【アメリア】対談の部屋 8-7 映画がますます好きになる!〜 Movie Trivia 番外編 〜
読み物
対談の部屋
<第8回>  全7ページ
第8回 映画がますます好きになる!〜Movie Trivia 番外編〜

「汚れ」が美術スタッフの腕の見せどころ


アニタ:アメリカでは、現在、人が住んでいても、撮影に適当な家であれば、映画の撮影によく使われるみたいですね。大邸宅なんて、そうそうあるものじゃないから、よく映画の舞台にされるようですよ。日本のように、スタジオにお金持ちの家をつくろうとすると、細部まで行き届かずに失敗してしまう。

吉本:セットには想像力の限界、予算の限界がありますからね。本物を借りた方が話が早い。

吉野:日本は撮影に対して、厳しいということもありますよね。自治体から撮影許可がおりないとか。

アル:映画会社が悪かった時期もあったんですよ。昔、雪国に撮影に行ったら積雪量が足りないっていうんで、電信柱を切って短くすれば雪が増えたことになるっていって、本当に電信柱を切って、そのままにして帰ってしまったそうですよ。そういう話をいくつも聞きましたから、だから厳しくなってしまったのかもしれない。そんなことをされると、貸す気をなくしますよね。

吉本:黒澤明監督で、こんな話もありました。撮影していたら、どうも小さな家が邪魔になると。どうしても気になるから、「撮影が終わったら新しく建てるから壊させてくれ」って頼みこんだ。それで、本当に壊して、建てたという。

アル:すごいね。その頃は、そういうことができたんですね。今では到底考えられない。

吉野:今ならデジタル処理しちゃいますか?

アル:今だったら、そのほうが安いですよね。『疑惑の影』だったと思うんですが、撮影にちょうどいい家があったので、その家を借りるよう話をつけて、さあロケだって行ってみたら、きれいにペンキが塗り直してあった。「やめてくれ!」ってもう一度、元のようにペンキを塗り直したっていう話があります。

吉野:貸す側は、映画の撮影だから、きれいにしないとと思ったわけですね。

アル:そうそう。でも、映画を撮る側は、その古さがよくて借りるわけですから、リフォームされると困っちゃうわけですよね。

吉本:美術スタッフの方が書いた本を読むと、意外にとても難しいのが、「汚れ」だそうですね。美術の達人は汚れのエキスパートで、どんな汚れでも作れる。何年も経った油染みとかね。その技術が値千金になるわけですよ。『生きる』の市役所のシーンで、書類が積み上げられているんですが、このシーンを撮るためには、まず古い書類を山ほど集めて、その古さ汚さにあわせて部屋を汚さなければならない。

アル:そんなの、もともとあるわけじゃないから、それを作るというのは非常に大変なんですね。だから、もともと汚れている家なんて、制作者側からすると本当に尊い存在なんですよ。

吉本:昔の白黒映画の時代は、白黒で「赤」に見せるためにはどうすればいいか。それは、実際に赤を使えば赤のように見えるわけじゃないんですよね。

アル:白黒だと、「赤」は黒に見えてしまうでしょうね。

吉野:白黒の撮影用の化粧の仕方というのもあるそうですね。カラーだとけばけばしく見えるけど、白黒だときれいに見えるとか。

吉本:昔は、そういうのがホントに伝統芸みたいにしてあったわけですよね。



映画好きのみなさんのお話は、尽きることがありませんでした。アメリア会員のみなさんも、翻訳プロジェクトに参加して、映画談義に参加してください!

前へ トップへ