【アメリア】対談の部屋 11-6 世界同時出版に向け、超大作の翻訳に挑む!〜仙名紀&仙名ガールズ奮闘記〜
読み物
対談の部屋
<第11回>  全6ページ
第11回 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!   〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜

6.本の向こうにいる読者を常に意識しながら

--実際の翻訳作業はどのように進んでいきましたか?

飯野:私のほうでは、一冊分をひととおり訳した後に、まず日本語を通して読んで、不自然だと思われるところを直し、その後原文と突き合わせをして、最後にもう一度日本語を読んで直す。その三段階の作業を終えたら第1稿として納めるという感じでした。

国頭:社内では、それを数名で読んで、指摘のあった部分を最終的に私がまとめて飯野さんに戻すようにしていました。

飯野:それを受け取って、とりあえず電話で国頭さんと一度相談をして、ある程度結論を出して、それから具体的に直しを入れました。

--訳していて、難しかったのはどんなところですか?

飯野:会話の訳し方には苦労しました。原文通りそのまま訳すと、アメリカ人の特徴だと思うんですが、会話がキャッチボールになっていないんです。

国頭:そうそう、話が絡んでこないんですよね。質問をしているのに、次の台詞がその答えになっていなくて、まったく違うことを言っていたり……。そのあたりを飯野さんに書き直していただいたことが多かったですね。会話文を完全に変えるわけにはいかないのですが、会話のエッセンスを汲み取りつつ、日本語としていかに面白く会話を絡ませるかというところです。

飯野:足したり、引いたり、移動させたりもしましたね。最初はどこまで変えていいのかわからなかったので、そのまま訳したりもしていましたが、原文自体が変なところもあったので、後半になるにしたがって、日本語として筋が通るよう、わかりやすく言葉を変えたりもしました。それから、盛り上がりの場面では、「ここはもっと感情的な言い方のほうがいいのでは」といった赤が入ってきたので、「なるほど」と思って訳文を少し工夫したりしました。そのあたりは、物語をいかに解釈して作り上げていくか、編集者というプロの目が非常に勉強になりました。

--児童書ならではの翻訳の難しさというのもありましたか?


飯野:そうですね、言葉遣いや漢字の使い方には悩みます。読者対象によっても、使える言葉も違ってきますから。

国頭:言葉の使い方はいくらか赤を入れましたが、もともと飯野さんが簡単な言葉を選んでくださっていたので、それほど直しはありませんでした。漢字を使うか、ひらがなにするかは最終的に私の方で判断をして、動詞はなるべくひらがなにし、名詞は漢字を使って総ルビを振りました。

飯野:最近は総ルビの本は少なくなりましたが、このほうが子どもたちの漢字の勉強になると思うので、私は好きです。

国頭:トライアルの課題では飯野さんは小学校中学年ぐらいを想定して訳してくださっていて、一応設定はそのくらいなのですが、そう言いながらも、最近の子どもの読書力を考えると、実際には高学年ぐらいの子どもが読むのかなとも思っていました。しかし、総ルビにしたからかもしれませんが、読者カードを見ると小学2〜4年生ぐらいが中心のようです。

飯野:前回、6歳の子も2人いましたよね。「6歳で読めるんだ」って、びっくりしました。

国頭:読者カードは付けていても戻りの悪い場合も多いのですが、今回はきちんと、真面目に書いて送ってくれる子が多かったので、本当にこの本が好きなんだなというのがよくわかりましたね。

飯野:「この本が一番面白かった」と書いてきてくれた子が何人かいて、翻訳者冥利に尽きました。それから、「マンガのように読めた」という意見もあって嬉しかったです。訳すときにテンポよく、ゲーム感覚、マンガ感覚で読めるような文章を目指していたので。

国頭:私が嬉しかったのは、「本はあまり好きじゃないけど、これは1日で読めました」という感想でしたね。編集者として、この本の狙いのひとつでもありましたので。

--飯野さんは現在札幌近郊にお住まいですよね。地方在住ということで不便はありませんでしたか?

国頭:最近はメールもファックスもありますし、基本的にはそんなに問題はありませんでした。ただ、翻訳作業のなるべく早い段階で、一度はお目に掛かりたいなという思いがありました。顔を合わせておくと、お互いに無理も言いやすいですので(笑)。

飯野:航空券の安い時期を選んで上京しました(笑)。お仕事をはじめて2カ月後ぐらいだったと思います。札幌は距離的には東京からかなり離れていますが、連絡をとるのは比較的便利なんですよ。郵便局に“超特急便”というサービスがあって、翌日の午前10時には到着する宅配便もあるんです。

--最後に、おふたりの今後の抱負を聞かせてください。

国頭:今回、エンターテインメント系読み物は始めてと言うことで、社内でも新たなる挑戦だったのですが、全5巻がすべて発行されて、大成功かどうかはこれからの売れ行き次第ですが、失敗ではないことはわかりましたので、一つハードルは越えられた、また次の作品を探したいと思っています。

飯野:『スパイダーウィック家の謎』は映画の話もあるんですよね。

国頭:そうなんです。原作が刊行される前から、映画会社が映画化権を取っているという話があったんです。ただ、日本で上映されるかどうかは未定で。書籍の売上が書籍の売上が伸びれば日本でも上映も可能性が高くなると思います。そうなるとさらに本も売れて相乗効果が期待できるのですが……。それから、映画とは別に、アメリカでは2006年秋に次のシリーズが出版される予定のようです。

飯野:私は中学生の時に見た夢を実現できた、20年間の努力が報われたという気持ちです。でも、これだけで終わってしまってはいけないので、また新たに気を引き締めて、次を目指したいと思います。一番の目標は児童文学ですが、もう少し広くフィクション分野を目指して、アメリアのトライアルを受けていきたいです。もちろん正確に訳すということでノンフィクションも勉強になりますし、映像翻訳は会話の訳し方の勉強にもなるので、できる限りいろいろな分野の勉強をしていくつもりです。自分を総合的に伸ばしていく努力をしながら、翻訳だけではなく、創作もしたいと思っています。
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