【アメリア】対談の部屋3-3訳者3人の出会い
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対談の部屋
<第3回>   全4ページ

第3回 『子どもの本の歴史』出版記念、共訳者特別対談
3.訳者3人の出会い


田中:ところでこの本は3人の共訳という形になっていますが、お三方は以前からのお知り合いだったのですか?

さくま:私はこだまさんの後輩なんですよね。それも中学、高校と、最初に入った出版社でも(一同:えーっ)。最初は知らなくて、ひょんなことからわかったんです。

こだま:お花見の話ね。わたしは中学、高校のときに優等生ではなかったから、お花見の季節になると学校をぬけだして、お花見にいってボートに乗っていたとか、そういう話をしているうちに、ひょっとして同じ学校にいたのでは……ということになって。そのときは、ふたりともその出版社はやめいていて、さくまさんは別の出版社の編集者として、私は訳者として会っていたんです。

さくま:そうそう、その頃、こだまさんはいろんなものを訳していらして、私は編集の仕事をしていて。先に私の話をしてしまいますと、福本さんとは、仕事上、かなり以前から間接的には知っていたんです。でも、最初に出会ったときは利害が対立する場面だったので、お互いにいい印象を持っていなかったかも(笑)。

福本:あら、私はさくまさんのこと、いやな人だなんて思ってなかったわよ(笑)。

さくま:福本さんが、アメリカのミネソタ大学に絵本の原画を見に行くツアーを企画したときに、私を誘ってくださって。お付き合いはそこからですよね。

田中:そのツアーはどういった内容のものだったんですか?

福本:その頃、私は渡辺茂男先生のアシスタントをしていたのですが、ミネソタ大学に絵本の原画などを集めたカーラン・コレクションというのがあって、渡辺先生の発案でそれを見に行くツアーを企画したのです。夏休みに大学の学生寮が空くので、そこに泊まりながら、現地の方とカンファレンスを開いて、空いている時間にコレクションをひたすらみました。びっくりするような、たとえば、エッツの原画だとか、こんなの手で触っていいの、というものが、ばんばん出てきて。ただ、白い手袋をはめないといけませんでしたけれど。着物の畳紙(たとうがみ)みたいなものにどさっと入っているんですよ。作者が書きちらしてボツになったものとか、手紙とか、そういうものまで、何でも集めてありました。まさに宝の山で、とても全部はみきれませんでしたね。

さくま:そうそう、みきれませんでしたね。そのツアーのときも、福本さんはとってもきっちりした偉い人だなあという印象で。

福本:やだあ。とっつきにくいってこと(笑)?

さくま:いえいえ、ぜんぜんそういうんじゃなくて(笑)。とにかく、以前から、こだまさんと福本さんのなさったお仕事を、いつもすごいなあと思ってみていました。

福本:私はこだまさんとは、JBBYで知り合ったんでしたね。

こだま:あら、講談社のパーティーで通販のカタログを渡したところからじゃなかった?

福本:そうでした! こだまさんが素敵なバッグを持っていて、「どこで買ったの? どこで買ったの?」ってきいたら、カタログをくださったの。(一同、爆笑)

さくま:そのカタログ、私もこの前、こだまさんからいただきました。(一同、また爆笑)

こだま:子どもの本の世界ってわりあいに狭いから、編集者と作家、訳者、画家が知り合う機会は多いみたいですね。

田中:『子どもの本の歴史』についてうかがいます。本のあとがきによると、柏書房の編集者、壇上聖子さんがさくまさんのお宅にいらっしゃったのがきっかけだったみたいですね。

さくま:壇上さんとは、ドイツ語翻訳家の平野卿子さんからのご紹介で、だいぶ前から知り合いだったんです。その頃、壇上さんは柏書房ではなくて、別の出版社に勤めていらしたのですが、英語圏の本でいいものはないかと相談されて、何冊か紹介したことがありました。その後、壇上さんが出版社をやめられたあとも、私がお仕事を紹介したり、壇上さんの旦那様からパソコンを教えていただいたりと、連絡を取り合っていたんですね。そんな流れで、壇上さんが柏書房に入ったとき、何かいい企画はないですか、とうちの本棚を見にきて。これはどうですか、と私が見せたうちの1冊が、この本の原書だったんです。

田中:どうして共訳にしようと思われたんですか?

さくま:私に時間も、一人で仕上げる自信もなかったからです。ただ、こだまさんは以前から「共訳というのはいろいろと難しいそうよ」とおっしゃっていたので、お願いしてお引き受けくださるかわかりませんでした。でもこの本は章ごとに書いている人もテーマも別なので、ひとつの文学作品を共訳するのとは違うんですよね。それに、学者ではなくて、普通の人が読んで面白い形にしたいという思いもあって、こだまさんと福本さんに、やっていただけないでしょうかとご連絡しました。そうしましたら、本を気に入っていただけて、共訳という形でやりましょうとお二人が言ってくださったので……。

福本:どうして「やりましょう」なんて言っちゃったんでしょうね(笑)。こんなに大変だとは思いませんでした。

田中:この本は、アメリカとイギリスを中心に、英語圏の子どもの本の歴史が、年代を追って書かれているんですよね。ある章はアメリカのピューリタン入植から1870年まで、またある章はイギリスの世界大戦の頃、というふうに。章の担当はどうやって決められたんですか?

さくま:1章だけ、私がこれをやりたいわ、というのを決めて、あとは順番に割り振りました。

田中:自分の担当した章がここでよかった、と思われました?

こだま:私は……失敗でしたね(笑)。話が国別に細かく分かれているのでやりやすいかな、と思って『オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの児童文学』という章を担当したのですが、欧米とくらべて、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは児童書文学史の本もほとんど出ていないでしょう? 作家についても知らないことが多かったし。以前に児童文学事典を訳した研究者の方にこの話をしたら、そんな章選ばなきゃよかったのに、って言われました(笑)。その方も、オーストラリアやカナダの項目を担当したので、調べるのに苦労したみたい。

さくま:欧米のものは逆に、たくさんの資料をとにかく読まないと訳せないという点がありましたね。読者から「そこはおかしいです」と指摘される可能性が高いですから。

こだま:そうね。『オーストラリア、カナダ、ニュージーランド』の章は、固有名詞を調べるのは大変だったけど、その点は欧米の章よりやりやすかったかもしれない。

さくま:どこの章が大変でどこの章が楽というのはなかったですね。

福本:けっきょく、どこも大変でしたね。

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