【アメリア】対談の部屋 14-4 全米大人気ARGがついに日本初上陸!子どもから大人まで楽しめる 壮大なアドベンチャー・シリーズを訳す
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対談の部屋
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第14回 全米大人気ARGがついに日本初上陸! 子どもから大人まで楽しめる 壮大なアドベンチャー・シリーズを訳す

4.翻訳とは、日本語版オリジナル作品を創作すること

――翻訳は版権が取れる前にスタートしていたとのことですが、どのように進められたのですか。

小浜:以前私は映像字幕の制作会社に勤めていて制作や翻訳をしていたのですが、アメリカの映画会社がからんだ仕事だと、先方からの素材の到着が遅れることがよくありました。そんな場合でも、納期は動かせないから急いで仕上げてくれと言われ、あせることがしょっちゅうでした。ですから、まだ版権は取れていないとのことでしたが、先に翻訳を進めておかないと、という思いがあり、三原さんと相談して、手元にあった販促用のアドバンストリーダーズ版で翻訳を始めましょう、ということになりました。その段階では特に細かい取り決めはせずに、トライアルのときと同じように自由に訳し、2008年8月上旬には一通り訳し上げました。でも、出版前にストーリーが漏れるのは困ると思ったのでしょう、後半の40ページ分くらいがアドバンストリーダーズ版にはなくて、そこは結局アメリカでの発売を待ってからの翻訳となりました。

豊田:米国で出版された2008年9月には、まだ版権の正式契約ができていなかったので、原書を送ってもらうこともできず、結局アマゾンに注文して購入したんですよ。

小浜:完成版の原書が10月初めに届き、10月末には一応最後まで訳したものをお渡ししました。その後、年が明けてから方針について打ち合わせをしました。対象年齢についても、そのときに話が出ました。

三原:私は児童書は素人だったので、弊社の児童書のエキスパートである豊田に、このときから正式に加わってもらいました。

豊田:そうですね。このときに1冊丸々、小浜さんの訳で読みました。そもそも私の部署のプロジェクトではなかったので、できないと断れば担当しなくても済んだと思いますが(笑)、読んだらすごく面白くて、物語に引き込まれてしまって、気がついたらぜひプロジェクトに関わりたいと志願していました。

――出版する際に、ターゲット年齢というのは、最初に決め込むのですか?

豊田:決め込む場合もありますが、編集をしながら固めていくということもあります。今回の場合は後者で、話し合いながらだんだん固めていって最終的に出来上がったという形です。

それから、編集の立場から言うと、児童書の場合は2つのスタイルがあると思います。対象年齢より少し難しい本に仕上げて、「がんばって付いておいで」と読者を引っ張り上げるスタイルと、皆がわかるように易しく丁寧につくって、「ほら、読めるでしょう」と、ターゲット層全体を下からすっぽり包み込むようなスタイル。なるべくたくさんの子に読んでほしいと思うと、優しく手をさしのべてすくい上げるような作り方をすることが多く、現に私が今担当している本も、そちらのほうが多数です。最初はこの本もその考え方で、9歳くらいをターゲットとして、無理なく読める本作りをしようかとも思ったのですが……。

私自身が読者として小浜さんの訳文を読んでいて、面白さを発見してしまったのです。大人っぽい表現もたくさん出てくるのですが、これはこのままにしたい、変えてしまったら面白さが減ってしまうかも、というところが随所にあって、それで「付いておいで」スタイルに変えることにしました。

小浜:そうなんです。でも、日本の読者向けに、言葉を足さないとわからない部分もありましたね。主人公の姉弟の会話がよく出てくるのですが、弟のダンがよく皮肉っぽいジョークを言います。この子はあからさまに意地悪なことは言わず、必ずユーモアにくるんで言うんです。例えば、ダンがすごく嫌な思いをしたときに、「最低」とは言わずに、「もう最高だね」って嫌みを言う。そういう皮肉っぽいニュアンスって、カッコイイけど、小さい子にはわからないかな、と思ったり。

豊田:そのあたりは、翻訳でたくさん工夫をしていただきましたよね。原文にはないのですが、「〜とため息をつきながら言った」など、状況がわかるように書き加えてもらったり。こうすることで、真意をくみ取れない子どもがいなくなるし、機転の利いた会話やカッコイイ言い回しを楽しむこともできる。そういうことを小浜さんが全部やってくださいました。

小浜:第1巻が発売になってすぐ、この本を買ってくださった方のブログにヒットしたんです。9歳の子どもに買ってきたら、面白くて一気に読んだみたいで、「面白かった。でも疲れた」って言ってたって。

豊田:読者アンケートのハガキを見ていても、9歳くらいの子どもが結構多いんですよ。そういう意味では、ちょっと難しめの本に付いてきてくれている。うれしいですよね。

――書籍は全部で10巻が出る予定で、それぞれ違う作家がリレー形式で書かれているそうですね。

三原:そうです。それがもうひとつ、このプロジェクトのユニークなところですね。アメリカのベストセラー作家が集結し、執筆していきます。

豊田:そうなると、つづきものではあるのですが、あちらこちらに齟齬や矛盾が出てくるんですよね。それを翻訳者の小浜さんがクッションになって、うまくつじつまがあうようにしてくれているのです。

――作者が変われば、翻訳者も変えるということはないのですか?

豊田:お話は続いていますから、前後の繋がりを理解したうえで翻訳していただかないといけないので、翻訳者は変えません。作家によって原文の調子が違うこともありますが、それをどう処理するかは、今回は翻訳者である小浜さんにお任せしています。うまく処理してくださっていますよ。

小浜:私は、作者が違っても、ある程度統一感を持たせたほうがいいと思うんです。書き手によっては、一文がすごく長い方や、逆に短文が連なる方がいるのですが、それを長い文は長いまま、短い文は短く訳してしまうと、読みづらくなると思うのです。私は、長ければ途中で区切って、短いものはつなげて、同じような調子で訳すようにしています。

セリフなんかも作者によって違うんです。ダンのセリフが、突然大人っぽい内容になっていたり、ヒップな口調になっていたり……。急にキャラクターが変わるのはおかしいので、それは私の判断で多少変えさせていただいて、全巻通しての統一感を出すようにしています。

豊田:いくらオリジナル(原書)があるとしても、日本の市場に合わせて翻訳した時点で、これは、日本人による日本人向けの創作物なんです。ですから、翻訳者さんには日本語でオリジナル版を作るぐらいの気概でやっていただきたいと思っています。矛盾や間違いがあればそれは版権元に確認しながら正していくし、原書に沿って訳していても、その内容については日本の読者に責任を持つということは忘れないようにしたいなと思っています。

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