【アメリア】対談の部屋 10-5 世界同時出版に向け、超大作の翻訳に挑む!〜仙名紀&仙名ガールズ奮闘記〜
読み物
対談の部屋
<第10回>  全6ページ
第10回 世界同時出版に向け、超大作の翻訳に挑む! 〜仙名紀&仙名ガールズ奮闘記〜

5.携帯翻訳家誕生!? それぞれに戦い抜いた2か月半……

--下訳の期間は、どれくらいだったのですか?


仙名:最初は2か月の予定でしたが、結局2か月半くらいになりました。

--みなさんの翻訳作業は、スムーズに進みましたか?

西川:先生にはお話ししていなかったと思うんですが、確か最終の締切が7月23日で、その10日前にパソコンの画面が揺れだしたんです。嫌な予感がしたので、夫のメールアドレスにそれまでの原稿をすべて送りました。それから2日後にまったく動かなくなってしまったんです。もしあのとき、メールでバックアップしていなかったら、私はいまここにいなかったと思います。

仙名:機械酷使の結果だね。

西川:修理に1週間か2週間かかると言われて、でもそのときの状況は、毎日すわり詰めでやっと間に合うくらいだったので、すぐに近所のパソコンショップに駆け込んで「パソコンください!」って。マックを使っていたので、次はウィンドウズにしたいと思っていたんですが、操作を覚えている暇がないので、仕方なく、またマックを買いました。だから、印税が入るのを楽しみにしています(笑)。

仙名:パソコンが不具合だとは聞いていたけど、壊れたので買ったというのまでは知らなかった。

上原:私は、日中は会社勤めをしているので、会社の昼休みにも翻訳をしていました。それから通勤電車のなかでも。満員電車のつり革につかまった状態で、サラリーマンが新聞を読むように、原稿を小さく折り畳んで手に持ち、粗訳ですけど翻訳をしていって、それを携帯電話のメールに打ち込んで、自分のパソコンに送信していました。おかげで携帯電話の辞書機能が「ブッシュ」を覚えてしまって、いまでも「ふ」と打つと、いちばん最初にブッシュが出てくるんですよ。

--まわりの人は、何をしているのか、不思議だったでしょうね。

上原:気分が悪くなってしまったこともありました。

仙名:最後に、「入稿が終わりました」というメールをみなに打ったら、上原さんは泣いちゃったらしいんだよね。

上原:先生のメールを受け取って、それを読んだらぽろりと涙が出てきてしまって……。それでなくても、毎日、目が赤かったので、「失恋でもしたの?」って言われていたんです。でも、最後までやり遂げられたというのは、自分にとっての大きな自信になりました。

--調べものは、主にインターネットですか?

宮田:私が担当した第1章は1900年代のはじめ、第一次世界大戦の前から始まるんです。ですから、もちろん調べものにはインターネットや辞書を駆使しましたが、時代背景を知るためにはそれだけでは足りませんでした。ブッシュ一族は、そもそもWASP(ワスプ)と呼ばれるアングロサクソン系白人プロテスタントのエリート階級の出で、さらに金持ちの一族と結婚し、資金を蓄えることによって、政界に出てきたのですが、その時代の社会背景を知るために、ワスプについて書かれた本を読むなど、参考になる書籍にはずいぶん目を通しましたね。

加賀:インターネットはスポット的な情報は得やすいのですが、今回のような本を訳す場合は、しっかりした情報の基盤がないと、訳すのはむずかしいしいと思います。細かいところはネットで調べ、壮大な流れを把握するには、参考書籍を読むのがいちばんでしょうね。

庭田:調べものはネットである程度できますが、ネットの情報は玉石混淆なので、その裏をとるためによく図書館を使いました。ただ、私が住んでいるのは宇都宮で、公共の図書館は蔵書数が少なかったので、手続きをして母校の大学の図書館を利用しました。学生優先なので貸し出しは不可ですが、閲覧、コピーはできるので、必死になってコピーを取りました。

--では、資料を読む時間も相当なものだったんでしょうね。

全員:そうですね。

宮田:時間がかかっても、読んでからのほうが訳しやすい。資料を読んでおかないと、後々しわ寄せがきてしまいますから。

仙名:翻訳の仕方は千差万別、どの方法がいちばんいいとはいえません。最初に粗訳をやってしまう人、一つ一つ詰めていかないと前に進めない人、いろいろいます。それは、人それぞれ個性があっていい。だけど、最後にもう一度あたまからチェックし直すことは絶対に必要ですね。

西川:私は、最初に粗訳をしますね。調べものも、簡単に調べられるものはそのときに調べながら訳しますが、すごく時間がかかりそうなものは、とりあえずおいといて、最後まで訳を仕上げて、ひとまず安心してから、じっくり調べます。

倉田:通常は、1冊すべて自分で訳すので、まずリーディングからはじめて、全体像がわかってから訳しますよね。今回、私は担当が6章からだったので、前からのつながりがまったくわからず、訳しづらい部分もありました。わからないところは5章まで担当の宮田さんに聞いたり、さらに参考書籍を読むことで補ったりしました。公共の図書館は1度に6冊しか借りられないので、夫の貸出カードと2枚使って……。

宮田:私もですよ。うちのH市では貸出カード1枚につき10冊OKなので、母のカードも使って合計20冊。貸出期限が過ぎてしまうと、図書館から母あてに催促がきて、電話に出た私が母のふりして、「すみません、すぐ返しますっ!」って謝ったりして。

西川:私は16章からだったんですが、やはりどうしても、15章までを読まないと翻訳できないと思って、1週間かけてそこまで読んだんです。そしたら、読み終わったころにはすっかり忘れてしまって、1週間ムダにしました。先生から「西川さんからは原稿まるで出てこない」って言われるし……。

仙名:"ドーン!"って、号砲が鳴ったけど、まだスタートしていなかったんだね。素読みっていうのは、メモを取らない限りは、ごく大きな流れしか覚えていない。しかし、建前は事前にすべて読むべきですね。

西川:でも、今回はちょっと失敗でしたね。
前へ トップへ 次へ