帯びたニュアンスがあるため、弊社開発部門の関連部署を中心としたタスクフォースを立ち上げ、2 年前の 2 月に全社的な対応を図りました。最終的に、脈絡に応じたより適切な訳への変更案を MILS が作成し、関連部門に通達しました。具体的には、「無効な xxx」、「xxx が正しくありません」といった訳語への変更を行いました。また、単にメッセージの用語を変更するだけではなく、たとえば Office XP でプログラムの強制終了を余儀なくするようなエラーが発生した場合には、ユーザーがエラー レポートを弊社宛に送信できるような機能を製品に反映しました。
 
小学生でも Internet Explorer を使う現在、Microsoft 社のターミノロジーが国語教育に与える影響は小さくないと思います(大袈裟かな?)。それを踏まえて! ターミノロジーを決定する基準をおたずねします。例えば、カタカナにするか、カタカナ以外の訳語にするかの基準はありますか? 常用漢字にはどこまで従いますか? Microsoft 社の製品では "paste" の訳語は「貼る」となっていますが、常用漢字では「貼」ではなく「張」を使えとあります。でも私は「貼る」の方が好きです!(Markus さん)

カタカナか、カタカナ以外か?
社内には、MILS で策定した次のような用語訳出の指針があります。
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- なるべく英語は残さない
- なるべくカタカナ語は使わない
- なるべく訳し分けは行わない
**ただし、以下のような場合を除く :
- 固有の製品名、テクノロジ名などは英語のまま残す。
- 元の英語と意味範囲が合致する日本語が見つからない場合などはカタカナを使用する。また、業界標準の用語がカタカナであったり、戦略的にカタカナを使用する場合は、それに準拠する。
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つまり、意味的に問題がない限り極力和語を使うようにはしています。ただ、コンピュータ ソフトウェア用語は、そのほとんどが米国から輸入されてくるので、そもそも対応する日本語がなかったり、あっても意味範囲が合致しない場合が多くあります。その場合は、必然的にカタカナを充てることになります。

常用漢字
用字、用語についてはスタイル ガイドで規定しており、そのスタイル ガイドは内閣公示の常用漢字表に基づいています。ただし、「貼り付け」の「貼」などのように、マスコミを含む一般社会で慣例的に使われている常用外漢字については、弊社でもそれを採用しています。
 
ローカライズの仕事を受注するのに、決め手となるのはどんなことですか? どうやって勉強すれば仕事に結びつきますか?(ゾウガメ さん)

弊社の仕事に限ってお話しすると、弊社では個人の翻訳者に直接ローカライズの仕事


を発注することはないので、弊社とご契約いただいているいくつかの翻訳会社様のトライアルを受けるなどして登録してもらうことが前提条件となると思います。登録の後、継続的に仕事をアサインしてもらえるようにするには、いろいろな方法、手段があると思います。一般的な要素としては、インタビュー中に述べたように、高い英語力、日本語能力はもちろん、ローカライズ対象製品やその製品分野に関する広範な知識、ローカライズに使用される各種ツールに対する高い習熟度を持っていることや、翻訳会社から返される修正をタイムリーにかつ確実にそれ以降の仕事に反映できる学習能力、厳しい締め切りに対応できる体力や柔軟性が挙げられると思います。
 
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