【アメリア】対談の部屋 11-4 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜
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対談の部屋
<第11回>  全6ページ
第11回 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!   〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜

4.トライアル必勝法!?何に注意して訳すか?

--トライアルの課題部分を訳すときに、飯野さんはどういった点に気を付けて訳しましたか?

飯野:これまでにもさまざまなコンテストに応募してきましたので、私なりにいろいろと分析して、訳し方にも工夫をしました。コンテストの場合は、まず一番に誤訳だと思われないように訳さなければいけません。日本語として不自然でなく、また原文と付き合わせても誤訳と絶対に思われないように、ということを考えなければならないわけです。そのため、ある程度原文に近づいた訳文を作るように心掛けます。でも、今回のスペシャルトライアルは出版が目的だということがはっきりしていたので、原文に近づけるというよりは、むしろ出来上がった訳文が作品として読んで楽しいものでないといけない、と思ったんです。そこで、どんな風に楽しくするか、ということを真っ先に考えました。課題の部分は、子どもたちが森の中に入ってくところでしたので、神秘的な森に足を踏み入れるハラハラ、ドキドキ感を出して、本を読んでくれる子どもたちをいかに怖がらせるかを考えました。子どもの目線に立って、この場面を視覚的に捉えられるような文章にしたいと。

国頭:課題を選ぶにあたっては、事前に訳文の何を見たいかを想定して選ぶわけですが、今回はテンポのよさと会話の面白さがわかる部分を課題として選びました。ところが、それがたまたま、子どもたちが森に入って初めて妖精が見える、今まで何気なく歩いていた森が、それまでとはちょっと違って見える、そんな場面だったんです。そこで、期せずして情景描写のうまさも審査の対象になりました。情景描写のしかたによって、これからこの森で何かが起こりそうだという雰囲気を伝えられているかどうか。文法的に難しい英文ではなかったので、さらりと訳してしまって情景が思い浮かばないような文章も多く、結果的にふるいにかけるのにちょうどよかったですね。

飯野:読者の対象年齢についても考えました。原書は6歳からと書いてあったのですが、ちょっと小さすぎるかなって。

国頭:読者層については、アメリカは日本より低めに設定する傾向があるようです。

飯野:小学校低学年対象だとしたら、漢字をぐんと減らして、言葉遣いもやさしくし、話のテンポもゆっくりにしないといけません。でも、今回の作品は読んでいてもとてもテンポのよいものでした。

国頭:いくら原書に6歳向けとあっても、この分量の作品の読者を6歳と想定して訳したとしたら、翻訳者として日本の児童書の現状を知らない方だな、日ごろあまり書店を見てまわっていない方だな、と思ってしまいます。原書に書いてあることも、もちろん参考にしますが、やはりご自分で読んで判断することが大切です。実際、ゆったりと読み聞かせ風に訳していらっしゃった方もいたのですが、今回の作品に関しては、それは違うなと判断しました。

飯野:特に、課題になっていた2巻は、全部を読むとゆっくりとしたテンポでは話がうまく進んでいかないなというストーリーだったので、私は小学校3、4年生を対象にして訳しました。私は小学校中学年の子どもを教えた経験があったので、なるべく優しい言葉で教えようとした、その時の経験が役に立ちました。翻訳って何が役に立つか本当にわからないですよね。
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