【アメリア】対談の部屋1-2子育て体験を翻訳に活かそう!
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対談の部屋
<第1回>   全5ページ

第1回 「ただいま子育て奮闘中!」
2.子育て体験を翻訳に活かそう!

−−子供が生まれる前と、今とでは、変わったところはありますか?

佐藤:子供がいるから、無理をしなくなりましたね。二人だけで仕事をしているときは、大きな仕事を受けて、結構無理をして、その後ぐったりしていたのですが、今は子供が適度に邪魔をしてくれるので、あまり無理をしないで、少し余裕をもって仕事を受けるようにしています。収入的にはマイナスですが、健康面などを考えて、長い目で見るとプラスかなという気がしています。

安瀬:もともと家事は得意な方が得意なことをやるというスタイルだったので、基本的には変わっていません。ただ物理的に人数が1人増えて、家事の量はすごく増えましたね。生活は規則的になりました。以前のように夜中まで飲んだりできませんから。自然とそうなりました。飲み代が減った分はプラスかな(笑)。

佐藤:子育てや家事は反復運動が多いですよね。皿を洗うのも、お風呂の掃除も。だから、家事をすること自体が気分転換になる。体を動かすことでストレスを解消しているという部分がありますね。

安瀬:仕事と子育てのふたつで大変なんですが、でも、それで他のことができなくなってしまうのは僕はイヤだなと思うんです。そこでどうするかというと、仕事を短時間でやるしかない。スピードアップして、なるべく短時間で集中してやるようにして、時間を作って好きなことをしようと。無理をしてでも遊ぶ時間を作らなければ、働く意味がなくなってしまう。おかげで集中力がアップしました。

−−悪い面はないのですか?

安瀬:育児ノイローゼってありますよね。ちょうど手間のかかる2歳児の頃に、仕事もすごく忙しくて。どういう理由かは忘れてしまったんですが、子育てのことで家内と話し合いになって、車を運転しながらボロボロ涙が出てきてしまったことがあるんです。自分で自分がコントロールできないんですよね。これはダメだ、ノイローゼかなと。仕事も子育ても一生懸命やろうとしすぎて、ストレスがたまっていたのかもしれません。そのときは、女性って大変なんだなって思いました。

塩冶:子供って、大人と違って話し合って解決するというわけにはいきませんよね。それに、何が起こるわからないから、仕事や勉強の計画も立てられない。そんなことにイライラしてしまって、普通なら怒らなくてもいいところで怒ってしまう。夫にも当たってしまったり。そうなると悪循環ですよね。

佐藤:授乳期は、夜中にもミルクをあげないといけないでしょう。その頃は、翻訳の仕事が忙しかったので、ずっと子供に合わせて、夜、仕事をしていましたね。夜中に子供が起きる頃に仕事をして、子供が昼寝をすると、自分も昼寝をして。かなり不規則だったのですが、時期はそんなに長くなかったので、二人とも割り切っていました。

−−子育てが翻訳に生かされたことはありますか?

安瀬:僕はドラマのセリフを書く仕事なので、女性の気持ち、子供をもつ親の気持ち、子供の気持ちがわかるようになって、やっぱり以前と比べ、少しセリフが変わってきたかも知れません。育児ノイローゼになる女性の気持ちなんて、以前は絶対にわかりませんでしたから(笑)。

佐藤:私の場合は、翻訳自体が変わったということではないのですが……。ちょうど子供が3歳になって片言をしゃべり始めていて、ある日突然、かなり長いセンテンスをいきなり話したりするんですよ。その言葉を覚え始めるプロセスが、今、教室で生徒さんに翻訳を教えているプロセスと、どこか似ているような気がします。子供はゼロから言葉を話し始める。生徒さんは英語と日本語のインターフェース、つながりを考えながら翻訳を勉強する。この二つが似ている気がして。興味深いですよ。

安瀬:それはすごいですね。ある程度、言語獲得して、大人になってしまうと、新しいことを始めようと思っても、なかなか難しい。ところが子供を見ていると、獲得した言葉を使う柔軟性がすごいんですよね。あれにはビックリしてしまいます。

佐藤:本当にそうですね。

安瀬:自分が老化しているなと思っちゃう(笑)。

佐藤:例えば、子供が“ねんね”という言葉を覚えたんですよ。そうすると、水が排水溝から流れていくと「水ねんね」と言うし、車を車庫に入れると「お車ねんね」と言う。少ないボキャブラリーで次々と連想して、これもねんね、これもねんね、というふうに。教えていない文章を作ることができるんです。翻訳でも、実はエッセンスしか教えることができなくて、それをいろいろな場面で応用して欲しいんですが、その応用力というのは、想像する力だと思うんです。子供ってそれがすごいですよね。安瀬さんの言う“柔軟性”。大人だと教えた場面でしか使っちゃいけないと思ってしまうらしくて、勉強したセンテンスを覚えているけれど、ほかの場面では応用できないという人が意外と多いんじゃないかという気がしています。

安瀬:うちでも似たようなことがありましたよ。ある時、「だけど」という言葉を使い始めたんです。テレビで誰かが何かを言ったことに対して、「だけど○×△□……」っていい始めたんですが、それが文脈としてちゃんと合っているんですよね。会話になっている。何もなかったところから自分で言葉を獲得して、なおかつ使いこなしていく。これはもう驚きですよ。たまに、生徒さんのなかでさえ、接続詞を間違えている人もいますからね(笑)。

−−生徒さんのなかにも、子供と同じように発想をしていく方はいますか?

佐藤:たまにいますね。最初は見当違いの質問をしてきても、こちらが修正すると自分でフィードバックして、連想して。そういう人は、子供と同じようにその過程を楽しんでいるようです。だいたい1クラスに1人か2人は毎年いますよ。
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