【アメリア】対談の部屋 9-5 翻訳小説にタイトルをつけよう!
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対談の部屋
<第9回>  全6ページ
第9回 翻訳小説にタイトルをつけよう!

翻訳者と本と編集者の熱い関係

:桜田さんに聞きたいと思っていたことがあるんです。最初にこの本のあらすじを書いてもらった時、桜田さんの感想はあまり芳しいものじゃなかったですよね。あがってきた訳を読むと、私はとても面白い本だと思ったんですが……。

桜田:読み物としてはどんどん引き込まれていくし、キャラクターも面白い。でも「これは傑作です! すごいです!」というほどではないと思ったんです、最初は。

:実際に訳してみてどうでしかた?

桜田:それが、どんどん面白くなっていったんです。それぞれキャラクターの異なる個性的な登場人物がたくさん出てきて、話の展開が速いし。それに、翻訳を進めていくと本気で主人公を叱りたくなってくるんですよ。

:そうそう!

桜田:「私は仕事だから、ここに残らなきゃならないわ」なんて言っていると、「もう仕事なんて関係ないだろう!」って、訳しながら突っ込んでしまったりして(笑)。

:わかります、その気持ち。「この期におよんで、まだ残るつもり!?」っていう感じですよね。でもまあ、主人公の気持ちもわからないわけでもないんですが。

桜田:主人公があれだけ弱みを見せるから、読んでいるほうも共感できるんでしょうね。完璧に計算していて、仕事だからといって割り切ることのできる女性よりも、そこまで割り切れない弱さに読者は共感するんだと思います。

- - 翻訳者は、主人公の考えに共感できるとすらすらと訳せると聞いたことがあるんですが、桜田さんはいかがですか?

桜田:確かに本によって、読んでいて声が聞こえてくるというか、日本語が浮かんでくる本と、好きなんだけど浮かんでこない本というのがありますね。私の場合は、著者が男性で四文字言葉がいっぱい出てくるようなタイプの本は、読んでいて面白くても、訳すとなると苦労します。この本の場合は、登場人物の女の子たちはみんな友達にいそうな感じで、会話も普段聞いているのと同じ調子で訳せたので、私にとってどちらかというと訳しやすい作品でしたね。

:どんなにベテランの翻訳者の方でも、原作はすごくよかったのに、翻訳しようと思ったら日本語にならないということがあるようです。共感できるとかできないとか、原作に思い入れがあるとかないとか、そういうこととは別で、言語的に非常に日本語になりにくいものがある、というようなことを、何人かの翻訳者の方から聞いたことがありますね。

桜田:ありますね。原書を読んでいるときに、見えてくるもの、見えてこないものがあるんです。どういう法則があるのかはわかりません。相性でしょうか? 原書の英語のリズムに関係があるかもしれないですね。

:原作者の書き方によるのかもしれませんね。
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